ビジネス

森永卓郎氏「インフレ局面で最も有効な資産防衛術は株式投資」

 日銀が異次元金融緩和に踏みきり、長く日本経済を苦しめていたデフレから脱却し、インフレ局面に向かおうとしているが、こうした環境下で資産を防衛するにはどうすればいいのか。経済アナリストの森永卓郎氏が解説する。

 * * *
 投資などで儲けようとは思っていなかった人でも、これからは好むと好まざるとにかかわらず、自分の資産を守るために動かざるを得なくなります。仮に年に2%の物価上昇が続けば、10年後には今より20%以上も上昇することになります。銀行に普通預金で預けたまま10年間放ったらかしにしていると、その実質価値は2割減ってしまうことになるのです。

 安倍政権の行なう政策は、規制緩和と金融緩和を両輪とするもので、まさにかつての小泉政権とまったく同じです。ただし、安倍政権の方がやり方は極端で、小泉政権は格差社会を生み出しましたが、安倍政権は超格差社会を作ろうとしているとしか思えません。

 たとえば、正規社員の解雇規制の見直しを打ち出してクビ切りをしやすくする方針なので、ブラック企業といわれるような企業がますます隆盛となり、資本家階級がさらに多くの利益を手にする。その一方で、労働者階級は賃金が上がらないまま大増税を強いられ、生活がますます困難になるという社会構造になっていきます。

 では、庶民は生き残るためにどうしたらいいのか。資本家の金儲けのやり方に素直に乗るべきだと思います。具体的には、安倍政権が踏襲する小泉政権時代に何が起こったかを振り返れば、参考になることが多いと思います。中でも、小泉政権下の5年間で日本企業の経常利益は2倍に増え、配当金は3倍に増えたことはとても重要だと考えられます。

 その観点からいうと、庶民にとっても株式投資こそが最も有効な資産防衛術になりそうです。次が投資信託の購入。一番損をするのは現金で資産を保有し続けることです。

 アベノミクス効果で上昇したとはいえ、日本株がまだまだ割安な水準にあるのは間違いありません。東証1部銘柄の現在の平均PBR(株価純資産倍率)は1.3倍台です。だが、先進国市場の平均PBRは約2倍。もし日本が先進国水準並みに回復すれば、計算上は日経平均株価が2万5000円になってもおかしくありません。

 日銀の資金供給量=マネタリーベースの推移を見ると、日銀はまだ金融緩和する余力を残していると思われますので、日本が恐慌に陥る恐れはなくなったと見ています。ただし、株価は半年後ぐらいの景気動向を先に織り込んで動くので、来年3月末前にも天井を打って下降局面に入る可能性も考えられます。

 それでも、この先の半年間で日経平均は3000円や4000円は上がっても不思議ではなく、3月末までに2万円目前ぐらいまでは行くと見ています。つまり、そこまでは強気に攻めていい。4月以降は安倍政権の政策次第でどう転ぶかわからないので、後で後悔しないよう、このチャンスに大勝負をかけてもいいと思います。

 特に値上がりが期待できるのは、中長期投資を考えるなら、アベノミクスの成長戦略に沿った企業が注目といえます。具体的には、安倍首相は改憲を諦めたわけではないので防衛関連、いずれは再稼働に踏み切る可能性が高いので原発関連、国土強靱化政策の特需を受けるインフラ関連、さらに規制緩和関連などが伸びていくと思います。

※マネーポスト2013年秋号

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト