ビジネス

独身女性は自立志向強く男性よりスキル重視の傾向と大前研一

 「女性の活用」について、安倍政権が成長戦略で目玉の一つとして育児休暇を3年とれるようにするようだが、日本企業では現実問題として無理ではないかと大前研一氏は言う。では、どのような方法ならば日本企業でも女性の活用になるのか、大前氏が提言する。

 * * *
 日本企業が女性を活用するためには、どうすればよいのか? とにかく女性を多く採用し、給料の面でも昇進の面でも男性と差別しないことが大原則だ。そういう場を与えれば、優秀な女性は男性以上に育つのだが、問題はむしろ女性のほうから「家庭の事情」で仕事を減らそうとするケースが多いことだ。

 私自身、マッキンゼー時代に2~3人の優秀な女性社員から「大前さん、私は夫の5倍の給料をもらっているので、もうこれ以上、昇進させていただかなくてけっこうです。その代わり、長く勤めさせてください」と頼まれたことがある。

 だが私は、若い人を毎年数多く採用していくマッキンゼーは「UP or OUT」だから、昇進しなければ会社を去るしかない、と宣告した。非情なようだが、女性を差別しないというのは、そういうことである。

 男女を平等に扱うと、会社も個人もけっこうしんどい。マッキンゼーの場合、家庭の事情に関係なく突然、世界のどこかに出張しなければならなくなることがままある。私がいた当時は韓国や台湾への出張が多く、1年の8割は現地にいて日本には毎週末しか帰ってこられないというケースもあった。そうなると家庭を持つ女性社員は、たいてい弱音を吐いてしまう。

 女性に対するグラスシーリング(ガラスの天井)が全くなくても、女性のほうからシーリングを求めてくるというのが私の経験なのだ。結局、いくら会社が男女を差別しない制度やシステムを作っても、女性を長く活用するのは難しいのである。

 だが、国内企業には合わなくても、海外で活躍している日本人女性は山ほどいる。また、最近の、とくに独身の女性たちは「自立」志向が強く、男性以上にスキルを重視する傾向もみられる。

 ということは、これから政府と企業が取り組むべきは、女性の雇用形態に契約社員やクラウドソーシングによる“サイバー外注”などの多様な働き方を積極的に導入し、女性が自分のスキルをフルに生かしながら自分にとって快適なライフスタイルを実現できる機会を増やすことだと思う。

 さらに今の日本は、男性社員でも前述のマッキンゼーの女性社員と同様に「昇進しなくてもいい」と思う人が増えているアンビションなき時代である。そういうダイバーシティ(多様性)を、どう“活力”に変換していくのか──それが今後の日本企業にとっては極めて大きな課題なのである。

※週刊ポスト2013年8月9日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン