国内

統廃合に抗議し自殺した小5男児の母「命を懸けるほどとは…」

<自分をぬいて、25人全員が「とうはいごうがなくなってほしい」に賛成しました。また一人たりとも「なにもしない」人がいませんでした。これは勇気がいることと、さっします。ちなみにぼくは、「とうはいごうがなくなってほしい」「なんでもする」に賛成です。どうか一つのちいさな命とひきかえに、とうはいごうを中止してください>(原文ママ)

 2月14日、大阪府大東市に住む小学5年生のAくん(11才)がJR片町線野崎駅のホームから身を投げ、快速電車にはねられ死亡した。彼が通っていた市立深野北小学校の統廃合への抗議がしたためられたこの遺書は、自らがクラス25人に取った統廃合の是非を問うアンケート用紙の裏に書かれていた。

 取材に応じてくれたAくんの母は、憔悴し切った様子でこう話し始めた。

「とにかく学校が大好きな子だったので、統廃合の閉校式が迫る中で矛盾を深めていったのかな。私たちには“命を懸けるほど重大なことだったのか”という思いがありますが、繊細な子だったので…。今はどうして自殺を止めることができなかったのか、気づかなかったのかという思いです」

 ともに医師の両親を見て育ったAくんは、幼い時から医師になることを夢見ていた。小学5年生ながら、中学、高校の進学先まで見通すほど優秀で、勉強に励んでいたという。

 しかし、Aくんたちは卒業まで1年を残し、友達と離れ離れになってしまう事態に直面していた。それが小学校の統廃合問題だった。

 少子化により、全国的に公立小学校では学校間の児童数のばらつきによって、運営面からも教育面からも深刻な格差が生まれている。大阪府でも1990年代後半からは、府内各地で小学校の統廃合という措置が取られている。

 そして、それは深野北小も同じだった。Aくんが入学した時の学年は、1組25人の2クラスだけ。入学するとすぐに学校側が保護者たちに、「6年時には新しい学校に編入する」と説明していたという。

 友人とともに学び、ともに遊ぶ学校は、Aくんにとってかけがえのないものだった。そしてその学校がなくなってしまうという現実が近づいてくるにつけ、不安は募っていったのだろう。どんなに大きな声で統廃合反対と叫んでも、大人たちに受け流される日々。疑問や焦燥、怒り、悲しみ…Aくんの心にはさまざまな思いがめぐっていたに違いない。

「ぼくたち子供の気持ちとか意見とかいうのを、大人たちは何でなんにも聞いてくれへんねん」

 Aくんが珍しく語気を強め、家族にそう言ったこともあったという。

※女性セブン2013年3月7日号

関連キーワード

トピックス

前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン