スポーツ

高校野球 負けて泣く選手が減少し、負けて泣く監督は増えた

 今年も夏の甲子園が幕を閉じた。高校野球の取材を続けて20年のフリーライター神田憲行氏が、「地殻変動」についてレポートする。

 * * *
 20年以上、夏の高校野球の取材を続けていてここ4、5年はっきりしてきた傾向がある。敗れた高校の監督が試合後のインタビューお立ち台で泣くのである。涙を流し、取材を受ける前にユニフォームの袖やタオルで拭う。今年もそんな監督が私が見ただけで3人いた。チームや選手への熱い思い入れがそうさせるのだろうが、最初見たときは驚いた。

 また負けた腹立ちまぎれか、相手チームを非難したり、自分のチームの選手を悪し様にののしる監督・部長もいる。

「勝ったら選手のおかげ、負けたら監督の責任」

 というこれまであった「当然の前提」を忘れていらっしゃるようで、たいへん見苦しい。

 逆に泣く選手は少なくなってきた。もちろんまだ泣く選手はいるが、手痛いタイムリーエラーをした選手などは昔は必ず泣いていたのだが、今はさすがに落ち込みはしても、涙は流さなくなった。それどころか、今年は信じられないものをみた。試合前のノックのボールなどを受け渡しするベンチ外の選手たちが、負けて泣いているチームメイトのそばでふざけ合って笑い声を立てていたのだ。そんな光景を見て、今夏、話を聞いたある名門校の監督の話を思い出した。彼によると、

「今の選手は10年前と比べて連帯感がない」

 という。たとえば練習でミスをすると10年前なら監督より先に選手同士で叱責をする声が飛んだ。

「今はみんな優等生なんで、そんな厳しい声をかけることもない」

 遠征先のホテルで同部屋の選手が寝坊しても起こそうともしない。自分だけ時間に間に合って出てくる。それで彼は一計を案じて、練習試合でたまに「2アウト三塁」で「スクイズ」のサインを出してみるそうだ。もちろんそんな作戦はあり得ない。

「10年前ならベンチのあちこちから『監督、間違ってます』という声が飛んできたけれど、今は平気でバントしてアウトになって帰ってくる。ミスしそうな他人に注意するほどの連帯感がないんですよ」

 高校野球は主催者のひとつが「旧マスコミ」「マスゴミ」なのでネットの批判の対象になりやすい。また体質、精神的文化はネットを「前衛」とすると、高校野球は「後衛」だ。だからこそ私はそこに横たわる価値観を大事にしたいと思い取材を続けているわけだが、ここにも、「地殻変動」のような動きがある気がしてならない。

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン