中高年になっても結婚したがらない子供を持つ親は、勝手に釣書をばらまいたり近所のコンビニ店員をそそのかしたりと、なりふり構わず子供の婚活に必死になるケースが多い。教育心理カウンセラー・富田富士也氏は、次のようにアドバイスする。
「子供に結婚してもらいたいというのは、結局は親のエゴだということを認識すべきです。子供は別に未婚でも困らない。だから、子供の動機づけのために親が動くことは悪いとは思いませんが、そのときに謙虚に、『これは親のエゴでやってるんだけどね~』と正直に伝えたほうがいい。そうすれば、逆に子供が主体的に動くようになるのです」
本人が必要と思っていないのに親がゴリ押しすればプライドを傷つけられる。うまく本人が自主的に動くように誘導するのが大事だ。実際にこんな例もある。
都内で会社経営をしている家庭で、跡継ぎとなる3人兄弟の長男が40歳になっても独身だった。母親は「会社を絶やすわけにはいかない。息子には結婚して子供を作ってもらわないと」と焦りだし、親同士のお見合いパーティに参加した。
いい女性を見つけたといっては、息子に女性の写真を見せるうちに、とうとう息子が「結婚なんて母さんには関係ないだろ。俺は一人がいいんだ」と怒りだした。「会社が途絶えてもいいのか」「時代はもう違う」とケンカを繰り返すうちに、母親は自分のエゴであることに気づき、婚活を諦めた。それからしばらくしたら、長男が結婚相手を家に連れてきたという。
今回の取材で一番衝撃的だったのは、現在90歳の母親が、同居する未婚の70歳の息子の結婚を必死で案じているケースだ。
母親は「息子にいい女性はいないかしら。息子が結婚するまでは、死ぬに死ねない」と頻繁に周りにいっているという。
「本人がいうには『相手の女性は誰でもいいが、子供がいる人だけはダメ』だと。理由は、妹のほうは結婚して孫がいる。息子が子連れと結婚すれば、血のつながらない子供にまで財産がわたるからイヤだからだと。その執念には恐れ入りますが、70歳まで独身で母親と同居という時点で、さすがに誰かを紹介する気にはなりませんよ」(近所の女性)
かくして親たちの戦いは続く。
※週刊ポスト2013年7月12日号