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デスクワークでもエコノミークラス症候群に 運動と水分を

 さまざまな職種によって“職業病”とまではいかないものの、仕事の種類やオフィス環境が原因のちょっとした身体のトラブルは少なくない。営業職から希望が叶って広報職に異動した杏子さん(仮名・28歳)は、仕事のやりがいは増えたものの、デスクワークが増えたことに因る体調の悩みも増えてしまったという。

「以前は外回りで、とにかく歩く機会が多かったのですが、今は一日中オフィスにいることも。意識して階段を使ったり、気分をリフレッシュするためにも、いろんな部署へ顔を出すように心掛けていますが、集中すると長時間座りっぱなしで、同じ姿勢でいたりして……。

 体を動かさなくなったことを差し引いても、かなり代謝が悪くなっているようで、腰痛やむくみ、肌荒れや体型など、あちこちに変化を感じています。これから寒くなるので、冷え症や肌荒れがますます酷くなりそうで心配です」

 杏子さんのように、職種が変わって実感するケースもあるが、デスクワークの多い人は、肩凝りやむくみをはじめとして、さまざまな不調を継続的に抱えている人も多い。そこで、現代のオフィスワーカーの日常的な「座りっぱなし」がもたらす、さまざまな不調や不都合の解消を目的に啓発を行なっている「オフィスワーク向上委員会」の専門家に話を聞いた。

「どんなに良い姿勢で座っていたとしても、動かなければ身体は固まってしまいます。体液や老廃物の巡りを良くするためには、リンパの流れを意識してみましょう。オフィスで簡単にできるストレッチをするだけでも、身体全体を動かせばリンパの流れは良くなりますよ」とアドバイスするのは、NPO法人国際ヨガ協会師範代でもある長田一美さん。

「例えば、イスに浅く腰かけ、両手でイスの横をしっかりと持って、脚を前に伸ばしながらゆっくりと前傾する『脚裏伸ばし』。同じくイスに浅く腰かけ、脚を組み、片手でイスの背を持ちながら上半身をねじる『イスでのねじりのポーズ』。両手を温かく感じて汗ばむくらいこすり合わせ、息を吐きながら手のひらの中央に目を当て、ゆったりと5回くらい深呼吸をする『目から頭のクリーンアップ』などが効果的。いずれもできるだけゆったりと息を吐きながら行なうことがポイントです」(長田さん)

 また、身体を動かすリフレッシュ以外に“座りっぱなし”による不調を緩和するポイントは、水分補給。動かないだけでなく、汗をかきにくい冬は特に、身体の渇きに気づかないので注意が必要と警鐘を鳴らすのは、早稲田大学人間科学学術院の永島計教授だ。

「人間の身体のおよそ60%を占める水分ですが、身体と水分バランスの崩れは、デスクワークなど、毎日長時間座りっぱなしの人でも、さまざまな悪影響を身体に及ぼし、トラブルを引き起こします。

 座りっぱなしというのは、足に力が入っていない、筋肉を使っていない状態です。ふくらはぎは第2の心臓といわれ、ふくらはぎの筋肉が弱ってしまうと、血流が悪くなってむくみやすくなります。特に、足を組んでいる人とパソコン作業の多い人は、リスクが高くなるので注意してください。足を組むと、膝の裏にある静脈を強く圧迫し、パソコン作業は、姿勢が前のめりになるので、股関節が曲がった状態になります。そうすると血流が心臓に戻らずに、下肢に血液が停滞しやすい状態を助長することになるのです。

 さらに座りっぱなしだから汗もかいていないと思い、水分摂取を怠ると、血液粘度が高くなり、最悪の場合、エコノミークラス症候群(肺動脈塞栓症)の危険にさらされることになります」

 長時間のデスクワークに因る“座りっぱなし”は、血が巡らない、血液の質が悪くなる、この2つの状態を生み出す。これらの要因は、脳への血液循環にも作用する可能性から、仕事の集中力や判断力にも影響を及ぼす懸念があるという。

「こうしたリスクを避けるには、血を巡らせるため、立ち上がって身体を動かしたり、足のポジションを変えることが必要です。そして水分補給は、喉が渇く前に常温の水分をこまめに摂取することがポイント。また冷たすぎる水を飲むと、口や喉にある“渇き”のセンサーが、強い刺激のために潤ったと早くに勘違いしてしまい、脱水した分の6~7割の水分量しか回復できません。

 目安としては1時間にコップ1杯ずつを継続的に摂取し、1日1500ml程度摂取するといいでしょう。特にナトリウムイオンの働きで、体内に水分をある程度保つ仕組みを持っているイオン飲料が適しています。1日500mlのペットボトル3本を摂取するのであれば、そのうち1本はイオン飲料にするのがお勧めです」(永島教授)

“水分を一度に、たくさん摂るのが苦手”という人の場合、1日に1500ml飲むのは大変なら、摂取水分量の1/3はイオン飲料を飲む――といった意識をするのも、ポイントのひとつだそうだ。

 仕事の効率を上げるためにも、ストレッチなど、適度に身体を動かす。喉の渇きを感じなくても、水分補給をこまめにする。そしてもう一つ、前出の長田さんが教えてくれたポイントは呼吸法。

「一心に働いていると、息が止まっていたり、口で呼吸をしている人が案外多いんです。デスクワークが主で、なかなか身体を動かすきっかけがない方なら、ただ深い呼吸を心掛けるだけでも違ってきますよ」

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