国内

北アルプス・穂高岳山荘男性「スーツに革靴の登山者を見た」

 登山者が峻険なる山々に挑戦するのは自由だが、命を失う危険と隣り合わせであることを、各々が自覚する必要がある。

 今年の冬山シーズンでは、過去最悪ペースで山岳遭難事故が発生している。全国から登山者が集う北アルプス(岐阜、長野)では昨年12月から既に20件以上の山岳遭難が報告され、死者は10人以上を数えた。ノンフィクションライターの柳川悠二氏がリポートする。
 
 * * *
 山岳救助に向かうのは、警察官や消防隊員ばかりではない。 天候不良時や人手が足りない時などに、救助隊の要請によって、現場近くの山荘従業員や山岳ガイドが先導隊として救助に向かうこともある。彼らは山岳遭難防止対策協会(遭対協)と呼ばれる民間の組織に属し、長野にはおよそ1000名の隊員がいるといわれる。

 北アルプス奥穂高岳と涸沢岳の鞍部「白出のコル」(2996メートル)に建つ穂高岳山荘に勤務する宮田八郎もそのひとりだ。彼は神戸大在学中に山に魅せられ、教師になる夢を捨ててまで穂高にやってきた。1986年のことである。

 今年90周年を迎える穂高岳山荘は、毎年4~11月上旬の夏山シーズンだけオープンし、登山者に食事や寝床を提供する。混雑期には1日300人が訪れる。

「昔から、登山道の整備や遭難救助も山小屋の仕事です。携帯電話がなかった時代は、事故が起こったら真っ先に山小屋に駆け込んでいましたから。山小屋には山のエキスパートがいて、地形にも誰より詳しい。有事の時に、いち早く駆けつけることができる」

 しかし、山の最前線で登山者を見守るこうした番人たちも、昨今の登山客の山への態度には疑問を呈することも多い。

「スーツ姿で、革靴を履いている登山者を見かけたこともあります。電車通勤の途中に突然、山に登りたくなったのでしょうか(笑い)。

 さすがにそれは極端な例ですが、天候不良時に、こちらがいくら制止しても、登頂をしようという方がいます。その時には怒鳴ってしまいますね。『こんな危険な天候でもしあなたが遭難したら、助けに行くのは俺たちなんだ』って」

※週刊ポスト2013年3月29日号

関連キーワード

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト