スポーツ

石川遼と松山英樹の成績に大きな差が出る理由を青木功が分析

 いまから40年前に海を渡って世界の強豪と戦った青木功氏(71歳)は、最初こそ結果が出なかったが、やがて米欧豪ツアーで優勝。1980年の全米オープンでは帝王ジャック・ニクラウスとゴルフ史に残る死闘を繰り広げた。若くしてプロデビューし、世界に挑戦する松山秀樹や石川遼はどう見えているのか、「世界のアオキ」が語った。

──石川遼や松山英樹のように若くしてプロデビューする選手が増えている。

青木:今はジュニアゴルフの分野が確立しており、小さい頃から腕を磨く子供がたくさんいます。今年のマスターズでも大会史上最年少の14歳で出場し、58位でベストアマに輝いた中国の関天朗のような選手が出てきた。また、プロテストを受けなくてもプロ宣言すれば賞金を稼げるようになりました。16~17歳で社会人と同じようにお金を稼いで、税金対策まで考える時代です。私たちには想像もできなかったことです。

──松山は世界で着々と成績を残し、期待も高まっている。

青木:松山は今のところうまくやっています。物怖じしないというか、あの鈍感さは魅力です。しかしツアーで優勝するのは出場する百数十人の中のたった一人です。特にメジャーとなると、ある程度、海外で腰を据えて場馴れすることが必要でしょう。松山がどう変わっていくのか見てみたいですね。

── 一方の石川は、華々しくデビューしたが最近苦戦している。

青木:石川はプロ生活6年、ツアーで10勝もしているのだから、もっと自由にやりたいことをやればいいのに、自分で枠をはめすぎている気がします。他のプロの真似ごとでも何でもいいので、もっといろいろなものを受け入れる気持ちの広さを持った方がいい。もう一つ石川、松山の二人にアドバイスするとすれば、海外へはもっと少人数で行くべきでしょう。

 私が海外に挑戦した頃は、女房がマネージャー役を兼務して同行しただけで、キャディも現地で雇いました。転戦するうちに一緒に食事したり練習ラウンドしたりする親しいプロ仲間ができ、ツアーの環境に溶け込むことができました。だが、大人数で行ってしまうと、他のプレーヤーたちと食事する機会すら失われてしまう。これでは溶け込めないでしょう。本人とマネージャー、キャディの3人で回るべきです。

──石川と松山の成績に大きな差が出ているのはなぜか。

青木:半分は「体力」の差でしょう。世間では、「心・技・体」と言いますが、私に言わせれば「体・技・心」。これはゴルフに限らずすべてのことに通じます。体力がなければ技術は身につかないし、長い時間、集中力を維持することはできません。もっとも松山は最初会った時は痩せていました。もっと太らなくてはダメだと言ったら、今度は太りすぎていました。そこで走り込んで体を絞れと言ったら、今の体になりました。素直すぎますね(笑)。

──あなたのゴルフは深い前傾姿勢、ベタ足打法、個性的なパッティングなど独自のスタイル。今の若手にそこまで個性的なプレースタイルの選手はいない。

青木:われわれの時代はジャンボ尾崎、中嶋常幸、杉原輝雄さん、みんな個性がありました。今の若い人が、もし同じ背丈で同じウェアを着てスイングしたら、下手をすると誰が誰だか分からない。私は海外に出かけても自分のゴルフを変えるつもりは毛頭ありませんでした。人に言われて直すような、そんな当てにならないゴルフはしていないという、練習と実績に裏打ちされた確固たる自信を持っていましたから。

 セオリー通りにきちんと練習しているのだろうけれど、もう少し自分自身で考え、模索してもよいと思う。

※SAPIO2013年11月号

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト