ビジネス

サーベラスvs西武 再上場時価格試算低すぎが対立の開始理由

 1912年に前身となる武蔵野鉄道が設立されてから100年以上が経過した西武鉄道を中核とする「西武グループ(西武ホールディングス)」。経営を支配していた堤義明氏が2005年に逮捕され、グループに激震が走ったが、経営自体はようやく安定し始めた。だがここへ来て、米投資系ファンド・サーベラスとの戦いが再びグループを揺るがしている。「サーベラスvs西武」泥沼の戦いについて、ジャーナリストの永井隆氏が報告する。

 * * *
 6月25日、西武の命運が決する。この日開かれる西武ホールディングス(HD)の株主総会で、経営の主導権をめぐりプロキシファイト(委任状争奪戦)を繰り広げてきた筆頭株主の米系投資ファンド・サーベラスグループと現経営陣の争いが重大な局面を迎えるからだ。

 西武HD株の32.42%を保有するサーベラスは、3月にTOB(株式公開買い付け)を表明。買い取り価格は1株1400円で、持ち株比率を最大44.67%まで増やしたいとしている。株主からの応募期限は5月17日とされていたが、締め切りギリギリで同31日まで延長された。

 本稿執筆時点でTOBの結果は不明だが、44.67%には達しないものの、約13%いる個人投資家の一部が応募すると見られる。この結果サーベラスは経営の重要な判断について拒否権を持つ3分の1以上を保有する見込みだ。

 西武側はTOBに反対。サーベラスは同社幹部であるルイス・フォスター氏やダン・クエール元米副大統領ら8人の取締役を株主総会で選任するよう提案しているが、西武側はこれにも強く反対している。

「現経営陣は、2013年3月期決算で営業利益・経常利益とも4年連続増益で過去最高水準を達成している。サーベラスのTOBと同社側が提案する役員の選任は、当社が経営の最優先課題とする早期のよい形での株式上場を遅らせる恐れがある」(西武HD広報部)

 もしサーベラスが提案する役員が全員選任されれば、取締役会の過半数を占めることになる。

 投資ファンドであるサーベラスはある種の“劇薬”であり、一定の副作用は当初から予想されていた。それでも両者は2年前までは、ともに早期の上場を目指して協力していた。なぜこんな泥沼の対立に陥ってしまったのか。西武グループに詳しいジャーナリストの須田慎一郎氏が指摘する。

「サーベラスが西武に約1000億円出資してから、もう7年以上の時間が経過してしまった。再上場させて早期に売り抜けようという目論見だったが、昨年、再上場時の売り出し価格を投資銀行に試算させたところ、サーベラスの想定よりも大幅に低かった。

 投資銀行が算定した想定株価は1株1100~1500円だったが、サーベラスは1800~2400円くらいでないと7年分のリターンが得られないという算盤だったようだ。そこから対立が始まった」

 西武鉄道は有価証券報告書の虚偽記載で2004年12月に上場廃止。翌05年にはグループ総帥だった堤義明氏が証券取引法違反容疑で逮捕された。会社の信用は失墜、経営は悪化。再建を託されてメーンバンクのみずほコーポレート銀行から送り込まれたのが、同行副頭取だった後藤高志・現西武HD社長である。

「サーベラスは、昨年まではどうしたら上場時の株価を上げられるかばかり考えていた。物議を醸した『西武秩父線など5路線の廃止検討』『埼玉西武ライオンズの売却』などの提案(昨年10月)もその一環だ。しかし現在はこじれにこじれて、上場よりも邪魔な後藤社長をとにかく辞めさせようという方向に舵を切っている」(須田氏)

※SAPIO2013年7月号

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン