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アマゾン 全体の整合性優先し売値が仕入れ値下回るケースも

 アメリカ西海岸のサンフランシスコも含めたベイエリア、シリコンバレーの企業は「新・生態系」を形成している。その代表的な企業のひとつ、EC企業・アマゾンが形づくっている新生態系について、大前研一氏が解説する。

 * * *
 デジタル新大陸では「ポータル」「物流」「帳合」の三つを制した企業が圧倒的に強い。そんな新大陸で生態系(エコシステム=複数の企業が商品開発や事業活動などで手を組み、互いの技術や資本を生かしながら、業界の枠や国境を超えて広く共存共栄していく仕組みのこと)を形成している代表的企業がアマゾンだ。

 同社は、前述の“三種の神器”を武器に、取り扱う商品を本やCD、DVDなどの「左脳型」から、靴やファッションなどの「右脳型」へと拡大した。そして今、同社が“進化”させつつある次の生態系のフェーズは「オートプライシング(自動値決め)」だ。

 普通の会社は、仕入れ値がいくらで、それにマージンをいくら乗せて……という方法で値決めをしている。だがアマゾンは、その商品が他のサイトやリアル世界の小売店でいくらで売られているかを調査し、自動的に“売れる値段”を決めているのだ(書籍やCDなど再販制度で定価販売を義務づけられている商品を除く)。

 このため、なかには売り値が仕入れ値を下回るケースも出てきてしまうが、お客さんを集めてこなければポータルにならないから、少しくらい赤字の商品があっても全体で整合性がとれていればかまわない、という考え方なのである。

 また、アマゾンは電子書籍リーダーとタブレット端末の「キンドル(Kindle)」を発売したものの、実はキンドル自体の売り上げを伸ばすことには、さほどこだわっていないのではないかと思う。

 アマゾンとしては、iPhoneやiPad、アンドロイド(Android)端末のユーザーであっても、無料のキンドルアプリをダウンロードして「キンドルストア」のアイコンを加え、アマゾンから電子書籍を買ってくれさえすれば、それでよいからだ。

 そしてアマゾンは、すでに次の段階の生態系を形成するための戦略に着手している。アマゾンが作り上げたシステムで、他の小売店の商品調達、販売、物流、支払い、回収をすべて代行します、というフェーズである。

 その仕組みは、たとえばリアルの小売店でお客さんが欲しい商品のサイズや好みの色が欠品していた場合、小売店からアマゾンに連絡すれば、そのサイズや色の商品を探し出してお客さんに届け、小売店に売り上げもつけてあげる、というものだ。

 つまり、アマゾンはオンライン小売業でありながら、リアルの小売店と競合するのではなく、ロングテール(あまり売れない商品)の在庫を持てない小売店の弱みを補完することで「ネットとリアルの融合」を推し進め、いわゆる“クリック・アンド・モルタル”の新しい生態系を構築しようとしているのだ。

※週刊ポスト2013年11月8・15日号

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