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住宅ローン「3年固定0.6%」が抱える問題点を専門家が解説

 自民党の圧勝に終わった参院選。安倍晋三首相は「15年にわたるデフレから脱却する。まずそのことに集中していく」と、アベノミクス“第三の矢”である成長戦略の実効性に自信をのぞかせた。

 だが、デフレ脱却に伴う急激な物価上昇は、同時に金利の上昇も招いて連動する住宅ローンなどを組む家計を直撃する恐れがある。今年前半から乱高下を繰り返し、一時1%を超えた長期金利は久しぶりに0.8%を割って落ち着いているかに見えるが、「中長期的には間違いなく上がる」と予想するのは、住宅評論家の山下和之氏である。

「基本的には物価が上がれば住宅ローン金利も上がります。過去の推移に照らせば、物価プラス2%の水準です。日銀は2年後に2%の物価上昇率を掲げているので、ローン金利は最大で4%まで上がっても何らおかしくありません」

 先高感は金利だけではない。地価、建築費(住宅価格)、おまけに消費税まで上がるとなれば、今のうちにマイホーム購入やローンの借り換えを検討しておくのは賢明の策ともいえる。6月には大手メガバンクが一斉に「3年固定金利0.6%」というこれまで考えられなかった破格のローンを発売して話題を呼んだ。

 このローンを使うと、例えば3000万円の借入額(35年返済)なら、当初の返済額は7万円で済む。変動金利型で8万円台、全期間固定金利型のフラット35の10万円台と比べれば、確かに魅力的にみえる。だが、目先の低金利だけに踊らされると、取り返しのつかない後悔で頭を抱えることになる。

「これはあくまでも当初3年限定。3年後には現在と金利水準が変わらなくても適用金利が1.5%に上がり、3年後の金利が1%上がっていると2.5%、2%上がっていると3.5%にまでなってしまいます。

 すると、当初7万円台の返済額は3年後には自動的に9万円台になり、金利が2%上がっていると12万円近くになり、5割以上も返済額が増える計算になります。収入に余裕がなく、大半を返済に充てているような人は、最悪の場合はローン破綻に追い込まれる可能性すらあります」(前出・山下氏)

 また、マイホーム購入者に意外と知られていないのが、金利の適用時期である。

「新築住宅を買う人の適用金利は、今現在の金利ではなく融資実行時の金利が適用されます。つまり、契約から入居まで2年かかるような人は、そのときに金利が大幅に上がっている可能性は十分にあります。売買契約時点で問題なく融資の審査が通ったとしても、入居直前で融資の減額を提示されることも場合によっては起こります」(同前)

 山下氏は、現在の金利のみで資金計画を立てるのではなく、「仮に2%上がったときの返済額をシミュレートして家計が耐えられるかどうかを慎重に見極めなければならない」と、注意を促す。

「駆け込みムードに流されるなとは言いませんが、長い目でいろんなリスク要因がこれまで以上に大きくなるという覚悟は持つべきです。業界のリーディングカンパニーというべき銀行や提携ローンを扱うような不動産業者は、そこまでリスク説明はしてくれません。住宅は一生のうちでもっとも高い買い物。消費者は自己責任において万全の資金計画のもとに購入やローンの組み替えに踏み切ってほしいと思います」(山下氏)

 特に返済期間が長く、変動金利型や固定2、3年など金利に左右されやすいローンを組んでいる人は、いまのうちから来るべき上昇局面に備える必要がある。

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