芸能

故・原田芳雄氏が生前「一番辛い」と語った演技への感想は?

 2011年に亡くなった原田芳雄さんは、夏八木勲らと同じ俳優座養成所「花の15期生」だったが、そもそも彼を役者の道に飛び込ませた背景には「劣等感」があったのだという。映画史・時代劇研究家の春日太一氏が、原田さんの背景について語る。

 * * *
 原田芳雄は二〇一一年に惜しくも亡くなった。晩年はバラエティ番組『タモリ倶楽部』に出演した際の鉄道マニアぶりなど、飄々とした人間味を見せるようになっていたが、そのキャリアのほとんどは体制に反逆するような役柄を演じ続けていた。彼のアイコンにもなった長髪に革ジャン、ジーパンにサングラスというファッションのカッコよさも相まって、生前だけでなく、死後になってもカリスマ的な人気を保つ。

 原田芳雄は不思議な役者であった。映画に出演している時は「地」でやっているように見えることが多々あるが、トーク番組などでは作り込んだポーズをとっているようにも映る。観ている側には、どこまでが素の顔でどこまでが芝居か分からない。そういったミステリアスさもまた、彼の大きな魅力だった。

「自分は内心、できるだけ自分から遠去かりたいと思ってて、そういう意味でウソの範囲が多いもののほうがものすごく遊べるわけですよ。実際の自分はちっともいいと思わないしね、イヤなわけですよ。そこから何如に遊びの中に解き放っていけるか、というようなところの遊びなんですよね。だからよく『地でやってる』とか言われるけれども、あれが一番辛いねえ…。全然本人と違うんですけどねえ。

 色んな憧れを役にこめるわけです。まあ、それにしちゃあ、その憧れがたいしたことないって言われるかもしれないけど…。自分にとって敵の人間を演じる場合にも、必ずどっかにそういうものを含んでやってるんです」(『アウトローに挽歌はいらない』梅林敏彦著・北宋社刊より)

※週刊ポスト2013年5月17日号

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