ビジネス

DL厳罰化で音源販売苦戦 クラシックCDだけ対前年比増の理由

 1990年代をピークにCDの売上は右肩下がりと言われている。今では生産量が1997年の約6割、生産金額では1998年の約半分に落ち込んだ。1998年のウインドウズ98登場とともに普及したインターネットの影響を考慮して昨年導入された違法ダウンロード厳罰化から10月1日で一年が過ぎた。ところが、CD売上は不調なままだ。実際にCDやダウンロードで音源を購入した人を周囲に探そうにも、なかなか巡り合えない。

 音楽を聞くのはもっぱらスマートフォンだという男子大学生も「CDはずっと買っていない」と言う。

「iTunesやソニーのMoraなどから買うことも最近はしていないですね。ダウンロードならCDより安くなるといわれるけれど、1曲150円が安いとは思えない。YouTubeからダウンロードすることが多いですよ。友だちでCDをよく買っているのは握手券や投票券が欲しいAKBのファンか、クラブDJを趣味でやっている人くらいですね。AKBファンの友だちは一人で何十枚も買っているから、それの開封済みをもらうことはあります」

 サウンドスキャンジャパンによれば、2013年上半期オーディオソフトの売上は前年同期比93.6%。金額換算すると2012年上半期より9億8,800万円減、2011年上半期と比べると約82億円の大幅減となっている。日本レコード協会によると、有料音楽配信売り上げ実績も数量で前年比78%、金額でも前年比74%と縮んでいる。

 前述の男子大学生のようなケースは、学生でお金がないから節約のために買っていないかもしれない。だが、金銭的余裕があるはずの実家住まいの20代女性会社員も、CDもダウンロード音源も最近は購入していないという。

「私が好きなミュージシャンはMySpaceで音声ファイルを無料で公開しているから、そこからダウンロードして聞いています。他はやっぱりYouTubeが多いかな。ミュージシャンのライブへ行って、テンションあがると売店でCDを買うことはありますよ。でも最近はライブへ行けていないから、買っていませんね」

 都内のライブハウス関係者によれば、最近はミュージシャンがみずから音源を無料で公開することが少なくないのだという。その場所として、音楽やエンターテインメントに特化したSNSのひとつMy Spaceがよく利用されている。インディーズだけでなくメジャーなミュージシャンも多く登録しているため、ファンは無料音源に喜び、ミュージシャンはライブへの集客が高まる効果を得られる。

 また、ニコニコ動画ではNicoSoundという投稿された動画の音声だけをダウンロードできるサービスを昨年から始めた。音符がついたボタンが表示される動画については、無料で音声をダウンロードできる仕組みだ。

 そういったSNSを活用するのが難しい若者ではない世代も、音楽を購入しなくなっている。数ヶ月前からiPhoneを持ち始めた40代の会社員女性も、最近はCDを買わないという。

「携帯をiPhoneにしてから、どうやって音楽を入れたらいいのかよくわからなかったんです。でも職場の後輩にYouTubeからのダウンロード方法を教えてもらいました。お金がかからないだけじゃなくて手軽なのがうれしい。CDって、買い続けると意外に場所を取るんですよ。同年代の友人でも、CDを買っているのはB’zのファンだけだと思う」

 年齢に関わりなく、インターネットから音源をデータとして入手するのが当たり前になってしまった。その便利さを認めながらも、『テルミン―ふしぎな電子楽器の誕生』の著者で神奈川大学非常勤講師の尾子洋一郎さんは、音にこだわる人が少なくなってきたとはいえ、CDなどディスクで音楽を手もとに置くよさも知ってほしいという。

「例外はありますが、MP3などのダウンロード販売やYouTubeは、人間には聞こえないとされる音域などをカットしてデータを圧縮しているので、音の厚みがどうしても薄くなりがちです。ちょっとした実験をしますと、音の解像度がCDとそれ以外では全く異なります。CDではきちんと分離して聞こえていたものが、団子のように固まって何の楽器が鳴っているのか分からないものもあります。

 今年、クラシックのCDの売り上げが伸びているのは、販売店とレコード会社がオリジナル企画でCDを出したり、今までは高根の花だったものがBOXセットとなって大変安価に入手できるようになったのと、所有欲を満たしたいこと、そして何よりもまず、Blu-Spec CDなど音質が向上したものが増えて、音にこだわるファンも増えてきたからだと思います」

 尾子さんが言うように、不調といわれ続ける音楽産業だがジャンル別にみるとクラシックだけCD売上が前年比で5.1%伸びている(サウンドスキャン調べ)。これからは、コンピュータ由来のテクノやハウスミュージックはデータで、音の厚みにこだわるクラシックはディスクでと役割分担が進むのかもしれない。

あわせて読みたい

関連キーワード

トピックス

NY晩餐会に出席した大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《大谷翔平にエスコートされて》妻・真美子さんがNY晩餐会で羽織った“シックな黒艶コート”は全サイズ売り切れ…ブランドは「場合によって再販の可能性」 
NEWSポストセブン
2025年に成年式を終えられた秋篠宮家の長男・悠仁さま
悠仁さまが30平米庶民派マンションで一人暮らし…大学生活で直面する「息苦しいまでの制約」とは? 〈過去の皇族には「部屋は警護室直通」「山荘を建てた」ケースも〉 
NEWSポストセブン
「新年祝賀の儀」に臨んだ秋篠宮夫妻(時事通信フォト)
《ベルスリーブ、大きなリボン、黄緑色のセットアップ…》紀子さま、“鮮やかな装い”を披露されることが増加 “将来の天皇の母”として華やかな雰囲気を演出か
週刊ポスト
公用車事故にはナゾが多い(共同通信/時事通信)
「アクセル全開で突入」時速130kmで衝突した公用車に「高市氏キモ入りの大物官僚2名」重傷で現在も入院中…総理大臣官邸から発車後30秒での大事故、内閣府が回答した「当日の運転手の対応」
NEWSポストセブン
もともと報道志向が強いと言われていた田村真子アナ(写真/ロケットパンチ)
“TBSのエース”田村真子アナが結婚で念願の「報道番組」へシフトする可能性 局内に漂う「人材流出」への強い危機感
週刊ポスト
中国のフリマアプリに出品されていた旧日本軍関連の物品(筆者提供)
《新たな反日ビジネス》中国フリマアプリに旧日本軍関連の物品が大量出品、コメント欄には「中国人の悲劇を証明する貴重な資料」の言葉 反日動画の“再生数を稼ぐ道具”として利用か
週刊ポスト
ニューヨーク晩餐会に出席した真美子さん(提供:soya0801_mlb)
《どの角度から見ても美しい》真美子さん、NY晩餐会で着用“1万6500円イヤリング” ブランドが回答した反響「直後より問い合わせが…」 
NEWSポストセブン
逮捕された羽月隆太郎選手(本人インスタグラムより)
広島カープ・羽月隆太郎容疑者がハマったゾンビたばこ…球界関係者が警戒する“若手への汚染” 使用すれば意識混濁、手足痙攣、奇声を上げるといった行動も
NEWSポストセブン
米・ニューヨークで開催された全米野球記者協会(BBWAA)主催の晩餐会に大谷翔平選手と妻の真美子さんが出席(左・時事通信フォト)
「シックな黒艶コートをまとって…」大谷翔平にエスコートされる真美子さんが晩餐会に入る前に着用していた“メイドインジャパン”なファッション
NEWSポストセブン
Number_iの平野紫耀
《これだと次回から裏口から出すよ!》平野紫耀の全身ヴィトン姿にファン殺到…“厳戒態勢”の帰国現場で見せた“神対応”と現場の緊迫感
NEWSポストセブン
神宮寺勇太
Number_i・神宮寺勇太「絶対に匂いを嗅ぐんだから!」ファンらが到着ロビーに密集して警備員が警戒…去り際にスターが見せた別格の“神対応”
NEWSポストセブン
昨年7月に遺体で発見された女優・遠野なぎこ(右・ブログより)
遠野なぎこさん(享年45)が孤独死した自宅マンションの一室に作業服の「特殊清掃」が…内装一新で「新たな入居者の募集へ」
NEWSポストセブン