竹田津実氏が語った自然観とは(時事通信フォト)
クマによる人間の死亡事故が過去最多となり、1年を表わす漢字に「熊」が選ばれた2025年。大量出没のニュースに関しては、「クマを駆除すべき」という意見がメディアやSNSで目立ったが、北海道・知床で活動する動物写真家で獣医師の竹田津実氏(88)は、「クマ側からの視点が足りない」と異論を唱える。ノンフィクションライターの中村計氏が聞いた。【前後編の前編】
──この秋から冬にかけて、毎日のように人里でカキや栗などの果実を頬張るクマの映像がメディアを通して流れていました。知床やロシアでヒグマの撮影をしてきた経験を持つ竹田津さんは、昨今のクマ問題をどう捉えていますか?
竹田津:大前提として農業っちゅうのは大なり小なり、野生動物に対する壮大な餌付け行為だということを理解しておいた方がいいと思いますよ。要するに現在の状況はね、餌付けをやっといて、餌付いたのが悪いと、こう言ってるわけだから。不思議な理論なんです。柿の木なんてクマに来てくれって言ってるようなもんなのに、来たら仰天する。クマも悲劇ですよ。何が悪いんだって思うでしょうね。向こうからしたら「どうぞ」って言われてるようなもんでしょ。そら「ごちそうさん」って言いたくなるよね。そこの矛盾は、まずはちゃんと認識すべきですよ。
──現代人は餌付けという感覚は、なかなか持てていないと思います。
竹田津:クマ側からの視点というのかな、そこの想像力がぜんぜんないんですよ。クマがこれだけ人里に降りてくるようになったのは、必然だと思いますよ。(1990年に)春グマ駆除が廃止になって、徐々に増えてくることはわかっていたわけだから。一方、人間社会の方の人口はどんどん減ってきている。2025年のように山の餌が不作だったら、少しテリトリーを広げれば、トウモロコシやら、スイカやらがあるんだから。食べたい、食べたいってなりますよ。
──長い歴史で見たら、クマたちが自分たちのテリトリーを取り戻しに来ている感じですよね。昔、人間に奪われた土地を。
竹田津:はい、そうです。つまり、僕はクマには、その権利があると思っているんです。奪われたものを奪い返す権利です。もちろん、人間にも権利はありますから、人里に近づいてきたら堂々と駆除すればいい。自治体によっては、駆除したことを公表したがらないところもありますけど、それ自体は仕方ないし、悪いことではない。
