ビジネス

非資源分野注力を表明した三菱商事 将来期待の新事業は「水」

 4523億円──2012年3月期の三菱商事の「純利益」である。10年ほど前には数百億~1000億円レベルだったことを考えれば、まさに“ステージ”が変わったと言えよう。それを牽引したのは資源価格の高騰である。過去に鉱山などの権益を取得してきた結果、資源バブルによって三菱商事を始め総合商社は空前の利益をあげた。

 しかし、春はいつまでも続かない。目下、資源相場は低下している。原料炭価格の急落などによって、この5月に発表される2013年3月期決算では三菱商事も減益に転じる見通しだ(純利益は前年比27%減の3300億円を予想)。商社各社は「資源依存」からの転換を迫られている。

「掘れば売れるという時代は終わった」「資源・非資源のバランスを取っていく」

 同社の小林健社長は株主向け資料などでそう語っている。規模の割に一般に馴染みの少ない総合商社だが、純利益による業界順位は、1位が三菱商事、2位に三井物産、以下、伊藤忠商事、住友商事、丸紅と続く。各社とも程度の差こそあれ、「非資源分野」への注力を表明している。

 三菱商事で「非資源」と言えば、産業機械分野、生活産業分野などがあるが、中でも将来に期待がかかる新事業の一つが「水」だ。

 経済産業省の試算では、世界の水ビジネス市場は2007年で約36兆円。それが2025年には約87兆円に膨らむと見込まれている。その中で同社は「日本初の水メジャーを目指す」ことを目標に掲げた。環境・インフラ事業本部水事業第一部の北原久裕次長(45)が語る。

「弊社は1997年にフィリピンのマニラウォーター社に参画し、取水・上下水道・屎尿処理・料金徴収などを一括して運営してきました。その後、2000年に国内にジャパンウォーター社を設立し、徐々にノウハウを蓄積してきました」

 北原氏は1991年入社。当初は「機械グループ」に所属し、ODA(政府開発援助)などに伴う海外の水道設備や水処理施設に使う資機材などの取引・貿易に従事していた。本格的な水ビジネスに携わる大きな転機は、2008年に40歳の若さでジャパンウォーター社長に就任したことだった。

「自治体に、民間のノウハウを取り入れた水事業をしませんかと提案する仕事です。民間がやれば効率化できる部分が数多くあることをご理解いただき、水道局の事業の委託を受けるのです」

 そんな北原氏が最も注力している一つが、三菱商事が60%出資するオーストラリア・TRILITY社の水事業だ。T社の従業員は約330人にすぎないが、人口2300万人のオーストラリアで、300万人以上に上下水道サービスを提供する。

 出資といっても、カネを出して配当を得るだけのモデルではない。主体的に事業運営に携わるのが“商事流”だ。

「大切なのは買収後です。T社の幹部8人には、日本に来てもらって三菱商事とはどういう会社か、企業理念から説明しました。また、日本企業は組織で動くことが当たり前ですが、海外ではそうではないケースも多い。そのため、チームの重要性を理解いただくのに時間がかかりました」

 PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)という経営用語がある。M&A後の統合プロセスを指す言葉で、経営統合、業務統合、意識統合の3段階があるとされる。それが出資先企業の成否を握る。T社には、今も商事社員3人が出向し、現場社員と一緒にビジネスを進めている。

※SAPIO2013年6月号

関連記事

トピックス

“教育虐待”を受けたと主張する戸田容疑者の家庭環境とは── (時事通信社)
「母親から数万円の振り込み断られた」東大前駅切りつけ事件・戸田佳孝容疑者(43)の犯行動機に見える「失われた世代」の困難《50万人以上の高齢者が子に仕送りの推計データも》
NEWSポストセブン
府中刑務所の食事見本。ふりかけや、佃煮らしき小鉢が見える。2024年2月報道向け公開時(AFP=時事)
暴力団幹部が定食屋で「勘弁してくれよ」と言った事情 目の前にはアミの佃煮、たくわん、塩辛など「ご飯のおとも」がずらり
NEWSポストセブン
秋篠宮と眞子さん夫妻の距離感は(左・宮内庁提供、右・女性セブン)
「悠仁さまの成年式延期」は出産控えた姉・眞子さんへの配慮だった可能性「9月開催で眞子さんの“初里帰り”&秋篠宮ご夫妻と“初孫”の対面実現も」
NEWSポストセブン
1998年にシングル『SACHI』でデビューした歌手のSILVA(ブログより)
《“愛の伝道師”として活躍した歌手SILVAの今》母として『子どもの性教育』講師活動、マイクを握れば「投げ銭ライブ」に「2200円の激安ボイトレレッスン」の出血大サービスも
NEWSポストセブン
性的パーティーを主催していたと見られるコムズ被告(Getty Images)
《フリーク・オフ衝撃の実態》「全身常にピカピカに」コムズ被告が女性に命じた“5分おきの全身ベビーオイル塗り直し”、性的人身売買裁判の行方は
NEWSポストセブン
大食いYouTuber・おごせ綾さん
《体重28.8kgの大食いタレント》おごせ綾(34)“健康が心配になる”特殊すぎる食生活、テレビ出演で「さすがに痩せすぎ」と話題
NEWSポストセブン
美智子さまが初ひ孫を抱くのはいつの日になるだろうか(左・JMPA。右・女性セブン)
【小室眞子さんが出産】美智子さまと上皇さまに初ひ孫を抱いてほしい…初孫として大きな愛を受けてきた眞子さんの思い
女性セブン
宮城野親方
《元横綱・白鵬の宮城野親方「退職情報」に注目集まる》一度は本人が否定も、大の里の横綱昇進のなかで「祝賀ムードに水を差さなければいいが…」と関係者が懸念
NEWSポストセブン
出産を間近に控える眞子さん
眞子さん&小室圭さんがしていた第1子誕生直前の “出産準備”「購入した新居はレンガ造りの一戸建て」「引っ越し前後にDIY用品をショッピング」
NEWSポストセブン
不倫報道の渦中にいる永野芽郁
《永野芽郁が見せた涙とファイティングポーズ》「まさか自分が報道されるなんて…」『キャスター』打ち上げではにかみながら誓った“女優継続スピーチ”
NEWSポストセブン
子育てのために一戸建てを購入した小室圭さん
【眞子さん極秘出産&築40年近い中古の一戸建て】小室圭さん、アメリカで約1億円マイホーム購入 「頭金600万円」強気の返済計画、今後の収入アップを確信しているのか
女性セブン
カジュアルな服装の小室さん夫妻(2025年5月)
《親子スリーショットで話題》小室眞子さん“ゆったりすぎるコート”で貫いた「国民感情を配慮した極秘出産」、識者は「十分配慮のうえ臨まれていたのでは」
NEWSポストセブン