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来年導入の少額投資非課税制度NISA メリットと制約をFP解説

 来年スタートするNISA(少額投資非課税制度)の口座開設受け付けが10月から始まり、その人気の高さに注目が集まっている。国税庁によると、NISA口座開設の申請件数は初日の10月1日だけで実に358万件にのぼり、「今年中に1000万人近くが口座を開設する」(証券会社幹部)と見込まれている。

 NISAとは、年間100万円までの投資であれば、株や投資信託で得た利益が非課税になるという制度だ。現行の株式投資などによる利益にかかる税率10%は今年で終了し、来年以降は20%に跳ね上がるため、この激変緩和措置として導入が決定した。

 NISAを利用するには、専用の口座を銀行や証券会社、郵便局などの金融機関で開設する必要があるが、口座は1人1口座と決められているため、金融機関選びが非常に重要になる。

 FPアソシエイツ&コンサルティング代表の神戸孝氏が解説する。

「例えば、銀行で購入できるのは株式投資信託のみです。株式やREIT(不動産投資信託)、ETF(上場投資信託)なども買って運用したいなら、証券会社に口座を開設する必要があります」

 2014年の制度開始から2023年までの10年間は毎年、100万円までの非課税投資枠が新たに設定される仕組みになっている。各年に設けられた非課税投資枠の有効期間は5年のため、最大で同時に500万円を非課税で運用できることとなる。

 しかし、NISAには思わぬ「落とし穴」が隠されていると話すのは、ファイナンシャルリサーチ代表でファイナンシャル・プランナーの深野康彦氏だ。

「NISAについて『非課税』のメリットばかりが強調されていますが、非課税の恩恵に浴するのは投資が儲かった時だけです。通常の投資と同様、NISAにも儲かららない可能性があるのは忘れてはなりません」

 非課税の権利は誰でも得られるが、誰もが利益を享受できるわけではないというわけだ。

 さらに深野氏が指摘するのはNISA口座は他の口座と損益通算ができないという点。通常の投資であれば、年間を通して利益の出た金融商品と損失を出した金融商品があった場合、その利益と損失を合算し相殺できる。仮に100万円の利益をあげた株を持っていても、50万の損失を出した投信を保有していれば、課税対象は差し引きの50万円でしかない。

 しかしNISA口座では他の口座との損益通算はできない。これは、NISA口座が非課税の一方で、売買損失は発生しないとの前提に立って制度が設計されているためだ。さらにいえば、非課税枠の未使用分を翌年に繰り越すことも不可能である。

 これらの制約により、NISA口座を通じた投資では、一般的な口座での投資に比べ値下がり時のリスクが増す結果に繋がっている。というのも、例えばNISA口座で買った100万円の金融商品が、5年後の非課税期間が終了した時点で80万円に値下がりしていたとする。課税対象である一般口座に移した後、再び100万円に値を戻したとしても、差額の20万円分は利益と見なされ課税されてしまうのだ。

「結論からいえば、ある程度の利益が出た時には非課税期間中であっても売却し、利益を確定させてしまうといった、勝ち逃げを狙う選択肢が有効になります。仮に5年経っても利益が出ていなければ、その年に得られる新たな非課税枠を使って引き続き非課税で運用しつつ、利益を確定できるタイミングを待つべきです」(前出・深野氏)

 ただし、こうした落とし穴を理解したうえで賢く利用すれば、NISAで儲けることも可能なのである。

※週刊ポスト2013年11月1日号

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