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歯のインプラント 技術向上するも糖尿病患者の利用は不向き

「永久歯」といっても、この人生80年時代に、死ぬまで歯が生えそろっていてくれるわけではない。年を重ねるごとに歯を失い、咀嚼に支障をきたすようになれば、食事もままならなくなってしまう。一生「噛める」喜びを味わうには、シニア世代が行なう手入れは不可欠だ。歯の悩みを解消する最新医療技術を紹介する。

 歯周病などで歯を失った人が、元の歯とほとんど変わらない噛み心地を味わうことができるのがインプラントだ。インプラント治療は、欧米では50年の歴史があるが、日本では1980年代から一般に導入された技術だ。

 歯が抜けた後に、歯根があった歯槽骨の部分にドリルで穴を開け、人工歯根(インプラント体)を埋め込む手術を行なう。その後に人工歯根を土台にして人工歯冠(クラウン)を取り付ける。

 インプラント治療は近年の技術の進歩や素材の進化によって安全性が高まり、高齢化と共に今後も増加すると予測されている。インプラントメーカーの出荷本数は年間約65万本。2011年には1万1311か所の歯科診療所で3万1003件のインプラント治療が実施された(厚生労働省医療施設調査)。

「インプラントは適切な治療とメンテナンスを行なえば、20年以上持つ優れた治療法です。トラブルなどで後悔しないためにはきちんとした技術を持った歯科医を選びましょう」

 こう話すのは30年にわたりインプラント治療を行なってきた明海大学歯学部臨床教授の河津寛・河津歯科医院院長だ。

 インプラント治療には、手術を1度だけ行なう1回法と、2度に分けて行なう2回法がある。主流はほとんどの人に対応可能な2回法だ。1回法は治療が短期間で済む利点があるが、骨がしっかりしているなど適応条件が厳しい。

 2回法では、インプラントを骨に埋め込んだ後、上顎で6か月間、下顎で3か月間、骨とインプラントが結合するのを待つ。骨とインプラントが結合したら、歯肉を切開し、インプラントに支台と人工歯冠を取り付けて完成となる。

 インプラントの素材は骨と適合性の高いチタンを使うのが一般的だ。最近では、骨と結合しやすい成分をコーティングしたインプラントも登場し、治療期間短縮が実現している。

「歯周病などで骨が少なくなりインプラントができないのではないかと思う高齢者の方も多いですが、骨の欠損した部分に自分の骨や合成骨を補い、骨そのものを“再生”させる『サイナスグラフト』などの技術を併用すれば、ほとんどの人がインプラント治療が可能になります。

 インプラントの素材は骨と適合性の高いチタンを使うのが一般的だ。最近では、骨と結合しやすい成分をコーティングしたインプラントも登場し、治療期間短縮が実現している。

「歯周病などで骨が少なくなりインプラントができないのではないかと思う高齢者の方も多いですが、骨の欠損した部分に自分の骨や合成骨を補い、骨そのものを“再生”させる『サイナスグラフト』などの技術を併用すれば、ほとんどの人がインプラント治療が可能になります。

 インプラント治療には、患者さんによって様々な選択肢があります。口内の状態、目的、負担できる医療費などを総合的に考えた上で、歯科医に治療計画を提示してもらいましょう。説明が不十分なままいきなりインプラントを勧められる場合は、別の歯科医に相談してみるべきです」(河津氏)

 ちなみに、糖尿病で血糖コントロールができない人は、定着率が低下したり術後のトラブルが起こりやすいのでインプラントは不向きだという。

※週刊ポスト2013年1月25日号

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