芸能

古書店の剛力彩芽 肩にかけたショールで知的な落ち着き表現

 最も旬な女優が、満を持して看板枠のドラマに登場した。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏の目にはどう映ったか。

 * * *
 剛力彩芽が初主演ということで大注目のフジ系・月9ドラマ『ビブリア古書堂の事件手帖』が、1月14日からスタート。第1回の視聴率は14.3%(関東地区)と、なかなか好調な数字で滑り出したようです。

 ドラマが始まる前は、正直に言えば、私自身の期待度はあまり高くありませんでした。作品に対してというよりも、「剛力彩芽」という人気タレントの演じる力が、まったく未知数だったからです。

 剛力彩芽さんは、ご存じのように今、売れっ子中の売れっ子。CM出演十数社。テレビをつければ5秒、10秒の細切れ画像でしょっちゅう見かけるあの顔。たしかに、ダンスの軽快な動き、個性的な顔だちやスタイルはいいけれど。突然月9の主役に抜擢されるほどなのか。その意味が私にはよくわからなかった。

 ご本人の能力より、売り出そうとする周囲の力というか、話題を仕込む背後の力の方がちらちらと目立ってしまう。そんな感じが否めませんでした。

 そこでいよいよ、主演ドラマの幕が開いたのです。さあ、どんな感じだろう。期待半分、不安半分でチャンネルをあわせると……。

 のっけから、古い本が詰まった棚、ステンドグラス、レトロな木造家屋。北鎌倉にある古書店という、独特の雰囲気の静かな空間。剛力彩芽さんはこの「ビブリア古書堂」の店主役・篠川栞子。20歳で、しかも初の主演で古書店の店主役ですか。ちょっときついかなぁと想像していたけれど、なんのなんの。

 舞台空間にしっとりと溶け込んでいるではありませんか! セリフも表情も、古書店の静謐な空気に馴染んでいる。

 彼女の3つの魅力を発見してしまいました。

1. 沈黙に耐えられる
このドラマはセリフの無いシーンが多い。新人だと沈黙が怖くなってバタバタしたり、耐えられなくて余計な動作をしてしまうもの。しかし彼女はしっとりと落ち着いて、じっと動かない演技や演出に耐えられる。目で芝居ができる。たいしたものです。

2.説明が多いのに、説明的に聞こえないセリフ
 店主・篠川栞子は、古本の価値についてとうとうと説明したり、「献呈署名」について解説したり。うんちくセリフが多い。この役はとても難しく、棒読みになりがち。でも、剛力さんは古書という知的世界を、彼女なりに掴んでいる。だからうんちくセリフも説明的になりすぎず、聞くことができるのです。

3.首から背の独特のラインがきれいで、立ち姿、座り姿がいい
剛力さんは顔が小さくて首が長い、独特のスタイル。本を見るためにかがむ。その姿が美しい。肩にかけたショールが生きている。本棚を背に、首から背中のラインを少しねじって立つ姿。知的な落ち着きが表現できている。一言でいえば、彼女にしかない良さが漂っていました。

 と、役者としての剛力さんの魅力と可能性をあげましたが、もうひとつ触れておきたいのは、EXILEのパフォーマー、AKIRA演じる五浦大輔。“活字恐怖症”に悩まされる青年、という役柄を実に上手に演じています。踊りがウリのEXILEだと思っていのに。「動かないEXILE」にも魅力がありました。

 このドラマの成功は、舞台設定もキャスティングも含めた、質の高い総合演出力によって生み出されているに違いありません。今後、緊張感がどこまで持続できるのか。次回が楽しみです。

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