芸能

近藤正臣 役柄へこだわり徹底的に台本読み小道具を自ら用意

 数多くのドラマ、映画、舞台に出演。クールな二枚目、コミカルな三枚目、エキセントリックなドラッグクイーン役など、どんな役も独特の深みをもって表現する俳優・近藤正臣。「大奥 第一章」(6月大阪松竹座、7月博多座)に出演する近藤の、独特のキャラクター造形の方法について、時代劇研究家の春日太一氏がせまった。

 * * *
 近藤正臣といえば、1970~1980年代は「二枚目」俳優の代名詞でもあった。といって、昨今の「イケメン」のようにビジュアルだけで勝負することはなく、口調から細かい動作まで丁寧に作り込みながら「二枚目」を演じていたように思える。

 特にキスシーンは、その真骨頂かもしれない。日本の俳優は不器用なのか照れ性なのか、キスシーンになるとどこか硬さが見られる。が、近藤のそれには、欧米映画さながらのロマンティックな雰囲気が漂っていた。

「フランス映画の雰囲気で演技することは、自覚しています。ジャン・ギャバンにリノ・ヴァンチュラにアラン・ドロン。ジャン・ギャバンのパンの喰い方なんかは、憧れました。

 ラブシーンにしても、洋画のテキストからいろいろといただいたりしています。テレビドラマでラブシーンする時でも、そういう映画を参考にしながら、『この俳優ならキスするより先に髪を触るんだろうな』とか。そういう細かなことを考えていくんです。日本人はそういうことは、あまりやらないんですよ」

 近藤正臣は芝居のアイディアを考え、工夫を重ねて役に臨む。そこには、台本に書かれたことだけでは納得しきれない、役柄へのこだわりが込められている。

「台本の台詞は人が書いたもので、俺の言葉じゃない。台本にごっついエエ人に書かれても、こっちはちょっと意地悪したいこともあるんです。それで、言葉を変えられへんのやったら、ニュアンスを変えよう、と。

 本当は役者ってのは、台本に与えられた素材の中で役を生きればいいわけです。でも、それだけじゃ納得できないことがある。このキャラクターがここでそんな不用意なことをするか、こんなにイージーな言葉を吐くか、というところでね。この素材じゃあ、生きられないということは、どうしても出てくる。

 ですから、台本を徹底的に読んで行間を拡げていきながら、アイディアを見つけていくんです。こいつは古風な男だから腕時計やなしに懐中時計を使わせよう、とか。そんなことだけでも、演じている人間が生きてきよるんです。これは急にスタッフに言っても無理やな、と思ったら、自分で小道具を用意して持っていくこともあります」

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか。

※週刊ポスト2013年5月31日号

関連記事

トピックス

劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン