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開発者と営業マンの席を隣同士にしてヒットしたオランジーナ

 最近サントリーがヒット商品を連発している。「ハイボール」「ザ・プレミアム・モルツ」などがそうだ。その背景には、自由闊達に仕事ができる「やってみなはれ」の精神が挙げられる。だが、その精神がサントリーの社員に根付いているとはいえ、ヒット商品は“1人のアイデアマン”の力で生まれるものではない。

 サントリーの強さを生み出したもう1つの要素は、「横の連携」である。

 部署を越えてビジネスを進める必要性は多くの企業で認識されていることだが、なかなか「垣根」は取り払えないのが実情だろう。サントリーではその壁を突破するため、ある仕組みを作った。清涼飲料の事業会社・サントリー食品インターナショナルの中堅社員が語る。

「開発担当社員と営業担当の別会社であるサントリーフーズの社員などを、同じ職場に配置するように“引っ越し”を進めています。普段からお互いに声が届く範囲で仕事をすれば、マーケティングの情報などを共有しやすい。開発担当者は消費者のニーズを知ることができるし、営業も開発者のこだわりを飲食店などに伝えることができます」

 それが結実したのが、オレンジ果汁入りの炭酸飲料『オランジーナ』だ。サントリーがフランスのオランジーナ・シュウェップス社を買収したのは2009年。その主力商品がオランジーナだ。“日本版”は2012年3月に発売し、当初予定していた年間200万ケースの目標をわずか1か月で達成。7月には2012年の販売計画を800万ケースに上方修正した。

 1000の新商品のうち3つしか定着しないことから「センミツ」と呼ばれる清涼飲料業界に旋風を巻き起こしたのである。

「オランジーナ担当のサントリー食品社員と、営業担当のフーズ社員の席は、本当にすぐ近く。フランスではカフェなどで飲まれるオシャレなイメージがあることから、日本でも代官山や表参道といった地域のカフェに置いてもらってブランドイメージを作る戦略だった。営業マンがそれらの地域に攻勢をかけ、反応を開発担当者が活かしていくというチームワークが功を奏した」(前出の中堅社員)

 職場を越えた会議も活発だ。

「サントリーホールディングス傘下の各事業会社からブランドごとに担当者が集う横断会議も週2回ほど行なわれている」(サントリー酒類社員)

 アルコール度数3%と低めにしたことで若者にヒットしている缶チューハイの『ほろよい』シリーズも、この横断会議から生まれたという。40代の技術チーム社員が語る。

 「横断会議がなかった8年ほど前までは、それぞれの部署が独自のこだわりを持って仕事を進めていたと言えばかっこいいが、問題意識の共有ができていなかった。しかし今は、技術チームの社員も自らマーケティングを行ない、横断会議で提案します。

 若者のアルコール離れが叫ばれていますが、彼らは飲みたくないのではなく、飲む雰囲気は好き。上司や同僚と飲む機会は減っていますが、友人と飲む“宅飲み”は増えています。そうした消費者のニーズを共有して商品化したのが『ほろよい』です」

 今後サントリーでは、ますます「横断化」を進めていくという。次はそこからどんな商品が誕生するか。

■永井隆(ジャーナリスト)とSAPIO取材班


※SAPIO2013年2月号



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