スポーツ

西武黄金期支えた敏腕スコアラー ブライアント4連発を語る

 プロ野球選手の活躍は、多くの裏方によって支えられている。その裏方のひとつ、対戦相手の戦力分析を担うスコアラーのなかから、1980年代の西武黄金時代を支えた敏腕スコアラー、豊倉孝治氏が語った分析失敗の経験をスポーツライターの永谷脩氏が綴る。

 * * *
 横浜vs巨人が行なわれた横浜スタジアムで、大竹憲治(元巨人)にバッタリ会った。選手会の事務局長として初代会長・中畑清と会を支えた男である。現在は球場の警備などを担当する会社にいるという。彼の口から、現在その系列会社に、ある男が在籍していることを聞いた。男の名は豊倉孝治という。

 千葉・安房高時代は「堀内(恒夫)2世」と呼ばれ、1970年に西鉄にドラフト3位で入団。しかしプロでは6年間で3試合しか一軍登板がなく、引退後に打撃投手からスコアラーに転向した。

 彼の名前を知ったのは1983年、西武が初めて巨人を下して日本一になった頃だった。紹介してくれたのは、当時、西武のエースだった東尾修である。

「コイツとは西鉄の寮で相部屋でね。俺が無断外泊する時は、座布団を畳んで布団を被せて、寝ているように見せかけてもらったもんだよ。もちろん、相手の傾向を見つけるスコアラー能力は天下一品だ。俺が最も信頼できるスコアラーだよ」

 豊倉も「選手とスコアラーとの信頼関係は結果がすべて」と言う。その分析は的確で西武の黄金時代を陰で支えた。酒に酔うと、「選手として役に立てなかった。せめて裏方として戦力になりたい」と言うのが口癖。「スコアラーは自分が目立ってはダメ」と語り、多くの選手から信頼された。

 そんな彼の完璧な分析が一度だけ崩れたことがある。1989年、優勝をかけた西武―近鉄のダブルヘッダー。近鉄がブライアントの4連発弾によって、西武の5連覇を阻止した試合だ。

 西武はシーズン中、豊倉の分析によって、ブライアントを完全に抑え込んでいた。豊倉は、

「セオリーでは高めは危険だが、バットが下から出ているブライアントには、真ん中高めの速球が効果的。ウチの投手陣の球威なら抑えられた。だけど3発目は、中1日で出てきたナベ(渡辺久信=現・西武監督)の球が、疲れで伸びてこなかった。見抜けなかった自分が悔しい」

 と言って、優勝を逃した責任を1人で被っていた。

※週刊ポスト2013年9月13日号

トピックス

上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン
ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン