国際情報

サッチャー「鉄の女」を作った父親の「男も女もない」の教え

 4月8日、イギリス初の女性首相マーガレット・サッチャー氏が、10年にわたる認知症の末、脳卒中で亡くなった。87才だった。

 エリザベス女王(86才)は「悲しいニュースだ」と声明を発表。キャメロン英首相(46才)はスペイン訪問を途中で切り上げ緊急帰国した。

 世界にも悲しみは広がった。アメリカのオバマ大統領(51才)は、「世界は最も偉大な自由の擁護者の一人を失い、米国は真の友人を失った」と声明を発表した。

 しかし一方で、インターネット上には、彼女の死去を歓迎するページが設置された。元炭鉱労働者はフェイスブックに「人生で最良の日だ」と書き込んだ。テレビの中継でも、涙を浮かべながら悲しむお年寄りの女性が紹介された後、「私の街をぶちこわした。彼女の死を歓迎する」と答える男性が登場するといった異様な事態になっている。

「Love her or hate her」(彼女を愛するか、憎むか)──評価が真っ二つに分かれる女性であった。

 それでも現代を生きる女性にとって、彼女の存在が大きなものであったことは間違いない。それは、映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』で、サッチャー氏を演じ、昨年のアカデミー賞主演女優賞を獲得したメリル・ストリープ(63才)の追悼の言葉にも表れている。

「世界中の女性たちに、お姫さまになるという幻想ではなく、別の夢を抱かせた」

 食料雑貨店を営む中産階級の家に生まれたサッチャー氏は9才のとき、学校から優秀賞をもらい、「私は、幸運だったのではない。それだけの努力をした」と言った。

「彼女のお父さんは13才までしか教育を受けなかったのですが、独学で勉強し、雑貨店を経営しながら、市会議員、上級議員、そして市長にまで上りつめた人。その父から“他の人がやるからというだけの理由で、何かをやってはだめだ。できないとか、難しすぎるということはない。男も女もない”と言われ、“自助努力”の教えを受けたんです。彼女は他の女の子たちと遊んだりせず、勉強に打ち込んでいたんです」(英在住ジャーナリスト)

 私立の女学校に進学後、名門オックスフォード大学へ。卒業後は、化学者としてプラスチック工場で働いた後、保守党の支部に入会し、1959年に下院議会議員選挙で初当選を果たす。630人の議員中、女性はわずか5人。33才のサッチャーは最年少だった。

 そして1979年にイギリス初の女性首相となる。54才。首相としては若く、女性で、平民という、異例ずくめの首相だった。

※女性セブン2013年4月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

硬式野球部監督の退任が発表された広陵高校・中井哲之氏
【広陵野球部・暴力問題で被害者父が告白】中井監督の退任後も「学校から連絡なし」…ほとぼり冷めたら復帰する可能性も 学校側は「警察の捜査に誠実に対応中」と回答
NEWSポストセブン
隆盛する女性用ファンタジーマッサージの配信番組が企画されていたという(左はイメージ、右は東京秘密基地HPより)
グローバル動画配信サービスが「女性用ファンタジーマッサージ店」と進めていた「男性セラピストのオーディション番組」、出演した20代女性が語った“撮影現場”「有名女性タレントがマッサージを受け、男性の施術を評価して…」
NEWSポストセブン
『1億2千万人アンケート タミ様のお告げ』(TBS系)では関東特集が放送される(番組公式HPより)
《「もう“関東”に行ったのか…」の声も》バラエティの「関東特集」は番組打ち切りの“危険なサイン”? 「延命措置に過ぎない」とも言われる企画が作られる理由
NEWSポストセブン
海外SNSで大流行している“ニッキー・チャレンジ”(Instagramより)
【ピンヒールで危険な姿勢に…】海外SNSで大流行“ニッキー・チャレンジ”、生後2週間の赤ちゃんを巻き込んだインフルエンサーの動画に非難殺到
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン