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桜島爆発的噴火で「降灰缶」の売れ行きはどうなっているのか

 鹿児島県桜島の昭和火口から噴煙が約5000メートルも上昇し、1955年からの観測史上最大だと話題になっている。さぞかし、地元では不便な思いをしているのかと思ったら、さにあらず。灰の始末の面倒さはあるものの、話題をきっかけにして地元を盛り上げようという機運の方がむしろ強い。

 桜島の噴火と成長の歴史を体感できるミニ博物館、桜島ビジターセンターはHPで「大丈夫ですか? という問い合わせを多く頂きますが、大丈夫ですよ(^^) これくらいのドカ灰はときどきありますから。(中略)噴火見るなら『今でしょ!』 (^^) 」と観測史上最大の噴煙を上げている桜島の迫力ある写真を掲載して来訪を呼びかけている。

 鹿児島市の市街地と、桜島を挟んで向かい側にある垂水市では、降灰体感缶詰「ハイ! どうぞ!!」を販売している。2010年に試験販売を始めたところ、1個100円という気軽な価格もあり予定を上回る反響を呼んだ。いまも継続して製造している。

「桜島から灰が降ると洗濯物は外に干せないし、芝を植えても浮き上がるなど不便なことばかり。甲子園の土にブレンドされたり北海道の融雪剤に利用されるなど、特別な事例以外は、アルカリ性が強すぎて扱いづらいんです。そして灰のせいで1年で5センチは地面が高くなるから、片付けて捨てるだけでした。その厄介者の灰を話題づくりに利用しようと若い職員たちが考えて生まれたのが灰缶詰です」(垂水市水産商工観光課・山本忠良さん)

 きっかけは、2010年に行われた市職員向けの講演会。ミュンヘン五輪の水泳金メダリスト、田口信教・鹿屋体育大学教授から逆境をチャンスに変えること、たとえば火山灰を何かに利用できるのではとアイデアを授けられた市職員たちが考案し、降灰体感缶詰が誕生した。2010年に「道の駅たるみず」などでのテスト販売が好評だったため、引き続き製造されることになり2011年度は16000個、2012年度は9000個を販売している。

 2013年は海で隔てられていた垂水市と桜島を地続きにした大正噴火から100周年を記念して特別パッケージの記念缶詰を発売し、7月現在で既に6400個の売り上げを残している。記念缶詰のうち1914個限定のシリアルナンバー入りプレミアム灰缶は在庫がもうなく、「市長室に飾ってあるものはありますよ」(同・山本さん)という人気ぶりだ。

 原材料は、年に数回、職員が総出で市役所屋上を掃除するときに採取される桜島の火山灰からゴミなどを取り除いた純正品。内容量は「ありがたくない、空からの恵み 100cc」、使用期限は「皆様の興味が無くなるまで」保存方法は「好きな場所で保存してください」となっている。「理科の教材にと購入される方もいらっしゃいますが、振って音がするくらいで何の使い道もないですよ。そういうユーモアがいいんでしょうね(笑)」(同・山本さん)

 大きな噴火が話題になり、8月は夏休みのシーズン。観光客の評判も高いのではと問い合わせると「そうでもないんです」と降灰缶を販売している「道の駅たるみず」館長の立和田孝之さんは言う。

「噴火をどんどんしてもらうと宣伝になるのですが、県外の人は必要以上に怖がってしまうようです。今も普通に観光できるのですが、大きな噴煙に驚いて『いま、桜島に行けるんですか?』という地元の私たちが聞くと驚くような問い合わせもあります。『ハイ! どうぞ!!』の問い合わせも、マスコミからばかりで売れ行きは変わりません。5月にシリアルナンバー入りプレミアム缶を発売したときは、半日で完売したんですけどねえ」

 観測史上最大だという噴煙をテーマに、新たな限定缶を発売する予定などは今のところないそうだ。とはいえ「市役所が決めることなので希望しか言えませんが、もし、新たな限定缶が販売となったら評判になるでしょうね」(前出・立和田さん)と、今後の新企画に期待を寄せている。

 観光地が食品ではない産品の缶詰を発売する例は他にもある。世界遺産に指定された富士山では「富士山 空気の缶詰」が、北海道の摩周湖でも「摩周湖 霧缶」が売られている。古くは、大気汚染による光化学スモッグが社会問題化していた1968年に「大東京名物・空気の缶詰」が東京みやげとして発売されたが、残念ながら今はもうない。桜島の噴火の勢いにのって降灰缶「ハイ! どうぞ!!」は、全国に知れ渡る定番のお土産になるか。

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