芸能

リリー・フランキーの演技の振り幅が話題「何もしない凄さ」評

悪役を演じたリリー・フランキー (C)2013「凶悪」製作委員会

 同時期に公開された映画『凶悪』と『そして父になる』。その両作に出演するリリー・フランキー(49才)が、『凶悪』では金のために人を殺す悪人、『そして父になる』では小さな電気店を営む、人間味ある“いいお父さん”を演じ、“善人か悪人かわからなくなる”とその演技の振り幅が話題を呼んでいる。

 ネット上では、こんな声が出ている。

「『凶悪』の後に『そして父になる』を観たら、リリーさんが怖くてそれどころじゃなかった」
「極悪非道なリリーさんの演技を観た直後、もうひとりのリリーさんにすぐ癒してもらうという驚異の振り幅を体感した」
「どっちのリリーさんを信じたらいいのか…」

 対照的な役どころを演じきるリリーに、見るほうも“混乱”しているという状況なのだ。映画解説者の中井圭さんがこう解説する。

「『凶悪』でのリリーさんには、善なる部分が一切感じられません。リリーさんは表面的には優しい雰囲気があるため、余計に悪の部分が際立つのです。その姿には狂気さえ感じます。『そして父になる』では、完全に真逆で、“金は無いけれど明るいわが家のお父さん”という役柄の人間っぽさを表現する微細な演技が光っています」

 一方で、「リリーさんの場合、悪役だからといって他の役と違いはない。これまでやってきた普通のいい人の役と同じように演技している。だから怖さが増すんです」と、リリー初の悪役について語るのは、映画評論家の町山智浩さん。

 リリーが演じるのは、実在する殺人事件の首謀者“先生”。罪悪感が全く無く、他人への共感性が欠如しているサイコパス(人格異常者)だ。

「人を殺すことが特別じゃない、精神構造が完全に違う人間の役なので、特別な演技は必要ない。逆にいわゆる訓練された俳優さんが演じると、ただの犯罪者、“人を殺した特殊な人”になってしまう。リリーさんはすごく肩の力が抜けていて、殺す前と後と全く変わらない。その姿が表現できていると思います」(町山さん)

 つまり、善人と悪人、どちらを演じる際も、リリーの“普通の人っぽさ”がその役のキャラクターを引き出しているということだ。『そして父になる』の是枝裕和監督が起用した理由も、まさにそれだった。「善人か悪人かわからないところがいい。カメラの前で何もしないことの凄さをすごく理解している」とリリーを評価している。

 前出の中井さんも、もともと役者ではないリリーは、“演技臭さ”がないところが強みで、それが存在感につながっていると指摘する。

「リリーさんは、人間が持つ喜怒哀楽や多面性を自然に出せる役者さんといえます。そこにリアリティーがあるから、観る人が引き込まれるんだと思います。両作品の演技で、今年から来年にかけて映画賞の演技賞の有力候補になるのは間違いありません」(中井さん)

 2009年、映画『ぐるりのこと』で法廷画家を演じ、ブルーリボン新人賞を獲得したリリーだが、年末に向けて再び賞レースで注目を集める存在になるかもしれない。

関連記事

トピックス

この日は友人とワインバルを訪れていた
《「日本人ファースト」への発言が物議》「私も覚悟持ってしゃべるわよ」TBS報道の顔・山本恵里伽アナ“インスタ大荒れ”“トシちゃん発言”でも揺るがない〈芯の強さ〉
NEWSポストセブン
亡くなった三浦春馬さんと「みたままつり」の提灯
《三浦春馬が今年も靖国に》『永遠の0』から続く縁…“春友”が灯す数多くの提灯と広がる思い「生きた証を風化させない」
NEWSポストセブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《産後とは思えない》真美子さん「背中がざっくり開いたドレスの着こなし」は努力の賜物…目撃されていた「白パーカー私服での外出姿」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこ(45)の自宅マンションで身元不明の遺体が見つかってから2週間が経とうとしている(Instagram/ブログより)
《遠野なぎこ宅で遺体発見》“特殊清掃のリアル”を専門家が明かす 自宅はエアコンがついておらず、昼間は40℃近くに…「熱中症で死亡した場合は大変です」
NEWSポストセブン
俳優やMCなど幅広い活躍をみせる松下奈緒
《相葉雅紀がトイレに入っていたら“ゴンゴンゴン”…》松下奈緒、共演者たちが明かした意外な素顔 MC、俳優として幅広い活躍ぶり、174cmの高身長も“強み”に
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン