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2013.07.30 07:00  週刊ポスト

山口放火殺人 平家の落人伝説が語り継がれていた場所だった

 山口県周南市金峰の集落で5人が相次いで殺害された事件で、重要参考人として行方をくらませていた同じ集落に住む63歳の男が、7月26日に身柄を確保された。

 駅前の市街地を抜けると、後は街灯なき暗闇が延々と続く。JR徳山駅(山口県)から車で約1時間──。中国山地の一画を形成する金峰山(標高790メートル)への一本道を縫うように進むと、斜面にへばりつくような家々がポツポツと見えてくる。

 惨劇の舞台となった金峰郷(周南市)。現場周辺を必死に捜索した山口県警捜査員は400人を数えた。さらに周囲に群がる報道陣によって異様な緊迫感が伝わってくる。その光景を眺めながら地元雑貨屋の店主が呟いた。

「捜査員も大変だろうねェ。この辺りの山々は中国山地の一部だから、土地勘のある人間なら山を通って広島にでも島根にでも割と簡単に行けちゃう。

 奥深くいけば横穴や洞窟がたくさんあって、そういうところに潜めば山狩りしたってなかなか見つけられるものじゃない。ここら、平家の落人伝説まで語り継がれるぐらいですから」

 実際、金峰郷からほど近い山間の集落は、壇ノ浦で滅びた平家一族の残党が逃げ込んだとされる地域だという。「平家岳」などの所縁の地名も数多く残る。金峰郷の近くに住む古老はこんなことも言った。

「このあたりは、“七人みさき”ゆう、ごんごんち(山口弁で妖怪を意味する)がおる、言われとります。日が落ちてお坊さん姿の七人の幽霊が鐘をならしながら連なって通りよる。それに会うた女子どもはさらわれる、ゆうものですわ。夜のうちに起きた今回の事件も、亡くなった方は何かの『祟り』じゃないか、という人もおります」

 この種の怪談が生まれるのもしかりと思うほど、金峰郷には奇妙な静けさと漆黒の闇が広がっていた。

 ここでは、携帯すら繋がらない。隣家まで200メートルという家も珍しくはない。周南市役所によれば、六月末時点で金峰郷には8世帯14人が住んでいたという。男性7人、女性7人。そのうち60歳未満は3人しかいない超高齢過疎地帯である。今回亡くなった5人の被害者も、皆70歳を優に超えている。

「ここの主要産業は林業で、その林業に附随した産業としてのシイタケ栽培も盛んでした。でも、そういった産業が斜陽化してくるに伴い、過疎化が進んでいきました。現時点では具体的な復興策も見つかってない」(周南市役所中山間地域復興課)

 また訪問介護施設職員は、「ここは、いわゆる“限界集落”です。介護している人が60代というような老々介護の世帯も多い。私たちは『孤独死』を出さないことを目標に、日々見回りを続けていましたが、まさかこんなことになるとは……」と肩を落とした。

※週刊ポスト2013年8月9日号

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