国内

2022年までに脱原発のドイツ 珈琲豆店が水力発電の電力販売

 小泉純一郎元首相の「脱原発」発言が物議を醸しているが、小泉元首相の言う「脱原発」を日本に先駆けて実施した先進国がある。 原子力17基を所有し、原発に電力の約2割を依存していたドイツは、法案で2022年12月までに原発の完全廃止を決定した。東日本大震災からわずか4か月後のことだった。

 物理学者で、原発推進派だったメルケル首相だが、福島原発の事故をきっかけに「脱原発」へ舵を切った。『脱原発を決めたドイツの挑戦』(角川新書)著者で、ドイツ在住のジャーナリストの熊谷徹さんは言う。

「ドイツ人は日本をハイテクノロジー国家だと信じていた。そんな日本でも事故が起こって、原発をコントロールできないことに非常にショックを受けたんです。それはメルケル首相も同じで“原子力使用に対して国民に責任を持てない”と思い知らされ、180度立場を変えたんです」

 ドイツ国民は環境意識が高いことで知られている。自宅で使う電気は、1000を超える電気販売会社から選べる。なかには、風力、バイオマス、太陽光、水力など、再生可能エネルギーだけを販売しているところも。

「例えば、ドイツ人なら誰もが知っているチボーというコーヒー豆販売店では100%水力発電で作られたエネルギーを売ってます。日本でいえば、お茶を販売する伊藤園が電力を売り始めたようなものです」(熊谷さん)

 また、原発を選択する家庭の毎月の電気料金の明細書には、1キロワット時あたりの核廃棄物量が記載されている。こうした意識の高い国民の後押しもあって、メルケル首相は、脱原発の道を突き進んだ。

「さらにメルケル首相は、2011年5月から2つの委員会に提言を求めました。ひとつが原子炉安全委員会という原子力のプロ集団。もうひとつが倫理委員会です」(熊谷さん)

 この倫理委員会のメンバーに原子力のプロはいない。社会学者や哲学者、教会関係者など。そして2か月後、彼らが出した答えは「福島事故によって、原子力発電のリスクは大きすぎることがわかった」というものだった。

 一方の原子炉安全委員会の報告は「ドイツの原発は航空機の墜落を除けば、洪水や停電などに対して比較的高い耐久性を持っている」という結論で、倫理委員会とは真逆だった。

「メルケル首相は、倫理委員会の提案を優先しました。この委員会の人選は政府ですが、委員会には原子力に反対していた人が多く含まれていました。このため、メルケル首相が最初から脱原発をめざしていたことは明白です。倫理委員会は、首相が考えていた通りの提言を行ったのです」(熊谷さん)

 とはいえ、国民の生命や財産を守ることが国の第一の意義とすれば、脱原発がもたらすリスクを考慮に入れてもあえて原発を存続させる必要はないと考えたのではないだろうか。

※女性セブン2013年12月12日号

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト