これまで唯一、おじさんに足りなかった相手に対する興味やサービス精神といったコミュニケーションスキルも、最近は飛躍的に向上してきたように思います。
例えば、50代に入って会社の第一線から外れて時間ができた男性たちが、学生時代のクラスメイトと同窓会を開いたり、旅行に行ったりという話をよく聞きます。故郷を懐かしみ、温かい気持ちになりたいのが大きな理由ですが、再会した友人たちとの絆を深めながら新たな世界や価値観を築きたい。一方ではそんな願望も持っているのです。
いま、町中の公共スペースを使って、安く楽しめる小さなイベントが数多く開催されています。おじさんたちがそうしたリアルなコミュニケーションの場をつくることによって、世代を超えて「立ち会う」ことの価値がどんどん高まっている。この現象は、ネット普及によるバーチャルな世界とは一線を画しています。
昨年、林真理子さんが書いた『野心のすすめ』がヒットしました。いまや男女の垣根がなくなり、いろんなコミュニティーを通じて夢や野心を抱くことがポジティブに捉えられる風潮ができています。そう考えると、今年は“新・野心家おやじ”がキーワードになるかもしれませんね(笑い)
【品田英雄/しなだ・ひでお】
1957年生まれ。学習院大学卒業後、ラジオ局(現・ラジオ日本)を経て日経BPに入社。1997年『日経エンタテインメント!』を創刊して編集長に就任。その後、同誌発行人を経て編集委員に。2012年10月より日経BPヒット総合研究所上席研究員を兼任する。
■撮影/山崎力夫