百田尚樹一覧

【百田尚樹】に関するニュースを集めたページです。

反安倍政権のデモでは激しい言葉も並んだ(時事通信フォト)
なぜ日本は対立社会になったか わかりやすく語ることの弊害
 戦後75年の節目を迎えてなお、先の戦争の歴史認識をめぐって多くの対立が生まれている。様々な意見が飛び交うこの問題とどう向き合っていくべきか。去る8月22日、著書『ルポ百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』で平成の右派論客の変遷を辿ったノンフィクションライター・石戸諭氏と、共著に『「歴史認識」とは何か 対立の構図を超えて』があるジャーナリスト・江川紹子氏が議論を交わした。 * * *石戸諭(以下、石戸):僕は著書『ルポ百田尚樹現象』で、SNSなどで中国や韓国に対する過激な発言を繰り返す作家・百田尚樹さんと、1990年代に歴史教科書の慰安婦に関する記述をめぐって運動を行なった「新しい歴史教科書をつくる会」を取材しました。そこで感じたのは、1990年代に比べて現代のほうが、歴史認識をめぐる議論が“記号的”になっていることです。 例えば、つくる会は慰安婦問題に関して、日本軍による「強制連行」はなかった、というロジックを展開して運動を展開しています。慰安婦問題については、彼らが展開した強制連行の有無という論点ではなく、現在では国際的な戦時性暴力の問題であると捉え直されるようになっていますが、大切な点は、つくる会は最初にロジックを作り上げて、それに基づく運動を行なっていたことです。そして特に西尾幹二さんの著作には強い情念を感じます。歴史観、国家観を問い直すという意志があるのです。 ところが、百田さんをはじめ今のSNSでは、ロジックよりも「韓国はおかしい」といった思いが先行しているように感じられます。江川紹子(以下、江川):彼らの思考の枠組みには似ているところがあると思います。つまり、自分の思いや直観といったものを中心に物事を見て、それが容易に正邪の判断、正しい・間違っているという判断に転換してしまう点です。それでも、旧世代ではまだそこに「理屈」が伴っていましたが、現在では「思い」が全てになってしまっている。「思い」が正邪の判断に転換すると、自分の思いや考えは正しくて、相手の思いや考えは間違っているという二元論的な発想になり、モノゴトを単純化しがちです。これは歴史認識の問題だけではありません。原発事故のときに、反原発を訴える中で「命か電気か」という二者択一の言い方がされましたが、今のコロナ禍でも「命か経済か」という表現で、同じ状況が起きています。こうした発想方法は非常に危うさを秘めています。石戸:自分たちの考えが正しくて、それ以外は間違っている。それだけでなく、自分たちの共鳴する意見以外は知的に劣っているという見方まで広がっています。江川:正しいことを言っている自分たちは知的で、そうでない間違ったことを言う人は反知性だと見下すようなやり方は、しっぺ返しを受けると思います。そういう方は、「百田尚樹現象」は、ある種、合わせ鏡というか、映し鏡だと思ってみる視点も必要だと私は思います。 オピニオンがウケる風潮の危うさ石戸:ジャーナリズム、もっと広くノンフィクションの世界は、そういった二元論や二項対立的な考え方をせず、その中間にあるグレーな領域を描くものであるはずです。ところが、今はジャーナリズムも二項対立に絡め取られている部分がある。僕は『ルポ百田尚樹現象』を発表した後に、リベラル派の物書きから「百田さんを取材することは、相手を利することになる」という批判を浴びました。それはまるで社会運動家のような批判のされ方だと思いました。 グレーな部分を描くためには事実を積み上げる取材が必要です。僕が所属した毎日新聞には「記者の目」という、取材した記者が自分の考えを書く名物コーナーがあります。僕もラッキーなことに現役時代に何度か書ける機会がありました。そこで担当デスクから何度も言われたことがあります。記者が意見や論を書くためには、その前提として事実を積み上げること、積み上げた事実を読んだだけで読者が「この記者はこんなことを考えているんじゃないか」と思ってもらえることが大切だということです。 非常にオーソドックスな教育を受けましたが、今は悪い意味で白黒をつけたがる運動家のような言葉のほうが人気がありますね。江川:バシッと論を言ってくれる人のほうがウケるわけですね。それは自分の読者や支持者を意識しながら論を展開するということで、百田さんに通ずるところがある。 私はジャーナリズムや評論の役割は、事実や論評を提示することで、人々が考える材料を提供することだと思うんですね。そして提示したものが、そのまま受け取られることが良いわけではない。考える材料になるならば批評や批判は大切ですが、相手をこき下ろすことで自分の支持者が喜んでくれるというものを提供し始めると、本来の目的から変わってしまいます。石戸:インターネットやSNSについて僕が反省的に捉えているのは、多くの人々が行動やアクションのほうこそが大事だと思ってしまったことです。社会運動を通して世の中を変えたいということは大切なことで、ここを否定する気はありません。ですが、ジャーナリズムやノンフィクションの世界では、江川さんがおっしゃったように考え方を提供することもまた大切にされてきたはずです。 資料を読んで、事象を見て、人と会って、話を聞くという取材過程を通してどう考えていったかまで描くことはできるはずですが、SNSでは短い字数の中でそうした過程を捨象してしまいがちです。江川:そこで考えたり、迷ったり、あるいは判断を留保したりすることがとても大事だと思うんです。けれども、世の中の風潮としては、早く結論を、早く判断を、早く行動を、ということになっている。スピード感が問われるうちに、ゆっくり考えたり、迷ったり、試行錯誤すること自体が優柔不断に見えてしまっているのかな、と思いますね。 ワイドショーの責任石戸:百田さんの読者に取材した時に、「言いにくいことでもズバッと言っている。それがいい」という声を聴きました。これは象徴的な意見だと思いました。しかし、SNSでも何かをズバッと批判する人のほうが支持を集める風潮がありますが、ズバッと批判してスッキリしたとしても何も解決しないわけです。江川:世の中には絶対悪も絶対善もそうそうなく、1つの出来事についても、複数の要素について考え合わせなければならないことが多い。コロナがまさにそうですが、あちらを立てればこちらが立たず、といったことがあります。「悪者はコイツだ」「こうすればすべてよくなる」式のシンプルな極論では、多くのことは片付かない。それを極論で片づけようとするから、世の中がこう着状態になってしまう面があると感じます。 その原因も何か1つに求めることはできませんが、私は、これはテレビの責任はかなり大きいと思います。なぜかというと、テレビは分かりやすいことが一番大事になってしまっているんですね。ニュースでは複雑な事象を扱っていることが多いわけですが、それを分かりやすく伝えようすれば、どんどんシンプルになっている。ワイドショーではさらに分かりやすく、さらに楽しく、そして面白く、となるわけですね。そうすると、やはりズバッと言ってくれる人がウケることになる。石戸:そうですね。本来は、ズバッと言うこと=分かりやすい、ではないはずなのですが。江川:だいぶ前のことですが、私は「格差」をテーマにした討論番組に出た時、冒頭に「格差について賛成ですか、反対ですか」と問われ、どちらかの札をあげろと求められて参ったことがありました。自由な競争がある以上、ある程度の格差が生じることはやむを得ない。ただ、その結果とても人間らしく生きていけないような貧困が生じたり、格差が固定化されることが問題なのであって、そういう議論を抜きにして、いきなり賛否を言えるような問題ではありません。なのに、こんな問いが出てくるまで単純化が進んでいるのだな、と。石戸:ズバッと言うことへの支持があることは念頭に置きながら、それだけではいけないということを考えないといけないと思います。 「判断留保箱」の大切さ江川:私は今、神奈川大学特任教授としてメディアリテラシーの科目を教えています。そこで学生に強調するのは、頭の中に判断留保箱を作りましょうということです。賛成か反対かのどちらかでは決められない、あるいは本当かどうか分からない、という事象に直面したら、いったん判断留保箱に入れておく。それで時々取り出してみて、これはどうかな?と考えてみましょう、ということを伝えています。石戸:判断留保箱、いいですね。江川さんの共著『「歴史認識」とは何か 対立の構図を超えて』は、まさにその判断留保箱の実践の書だと思います。非常に高名な国際法学者で、慰安婦問題をはじめとする歴史認識の問題に取り組まれていた大沼保昭さんの聞き書きを江川さんが担当されました。 大沼さんは2018年に亡くなられた。僕は大沼さんにお目にかかったことはありませんでしたが、ものすごく尊敬しているのは、副題に「対立の構図を超えて」とある通り、政治的な立場を超えて色々な方と直接対話し、議論し、その意見を取り込みながら現実的な解決策を模索されていたことです。江川さんから見て、大沼さんはどんな方だったんですか。江川:大沼さんは、国際法がご専門ですが、戦後責任の問題について研究されていました。研究室にこもるのではなく、市民運動にも関わる実践派でもありました。慰安婦問題だけでなく、サハリン棄民――サハリンに置き去りにされた朝鮮半島出身者――が祖国に帰ることを支援したりしておられました。この本を作るにあたって、自分が研究者として専門でない分野については、思想的な左右を問わずに歴史などの専門家に原稿を読んでもらって、事実関係をチェックされていた。学者として非常に誠実で、緻密なお仕事をされる方でした。 そんな大沼さんがおっしゃっていた事で印象に残っていることの1つは、国際条約というのは、どちらの国も両方とも不満が残るような条約が最も良い条約というお話です。それは人間関係でも同じで、対立する双方が不満なのが一番良い解決策ということで、ご家族でも実践されていたそうです。石戸:なるほど。普通は双方が満足するほうが良いと思いがちですよね。江川:ええ。しかし、双方が満足することは非常に難しい。価値観が違い、対立していて、利益も違ったら尚更ですが、両方とも満足はできない。片方だけが満足するのは、もっとよくない。だから、互いに不満な条約がちょうど良いというわけです。それから、大沼さんがもう1つよくおっしゃっていたのは、「大部分の人は俗人である」ということです。良いこともするけど、悪いこともする人が大半で、極悪人や聖人はほんのわずか。だから、相手に聖人のような行動は求めてはいけない。石戸:SNSの時代に非常に示唆的なお言葉ですね。※8月22日に収録した対談を再構成しました。
2020.09.28 16:00
NEWSポストセブン
支持と批判が相半ばする存在だった(時事通信フォト)
安倍政権と「百田尚樹現象」の共通点 支持と批判が同居
 8年近くにわたる長期政権が終わった。安倍晋三・前首相が辞意を表明するまでの支持率低下とは一転、朝日新聞の世論調査では安倍政権を「評価する」と答えた人が71%に上った。在任中は多くの批判を浴びた安倍氏だが、その一方で熱烈な支持を集めていたことも事実だ。辞任直前の8月22日にノンフィクションライターの石戸諭氏とジャーナリストの江川紹子氏が行なった対談は、支持と批判が同居する安倍政権の特徴を捉えた議論となった。 * * *石戸諭(以下、石戸):僕は刊行した『ルポ百田尚樹現象』の取材をする中で、安倍政権が長期にわたって続いていることと、百田尚樹さんが支持される現象は、けっこう似ているんじゃないかと感じていました。安倍政権を支持しない人々は、これまで森友・加計問題にしろ、桜を見る会にしろ、安倍政権がいかに駄目かということを繰り返し指摘してきました。 僕も批判には賛同しますし、ひとつひとつが、これまでなら政権が崩壊してもおかしくない話だったと思います。ところが、それでも安倍政権を絶対に支持するという人が少なからずいるから、ここまで長期政権になったわけです。 百田尚樹さんも、『日本国紀』や『殉愛』などの著作で事実の間違いについて、あるいはツイッターや右派論壇誌で繰り返してきた中国や韓国に対する過激な発言について批判を浴びています。しかし、それでも多くの読者がいてベストセラーを連発している。この2つの現象には共通点があるように思えたんです。江川紹子(以下、江川):安倍さんや百田さんを、批判している人はたくさんいるけれど、その批判は彼らの支持者には届いていません。いくら事実を突きつけ、間違いを指摘しても、それだけでは支持者の人たちの心に響かない。もちろんファクトチェックは大切なのですが、彼らにとっては事実よりも、思いや気持ちのほうが重要なんでしょう。 例えば、安倍さんは選挙戦の最終日に秋葉原駅前で演説することを恒例にしています。そこには多くの支持者が集まり、日の丸の旗を振りながら安倍さんが来るのを待っている。あの様子を白黒写真に撮ってみると異様な感じがしましたが、その場にいる人にはそこまでの深刻さが感じられない。 そして、演説が終わって安倍さんがいなくなると、今度はマスコミに向かってシュプレヒコールをあげ始める。NHKや朝日新聞に対して批判を始めるわけです。ところが、その中身を聞いていると、とにかくあまり理屈はないんですね。その場でわかりやすい敵を名指ししているだけといった感じで、ある種お祭りみたいな感じになっている。石戸:百田さんが出演するYouTube番組『真相深入り!虎ノ門ニュース』の会場の前には、毎回多くの百田さんのファンが訪れます。番組の休憩中と、終了後に百田さんがサイン会をするので、彼の著作を持って見に来くるんです。ちょうど去年の改元前後の10連休では、100人以上が集まり、隣のビルまでずらりと列をつくっていました。ここまで熱烈なファンを抱え、しかも毎週のようにファンと直接、接点を持とうとする作家というのは、ちょっと他では思いつきません。 僕はこうした現象を目の当たりにしたときに、百田さんや安倍さん個人の問題を追及するのではなく、なぜ百田さんがこれほど支持を集めているのか、あるいは安倍政権がなぜ長期にわたって生きながらえているのか、という問いを立てるべきだと思いました。そのほうが、今の社会を見えやすくする見取り図になるんじゃないかと。 百田尚樹現象と「トランプ現象」の類似点江川:『ルポ百田尚樹現象』を読んで、今の社会を理解するうえで大事なのかもしれないと思いながら、あまり見たくないから見ないできたもの、あるいは置き去りにしてきたものを見せられたという感じがしました。見ないできたものというのは百田さんとその周辺であり、置き去りにしてきたものというのは、1990年代の「新しい歴史教科書をつくる会」です。今に続く色々な問題が可視化され、右派のポピュリズムという一つの系譜が示されていた。 そして、先ほどの話のように、今の時代は事実よりも思いや気持ちが重視される。思いに訴えかけるほうが影響力を持つことにもなる。思想的に右か左かということには関係なく、そうした現象が起きている時代の一断面を見せられました。石戸:江川さんにそう言っていただけて嬉しいです。ただ、一方で反響として多かったのが、百田さんをはじめ、右派の人々をテーマに取り上げるのはいかがなものか、という反応でした。彼らを利することになるだけじゃないか、と言われることもありました。江川:誰がそんなバカなことを言っているんですか?! そういう方は、百田さんやその周辺の出来事を苦々しい気持ちで見ている人だと思うんですけれども、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という言葉をご存知ないんでしょうか。彼を知ろうとしないと、百戦連敗という感じになってしまいます。たとえ自分にとって望ましくないものであったとしても、その望ましくない現象がどうして出てくるのかを知っておいたほうが良いと思うんです。 2016年にはアメリカでトランプ大統領が誕生しました。あのときは、多くの人がトランプさんは負けると思っていた。トランプ支持者をきちんと取材せずに、民主党が勝てると思っていた人も多かったようです。これはまさに相手のこと、相手が支持されている現象を見ていなかったがゆえの読み違いであり、失敗です。朝日新聞の国際面はいち早くトランプ支持者の熱狂を報じていましたが、選挙の結果を見ると、そうした熱狂があちこちにあったんだろうと想像できました。 「つくる会」から「百田尚樹現象」へ石戸:先ほど、新しい歴史教科書をつくる会の名前が出ました。僕は『ルポ百田尚樹現象』の第二部で、百田現象に連なる現象として、つくる会を取り上げました。百田さんのような攻撃的な発言をする人が右派の中から出てきた素地はどこで作られたのか。その決定的な転換点が、1990年代のつくる会だったのではないか、と仮説を立てて取材したんです。 つくる会のメンバーだった西尾幹二さん、藤岡信勝さん、小林よしのりさんは、歴史教科書の「従軍慰安婦」の記述に違和感を覚え、歴史問題を問い直さなければならないと考えた。それで、朝日新聞や文部省といった権威を設定し、彼らに対抗し、反朝日・反リベラルという敵を作り上げるやり方をとった。今のネトウヨ的なもの、あるいは安倍政権や百田さんを支持する人たちにつながる源流は、このつくる会にあったんじゃないかと。 江川さんは慰安婦問題などの歴史認識の問題について、国際法学者の大沼保昭さんとの共著『「歴史認識」とは何か 対立の構図を超えて』を出されているので、つくる会についてうかがってみたいと思っていました。当時、江川さんはまさにオウム真理教の取材でお忙しかったと思いますが、つくる会をどうご覧になっていましたか?江川:そうですね。当時はオウム裁判の傍聴で手一杯でした。だから、つくる会については、メディアで読むくらいで、きちんとフォローしていなかったんです。教科書問題はつくる会が登場する以前にもありましたが、あれだけ大衆を巻き込む現象になったのは初めてでしょう。しっかり観察しておかなかったのは、今思うと不覚だったなという思いです。石戸:とはいえ、小林よしのりさんとの接点はあったんですよね。小林さんはつくる会で活動し始める前は薬害エイズの問題や、オウムの問題を書いていました。オウムについての小林さんの活動はご覧になっていた。江川:石戸さんの本でも、小林さんがオウムについて語っていますよね。小林さんは「だんだんと運動にはまっていき、集団の中に溶け込んでいく左翼の感覚と、オウムの信者がオウムの集団の中に溶け込んでいくのが同じだとわしは思った。つまり、どちらも個をなくしていき、集団に溶け込んでいく」と話しています。 しかし、これは私のオウムの認識とは全く違うんですよ。私の考えでは、あの頃のオウムの人たちは、集団に溶け込んでいたんじゃなくて、麻原個人に溶け込んでいた。だから、左翼の感覚とオウムが同じだというのには非常に違和感を覚えました。 「好き嫌い」が「正邪」の判断に転換する江川:また、小林さんは戦争で亡くなった日本兵についても書いています。彼らのように国のために命をかけた人は「個」が確立されていて、オウムや左翼は「個」が確立されていないと言う。しかし、これは後付けだと私は思います。つまり、小林さんは日本兵の自己犠牲の物語に感動したんでしょう。小林さんにとっては、その思いや気持ちが大切なのだけれど、ご自分はそういう感情だけで動かされているんじゃないと言いたくて、理屈づけが必要だったのかな、と。石戸:思いや気持ちを重視する点は、百田現象や安倍政権の支持者とつながってきますね。江川:小林さんも、そういう思いを大切にする人です。百田さんと同じく、好きか嫌いかという思いが、正しい、正しくないという正邪の判断に容易に転換しがちな人なんですね。石戸:小林さんと百田さんはともに自分の気持ちに正直な人ですが、決定的に違うのは、小林さんは自分が書いたものに対する責任を感じているところだと思います。『戦争論』などを書いて、ネトウヨ的な人を呼び寄せてしまったかもしれない。そういう人たちに対して、なんとかして引き戻したい、あるいは別の物語に接続させたいと感じているところがある。江川:小林さんは理屈づけを必要としているだけあって、時々立ち止まって自分をある程度客観視して考えようとされるんじゃないでしょうか。そこが百田さんとは違う気がします。百田さんは、石戸さんの本でも語ったように、思ったことを言っているだけなのに何が悪いのか、ということになる。どこまでも「思い」が大事。それが何をもたらしたのか、といった考察が見られない。だけど、自分が放ったもの、あるいは自分が耕したところに生えているものについて、しっかり見て、自分がそれに果たした役割を考察することは大切だと思うんです。石戸:百田さんは僕のインタビューに「政治的な影響力を持ちたいと思ったことはない」と答えました。名誉毀損が確定した『殉愛』についても、「申し訳なかった」と言いつつ、「一回書いて世に出てしまったものはしょうがない」という言い方をする。一見すると潔いのですが、しかし、言論の責任感という意味では薄い。江川:百田現象のひとつは「あっけらかん」という言葉で表現できるのかもしれませんね。※8月22日に収録した対談を再構成しました。
2020.09.26 16:00
NEWSポストセブン
都知事選「小池圧勝」で考えたいポピュリズムへの処方箋
都知事選「小池圧勝」で考えたいポピュリズムへの処方箋
 7月5日に投開票された東京都知事選は、小池百合子氏の圧勝で幕を閉じた。学歴詐称疑惑が再燃するなどの逆風もあったなか、前回都知事選に引き続き多くの票を獲得できたのはなぜか。ノンフィクションライターの石戸諭氏が「ポピュリズム」という観点から読み解く(文中敬称略)。 * * * たった4年前の選挙で掲げた公約の多くが未達成のまま、小池百合子が多くの支持を集めたのはなぜか? 私には、この結果が「ポピュリズムの時代」を象徴する現象に思えてならない。 ポピュリズムとは何か。この問いを巡る学者たちの論争は続いてはいるが、オランダの政治学者カス・ミュデらは、ポピュリズムをこう定義する。「社会が究極的に『汚れなき人民』対『腐敗したエリート』という敵対する二つの同質的な陣営に分かれると考え、政治とは人民の一般意志の表現であるべきだと論じる、中心の薄弱なイデオロギー」(『ポピュリズム デモクラシーの友と敵』2018年) 重要なのは、社会が「敵対する二つの同質的な陣営に分かれる」、すなわち「敵」を設定したうえで、自らは「人民の一般意志」の代弁者として振る舞うことだ。  現在の日本で、この定義に当てはまる典型的なポピュリストは、新型コロナ対策において「夜の街」「パチンコ店」などを「敵」に設定する小池だ。私が、近著『ルポ百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』の中で取材した作家・百田尚樹もリベラルメディアを巨大な「敵」「権威」として、「反権威主義」を原動力に変えてきた。 彼らの言葉の特徴は、自覚的なのか無自覚かを問わず、常に明確なターゲットを設定し、攻撃することにある。多くの人に「私が思っていたことを代弁してくれた」「よくぞ言いにくいことを言ってくれた」と思わせているところがポイントだ。 私は同書の中で、こうしたポピュリズムの時代の処方箋として、民俗学者の柳田國男の指摘を参照した。柳田は終戦直後の文章や対談で、次のように指摘している。「あの戦時下の挙国一致をもって、ことごとく言論抑圧の結果と考えるのは事実に反している。利害に動かされやすい社会人だけでなく、純情で死をも辞さなかった若者たちまで、口をそろえて一種の言葉だけをとなえつづけていたのは、強いられたのでも、欺かれたのでもない。これ以外の考え方、言い方を修練する機会を与えられていなかったからだ。こういう状態が、これからも続くならば、どんな不幸な挙国一致がこれからも現れてこないものでもない」(野原一夫『編集者三十年』より) 「一番私が反省しなければならぬと思ってしょっちゅう若い読者に話しているのは、日本人の結合力というものは、孤立の淋しさからきているのですね。そのためにみなのすることをしないでおっては損だという気持が非常に強いのです」(家永三郎との対談「日本歴史閑談」より)「孤立の淋しさ」が、「一種の言葉」だけに結合した先にやってくるのは、「不幸な挙国一致」でしかない――柳田の言葉は、SNS全盛、インターネット全盛の今だからこそ問い直されるものであるように思えてならない。柳田はさらにこう指摘している。「あなたの思うことは私がよく知っている。代って言ってあげましょうという親切な人が、これからはことに数多くなることも想像せられる」(「喜談日録」より) 現代の「代弁者」は巨大な樹木のように、組織だって現れるわけではない。大きな危機に立ち向かうために、「日本人」「都民」の協力を求め、「孤立の淋しさ」を掻き立てるように現れる。「不幸な挙国一致」が起きていないか。これがまさに今、この瞬間に問われている課題だ。
2020.07.06 16:00
NEWSポストセブン
関西の伝説的番組に携わってきた百田氏が考えることとは
百田尚樹氏『ナイトスクープ』で培った「小説の原点」
 関西の人気番組『探偵!ナイトスクープ』は、コロナ禍の中で新規収録が難しい中でも、視聴者からの「もう一度見たい!」という要望に応えて過去の名作を放送していた。この番組を“原点”とするのが、ベストセラーを連発する一方、過激な発言で炎上を繰り返す小説家・百田尚樹氏だ。彼が20代の頃から構成作家として携わった『ナイトスクープ』で培ったものは、小説にも活きているという。百田氏を5時間半以上にわたって取材したノンフィクションライターの石戸諭氏がレポートする(文中敬称略)。 * * * 1990年代の全盛期には関西で視聴率30%を誇り、今なお続く『探偵!ナイトスクープ』。初代「局長」はあの上岡龍太郎であり、西田敏行、松本人志と局長を変えながら、関西では誰もが知っているお化け番組として君臨している。 一般の視聴者から寄せられた疑問を、「探偵」に扮したタレントたちが解決する。番組を要約するとたったこれだけなのだが、素人の依頼を涙あり笑いありに仕立て、視聴者を熱狂させたのが、チーフ構成作家に抜擢された百田尚樹だった。 私は著書『ルポ 百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)の中で、『ナイトスクープ』を手がけた朝日放送(ABC)の名物プロデューサー・松本修に、構成作家として百田を迎えた経緯を聞いた。松本が、『ナイトスクープ』の原案となる企画を考えていた時、たまたま近くのホテルプラザにいた百田に声をかけると、彼は喜んで参加すると快諾したという。当時の百田は、同志社大学を中退して定職に就いていなかった。 松本は『ナイトスクープ』を手がける前に、大阪発で全国的な人気を誇った素人参加番組『ラブアタック』のディレクターも務めており、同志社大時代の百田はこの番組で最も人気を博した常連出演者だった。 松本は百田について、何も教えなくてもテレビを知っていた「天才」と語る。彼なら新しいことができる。百田は松本の期待に応え、エース構成作家として業界にその名を知られるようになった。 伝説の回として名高い1993年8月6日の「大阪弁講座」で、百田は「(あの犬)チャウチャウ、ちゃうんちゃう」を地方から大阪に集った若者にレクチャーすれば、面白いと提案し、そのアイディアはそのまま採用された。松本によれば、今でも大阪弁の定番ギャグの一つだが、源流はこの回にあるという。 もう一つ、この番組のスタンスとして大切にしていたのが一般人である視聴者を絶対にバカにしないということだ。松本も百田も視聴者の感性を信じ、安易な素人いじりだけで笑いをとることをよしとしない。関西のテレビ界に流れる、リアリズム、視聴者が面白いというものは数字に跳ね返り、かつ正しいということを彼らは信じている。 このスタンスは、後年に小説家としてデビューして以降の百田にも引き継がれていくことになる。『永遠の0』が刊行された2006年から、百田氏がTwitterを始めた2010年頃までは、同作には「右傾化」「戦争賛美」という批判は出ていなかった。 それは朝日新聞が書評欄(2010年7月11日付)で取り上げ、映画化に至ってはスポンサーに名を連ねていたことからも明らかだ。書評を担当したライターの瀧井朝世がいかに「絶賛」したかを引用する。「死んだ人間の本音を聞くことはできない。しかし周囲の証言から、祖父が何を正義とし、そして何を決断したのかが少しずつ組み立てられていく。そして最後まで信念を持ち続けた彼の心の強さが明るみに出る場面では、どうしても涙腺が刺激されてしまう。だが本書は『哀しくて泣かせるだけの本』ではない。祖父の真実を知った後、人生における決断を下す主人公たちのように、読み手にも何らかの勇気が与えられる。読後には、爽快感すら残されるのだ」 山場をいくつも作るストーリー展開と構成は、視聴率と向き合ってきたテレビでの経験を応用している。ある編集者は、百田から『ナイトスクープ』の分刻みの視聴率グラフを見せられた。ちょっと下がった原因は展開がもたついたからチャンネルを変えられた、上がったのは盛り上がるように山場を作ったからといった形で百田は事細かに分析してみせた。小説執筆中も何度も「チャンネルを変えられないようにせんとなぁ」というつぶやきを聞いたという。 徹底的に「おもしろい」に向き合う原点は、やはりテレビにあった。ここに彼にとっては自分が思っていることを正直に語っているにすぎない「右派的言説」が加わり、百田尚樹現象は完成に向かう。 
2020.07.03 16:00
NEWSポストセブン
百田尚樹氏『永遠の0』の26年前に書いた「幻の小説」
百田尚樹氏『永遠の0』の26年前に書いた「幻の小説」
 累計2000万部以上の部数を誇る小説家でありながら、SNSなどでの過激な発言で注目を集める百田尚樹氏。学生時代まで遡って取材すると、百田氏が「語ってこなかった過去」が明らかになった──百田氏を5時間半以上にわたって取材したノンフィクションライター・石戸諭氏がレポートする(文中敬称略)。* * * 関西テレビ界を代表する名物プロデューサーで、『探偵!ナイトスクープ』などの人気番組を手がけた朝日放送(ABC)の松本修は、百田と約40年にわたる親交がある人物だ。私が近著『ルポ 百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』の取材でインタビューすると、松本は学生時代の百田について忘れられないエピソードを教えてくれた。 百田には、1980年当時から小説への憧れがあった。実際に1980年には講談社の文芸誌「群像」の新人文学賞に作品を応募し、1次選考を通過している。朝日放送の近くにあった「ホテルプラザ」のコーヒーショップで、松本は百田の応募作「古本屋」を読んでいる。 作品の欠点をいくつか指摘すると、激昂したという。しかし、松本は意に介さずこう思っていた。「小説の才能は間違いなくある。ずっと書き続けたほうがいい」 百田が応募した1980年の受賞作は長谷川卓の「昼と夜」だったが、1次予選通過者として「群像」には、実際に「百田尚樹」の名前と作品名が掲載されている。小説部門の応募総数は1288篇であり、当時の最終選考委員は吉行淳之介、島尾敏雄、丸谷才一といった面々が名を連ねていた。 当時の群像新人文学賞は、綺羅星の如き才能を生み出した文学界の一大拠点だった。1976年に村上龍が受賞作「限りなく透明に近いブルー」で文壇に衝撃を与え、百田が応募する前年1979年の受賞作は、村上春樹「風の歌を聴け」である。 1981年には笙野頼子が「極楽」で受賞し、同年の長編小説部門は高橋源一郎が「さようなら、ギャングたち」でその名を刻んでいる。ちなみに1980年の評論部門には、法政大学でも教鞭を執った文芸批評家の川村湊、推理小説評論で名高い野崎六助の名前があった。 村上龍、村上春樹、笙野頼子、高橋源一郎──。いずれ劣らぬビッグネームがこぞって応募した「群像」に、同時代を生きる百田も応募していた。彼もまた無名の文学青年の一人だったのだ。 若い時に文学への憧れを抱いていた青年は、しかし文学界ではなくテレビ界で活躍することになる。放送作家として、関西テレビ界の伝説的番組『探偵!ナイトスクープ』に最初期から携わった。 そこで百田は、視聴者がどこで受けて、何を求めているのかを肌感覚で知ることになる。視聴率が取れることは、何より大切な現場のリアリズムだ。 テレビはどこまでいってもチームプレーだが、一人で物語の世界を完結させることができる小説家への憧れをどこかで抱いてきたのだろう。デビュー作『永遠の0』を発表したのは2006年、50歳になってからだが、その時から市場に評価され、「売れること」を追求していく。百田は、私のインタビューにこう語った。「売れることが一番大事。そのためにやっています。売れなくてもいいならブログに書いていたらいい。僕の本で、編集者、製本会社、書店、営業……。多くの人がご飯を食べているんです。売れなくもいいから本を出そうとは思いません」 そう考える原点は、1980年代に「群像」に応募した文学青年としての過去と、視聴率を追及した放送作家時代にあるのではないか。
2020.07.01 16:00
NEWSポストセブン
日韓関係などを語る際にキーワードとなってきた「自虐史観」のルーツは?(写真EPA=時事)
「自虐史観」のルーツは? 朝日新聞も使っていた過去
 慰安婦問題を始め、日韓関係を論じる際に右派が強調してきたキーワードに「自虐史観」という言葉がある。現在、世界遺産に登録されている長崎・軍艦島について、韓国政府がユネスコに対し「世界遺産登録取り消し」を求める方針だと報じられているが、右派からは、当時の軍艦島で朝鮮半島出身者が不当な扱いを受けていたというのは「自虐史観」だとする主張も出ている。では、この「自虐史観」は誰が、いつごろ言い始めた言葉なのか? ノンフィクションライター・石戸諭氏が「自虐史観」の“ルーツ”を探った(文中敬称略)。 * * * 右派が好んで使い、百田尚樹も含めて現代まで「克服」の対象になっている「自虐史観」は誰が使い始めた言葉なのか? この問題について正確な回答ができる人はそこまで多くない。 間違いない事実は、遅くとも1980年代には右派論壇で使われていたことだ。記事検索で遡れるまで遡ると、例えば1986年10月号「正論」に「“自虐史観”は日本の専売特許 外国教科書にみる歴史の『光』と『陰』」という記事があることがわかる。この論考を書いたのは立教大名誉教授の別技篤彦だが、実はこの論考内に「自虐史観」という言葉は一切使われていない。編集部がつけただけであり、論考の中身もニュートラルなもので、「左派が日本を貶めている」という意味合いでは使われていない。 興味深いのは、自虐史観の克服は右派だけの課題ではなかったことだ。昭和から平成へと元号が変わり、冷戦が終結した1990年代初頭は自虐史観という言葉を左派系メディアの朝日新聞も「陥ってはいけない」対象として書いていた。 1990年8月12日付朝刊の「現代史から何を学ぶか」と題された長いコラムの中で、当時の論説主幹・松山幸雄がはっきりと述べている。「私としては、生き残った世代も、戦争を知らない世代も、すべてが、次の4点について思いをめぐらせるよう期待したい」とし、「1、なぜ戦争を始めたのか」「2、敗戦の原因」「3、反省不足」「4、西独との違い」を挙げて、こう続ける。「こうした『にがい歴史』を反芻するさい心すべきは、日本だけが恥ずかしい過去をもっている、といった『自虐史観』に陥らぬことだ。日本以外の大国の多くも、歴史上いろいろ汚点を残しているのだから。 英仏のかつての植民地支配など、いまなら国連非難決議ものだろう。スペインの中南米侵略、米国の奴隷輸入、ナチスのユダヤ人虐殺……ソ連に至っては周辺諸国に嫌われることばかりやってきた。引け目を感ずることを恐れて『過去を直視しない』のは間違っている」 松山のコラムは日本の歴史を相対化し、かつての大国にも「汚点」があると指摘する後段だけ読めば、およそ「朝日新聞」の論説主幹らしからぬもので、「自虐史観」という言葉のゆらぎを示している。  ここまでの事実関係を整理すると「自虐史観」という言葉のルーツは確かに右派系論壇誌にあるのは間違いないが、松山のようにリベラルメディアでも使う論客はいた。 それを歴史教科書批判に加えて、右派の側から「改革すべき対象」という意味で確定させ、意識的に使ったのが、「新しい歴史教科書をつくる会」の中核メンバーで、東京大学教授(当時)の藤岡信勝だった。彼は1996年1月11日の産経新聞で「自虐史観・暗黒史観」という言葉を使って教科書の歴史観を左派的であると批判し、自身が提唱する自由主義史観の意義を語っている。 藤岡は取材を受けたり、つくる会の準備に奔走したりする中で自虐史観という言葉が持っている「強さ」を前面に押し出すようになる。自虐史観の使用頻度を増やしていき、1997年9月には『「自虐史観」の病理』(文藝春秋)という著作を出すに至る。百田に連なる「自虐史観」は、ここで意味を確立したとみていい。 攻撃的な言葉は使われるたびに威力を増していく。この前後の産経新聞は藤岡への期待を寄せた論考を多数掲載しているが、自虐史観という言葉は、藤岡への注目と比例して、右派メディア上でもリベラル派、左派を攻撃する言葉としてかつてないほどの広がりを見せる。 この「自虐史観」は、1996年からスタートした「新しい歴史教科書をつくる会」の運動の結節点となった。藤岡は私のインタビューで、つくる会の特徴をこう振り返った。「左翼の用語を使えば、これは統一戦線運動なんです。細かい考えは違っても、共通する一致点で力を合わせようというのは、教科書問題ならばできる。教科書問題は、いろいろなテーマの中で最も団結しやすい、まとまりやすいテーマなんです」 団結を深めるためのキャッチフレーズ、それが「自虐史観」だったのだ。※石戸諭著『ルポ 百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)より再構成。
2020.06.24 16:00
NEWSポストセブン
玉川徹氏と百田尚樹氏の研究、2人から見つかる意外な共通点
玉川徹氏と百田尚樹氏の研究、2人から見つかる意外な共通点
 玉川徹氏(57)と百田尚樹氏(64)──かたや“政権批判の急先鋒”のコメンテーター、かたや“総理に最も近い作家”である。正反対な主張を繰り広げる2人だが、その「発言のスタイル」を紐解くと、意外な“共通点”が見えてくる。6月17日に『ルポ 百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』を上梓するノンフィクションライター・石戸諭氏がレポートする。(文中敬称略)◆自分の気持ちに正直な2人 緊急事態宣言が全都道府県で解除されてから一夜明けた、5月26日──。『羽鳥慎一モーニングショー』で玉川徹は上機嫌だった。現在、日本で最も注目されているテレビ朝日社員コメンテーターである。 玉川は最初期から一貫して新型コロナの怖さを大きく強調し、PCR検査を希望者に実施せよ、経済的な補償をせよと訴え、新型コロナ禍で『モーニングショー』を磐石の高視聴率番組にした。「やっぱり頑張りましたよ、みんな。法律で罰則がないにもかかわらず、抑えられたという事もうれしい」「我々は戦士だ。でも、戦士にも休息が必要なんですよ」 その声は無邪気なまでに明るい。ほんの1か月前に“誤報騒動”を巻き起こした本人とは思えないほどに快活だった。4月28日放送回で、前日の東京都の感染者数(39人)について、「番組のスタッフが確認しているんですけど、39という件数は全部これ民間の検査の件数なんです」と発言したが、実際は行政機関による検査も含まれ、訂正・謝罪に追い込まれた一件である。「誤報」すらも話題に変えていく姿勢、そして過去を引きずらずに今という瞬間を大事にする姿勢は本当に似ている、と思った。 誰に? 首相・安倍晋三に最も近いベストセラー作家・百田尚樹に、である。  百田も新型コロナ禍で、注目を集めた人物の一人と言っていいだろう。私は『ルポ 百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』の取材で、百田を5時間半以上インタビューした。 2人に共通すると感じるのが、「その時々の“思い”を重視した発言」だ。玉川は緊急事態宣言について、国が躊躇していた当初は「早く出すべき」と主張し、宣言されたらされたで「まだ甘い」と、その時々で感じたままに発言する。 百田も新型コロナ対策をめぐり、安倍政権への評価を二転三転させている。当初中国、韓国からの入国禁止策を取らなかった安倍政権を容赦無く批判したが、首相側が会食をセッティングし、2月28日に実現すると、百田は以降、しばらくの間、批判のトーンを弱めた。表面的には一貫性のない言動に、リベラル派論客の中には、会食の効果があって批判を引っ込めたと見る向きもあった。だが、そうした見方は間違っている。 その根拠は、2月27日に全国一律で「要請」した小中高校の一斉休校にある。私のインタビューに、百田は「果敢にやらないといけないでしょう。官僚っていうのは自分から決めませんからね、絶対に」と語り、官僚にはできないリーダーシップを高く評価した。最大の評価ポイントは「総理が毅然とした対応をした」ということにある。彼は安倍首相の果敢な姿勢に感動し、中国や韓国に臆病な姿勢をとったことに失望している。その時々で彼は、自分の気持ちを正直に語っているだけなのだ。 インタビューでは生い立ちから思想信条、安倍首相との関係まで聞いたが、そこで見えてきたのは、意外なほど邪気がない人間性だった。彼は自分の気持ちに正直であり、それを隠そうとしない。 百田も玉川も「正直に語る姿」に共感を覚える人が多いのだ。 ◆「瞬間」を生きる2人 確かに、表面的な主張だけを並べると2人は相容れない。リベラル派が嫌悪する百田と、拍手を送る玉川。右派が讃辞を贈る百田と、非難する玉川。一見すると水と油のような2人をつなぐのが、時代を席巻するポピュリズムだ。ポピュリズムという言葉はよく「大衆迎合」と訳され、日本ではネガティブな記号となっているが、最近の政治学では捉え方が異なる。 オランダの政治学者、カス・ミュデらの定義が非常に端的に特徴を指し示している。〈社会が究極的に「汚れなき人民」対「腐敗したエリート」という敵対する二つの同質的な陣営に分かれると考え、政治とは人民の一般意志の表現であるべきだと論じる、中心の薄弱なイデオロギー〉(カス・ミュデ他『ポピュリズム デモクラシーの友と敵』白水社) 腐敗したエリートに対峙すること、中心の薄弱さ──。そして、大衆を第一に考えることにポピュリズムの本質がある。彼らの主張は、右派であれ、リベラル派であれ、確固たる信念に基づく体系的な思考はなくていい。大事なのは「何かに対峙すること」そのものだ。 玉川にとっての対峙すべき対象は「官僚」や「時の政権」であり、彼らを批判するための材料さえあれば、すぐさま使って「国民の味方」になる。百田が対峙しているのは朝日新聞を中心とするリベラルメディアやリベラル派文化人という「権威」だ。朝日新聞に立ち向かう自身を評して「反権威主義」と言う。 彼らに対し、論理的な一貫性がないという批判はまったく意味がない。最初から、そんなものを目指していないからだ。百田も玉川も、大衆に迎合していない。「その時々の自分の気持ち、考え」を正直に発することで大きな権威と対峙する姿、空気を読まずにどんな相手にも物怖じしない「自分」を見せている。この対峙こそが、人々の心を捉えるのだ。私には、彼らが発する一つ一つの言葉に賞賛と批判が集まり社会現象となっていく社会は、人々がポピュリストに魅了されている社会に見える。  百田もまた間違いを潔く認める。シリーズ累計100万部超の『日本国紀』(幻冬舎)で、ファクトのミスや似たような表現の記述が相次いで見つかり、重版の度に表現、表記が訂正されたことは記憶に新しい。それを彼にぶつけると「間違いはいくつかありました。恥ずかしいミスもありました。僕の不徳の致すところです。そこは申し訳ないです」と率直に認め、謝るのだ。そして、『日本国紀』は売れ続けていく。 過去は、過去であり変えられないのだから、仕方ない──。ポピュリストは瞬間を生きている。時代の風は、視聴率や部数に変換され、彼らにとって追い風として吹く。この事実とどう向き合うか。本当の課題はここにある。【プロフィール】いしど・さとる/1984年東京都生まれ。立命館大学法学部卒業。毎日新聞社、BuzzFeed Japanを経て2018年に独立。2019年、「ニューズウィーク日本版」の特集「百田尚樹現象」にて第26回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞を受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』※週刊ポスト2020年6月12・19日号
2020.06.02 07:00
週刊ポスト
週刊ポスト 2020年6月12・19日号目次
週刊ポスト 2020年6月12・19日号目次
週刊ポスト 2020年6月12・19日号目次「さよなら安倍総理」◆霞が関のクーデター全内幕・安倍官邸「反政府ニュース監視」922枚機密文書を全公開する特集◆MEGA地震予測 警報続発の2020夏 最新警戒MAP◆モーニングショー・玉川徹と作家・百田尚樹から漂う“同じ匂い”石戸諭(ノンフィクションライター)◆[緊急寄稿]ネットのバカは止められない人気女子プロレスラーの急死は他人事ではない 中川淳一郎(ネットニュース編集者)◆6人の元スター球児が語る「甲子園がなかったら、今ごろ、俺は…」◆「エアコンでコロナ感染」“風上でも危ない”衝撃論文◆今年ならでは! 夏休み旅行 超穴場ガイド◆入院にかかるお金は「10万円」も減らせます◆本木克英×土橋章宏「エンタメは不急だが決して不要ではない」◆“美女医四天王”が提案する「新しい性生活様式」◆「勝ち組老後」と「負け組老後」の大逆転・働き方・年金・相続・住まい・資産形成・趣味・地価◆ニッポン社会にも大逆転が・航空・就活・受験・外食ワイド◆広島カープ “独走”のファンサービス◆二階堂ふみ 早稲田応援に慶大生が憤慨◆わんこそば◆京アニ放火◆飛田新地◆武漢ウイルス研究所の女所長「謎すぎる素性」グラビア◆人生を変えた昭和平成の名曲◆びちょ濡れの女たち◆8人のビキニ美女と楽しむ「南国旅行」動画◆天は美貌と美BODYの二物を与えた◆美女7人リモート撮影会◆写真家・竹中直人が撮った名女優たち◆二度と撮れない世界の絶景◆なをん。未來さん 昨日、あの小説を読みました。◆白波瀬海来 ビキニで波乗りYEAH!連載・コラム◆呉智英「ネットのバカ 現実のバカ」【小説】◆平岡陽明「道をたずねる」【コラム】◆須藤靖貴「万事塞翁が競馬」 ◆広瀬和生「落語の目利き」◆堀井六郎「昭和歌謡といつまでも」◆秋本鉄次「パツキン命」◆戌井昭人「なにか落ちてる」◆春日太一「役者は言葉でできている」◆大竹聡「酒でも呑むか」◆綾小路きみまろ「夫婦のゲキジョー」◆大前研一「『ビジネス新大陸』の歩き方」◆高田文夫「笑刊ポスト」【ノンフィクション】◆井沢元彦「逆説の日本史」◆河崎秋子「羊飼い終了記念日」【コミック】◆やく・みつる「マナ板紳士録」◆とみさわ千夏「ラッキーな瞬間」【情報・娯楽】◆ポスト・ブック・レビュー◆医心伝身◆ポストパズル◆プレゼント◆法律相談◆ビートたけし「21世紀毒談」◆連載「二度と撮れないニッポンの絶景」
2020.06.01 07:00
週刊ポスト
関西の伝説的番組に携わってきた百田氏が考えることとは
百田尚樹氏を取材して驚かされた“感覚の普通さ”
 これまで安倍晋三首相の“応援団”と見なされてきた作家・百田尚樹氏が、新型コロナウイルス問題をめぐり、ツイッター上で安倍政権を「批判」したことが世間を驚かせた。それを受けて週刊ポスト2020年4月3日号では、百田氏へのインタビューを掲載。聞き手は、雑誌・ニューズウィーク日本版(2019年6月4日号)で特集「百田尚樹現象」の謎に迫ったノンフィクションライターの石戸諭氏だ。百田氏の言葉になぜ多くの人が反応するのか──インタビューを通して見えた百田氏の「特異性」について、石戸氏がレポートする(文中敬称略)。 * * * 百田尚樹現象は分断の時代の象徴だ。なぜ彼の言葉は多くの人の注目を集め、なぜ彼の本はベストセラーになるのか。反対側の人々──それはリベラル派と言い換えてもいいが……──は多くを誤解している。 このインタビューは本来、5月に刊行を予定している書籍『ルポ 百田尚樹現象』の締めくくりの取材として、予定していた。そこに新型コロナウイルス問題が重なり、なぜ百田尚樹が安倍政権を批判したのかを掘り下げて聞くことにもなった。 そこであらためて感じたのが、百田の言葉にあるあまりの「普通」さだ。彼はベストセラー作家であり、右派論壇のキーパーソンでもあり、関西では名高いテレビの構成作家だ。本人が特異な才能の持ち主なのは、周辺取材でも誰もが認めた。だが、私がもっとも特異だと思ったのは、感覚の「普通」さなのだ。 長年、テレビで高視聴率番組に携わっているうちに身についたものでもあるのだろう。彼は街場の感覚を失わないまま、言葉を発している。例えば、彼はインタビューで「入国制限しなかった1月と2月はまったく評価できない」と批判したが、今は「ベストを尽くしている」と話した。なぜそう言えるのか。 印象的な部分を抜き出しておこう。《──休校要請については、エビデンスに欠けている政策だと批判も強いですし、私も経済への悪影響が出ることも含めて、やる必要はなかったという立場です。百田さんはどこを評価しているのでしょうか。百田:学校の休校要請っていうのは、やっぱり、相当なもんやと思っています。ほかの政治家ではビビッてできないんじゃないでしょうか。エビデンスがあるかという批判ですが、そもそも未知の感染症に対してエビデンスなんかないですよ。総理がリーダーシップをとって、果敢に休校をとりあえずやってみて、感染を防ぐという成果が出たらいいじゃないですか。──評価はリーダーシップにあるということですか?百田:そうです。こういうことに関してはやっぱり、果敢にやらないといけないでしょう。官僚っていうのは自分から決めませんからね、絶対に。》(週刊ポスト2020年4月3日号) 大手メディアの世論調査を見てみよう。例えば朝日新聞の世論調査で2月は停滞していた安倍政権の支持率は3月に入り上昇に転じた。支持率は39%から41%になり、不支持は40%から38%に減った。一社だけなら誤差の範囲だが、各社の傾向は概ね一致している。数字が示唆しているのは、安倍政権はまた危機を脱しつつあるという事実だ。 それがなぜ起きるのか。私も含めて安倍政権に批判的なスタンスを取る人々は、3月はもっと支持率が下がると思っていたはずだ。その予兆はいくつもあった。桜を見る会、新型コロナウイルスの対応で後手後手に回り、ついに全国一斉休校の要請に踏み切った。 なぜ子供を対象にするのか? 小児の発症、重症化という事例が少ないことはわかっていた。なぜ全国一斉なのか。特段の根拠はなく、〈「科学よりも政治」という、またしても悪い前例となってしまいました〉(神戸大学・岩田健太郎教授 2020年2月29日毎日新聞ウェブ版インタビューより)などと専門家から批判の声があがった。 安倍首相の会見でもエビデンスは示されず、社会活動へのダメージが大きいと批判の声が強まったように見えた。中国と韓国の入国制限にも踏み切ったが、右派の歓喜はともかくとして、遅きに失したという声が多数であるかのように見えた。 これだけ重なれば、当然、3月の支持率は下がると思っていた人が、不支持派の中では多数だっただろう。だが、現実はこれだ。「分断」の向こう側からは見えない、支持の背景があったのだ。 私には支持の背景が見えていなかったが、百田の言葉を聞く中で理解できたことがある。問題はファクトやエビデンスではないのだ。積み上がったエビデンスに基づいてのみ判断すれば、安倍政権の対応を批判した専門家、メディアに分があるのは間違いないだろう。◆分断されているからこそ相手側からは見えてこないものがある では、なぜ根拠が見えにくい「決断」が影響力を持つのか。近年の科学研究を踏まえれば、「正しい事実」を突きつければ人は考えを変えるというのは幻想でしかないことがはっきりと示されている。 イギリスの神経科学者、ターリ・シャーロットは『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』(白揚社、2019年)で、アメリカ大統領選の討論で交わされた印象的なシーンを記述している。トランプと、彼の対抗馬で小児神経外科医のベン・カーソンの討論だ。 トランプは子供のワクチン接種と自閉症に関連があるという、有名な疑似科学を自説して展開した。それに対して、カーソンはいくつもの研究論文があり、トランプが主張しているような事実はないと反論した。 そこでトランプは再反論する。「実例ならたくさんありますよ。私どもの従業員の話ですが、つい先日二歳の子が、二歳半の可愛らしい子供が、ワクチンを受けに行った一週間後に高熱を出しました。その後ひどく悪い病気になり、今では自閉症です」 シャーロットはここで困惑する自分に気がつく。心理学者であり、二児の母親でもある彼女は、自ら論文をあたり、ワクチン接種と自閉症の間になんら関連がないことを知っている。トランプの偏見と直感だらけの発言であるにも関わらず、不安を掻き立てられてしまったという。 その要因は、カーソンは「知性」にのみ訴えたが、トランプはそれ以外のすべてに訴えかけていたことにある。あらゆるファクトが示すのは、トランプが間違っているという事実だ。しかし、現実にはトランプの訴えのほうが人々の心に突き刺さる。 エビデンスよりも、刺激的な言葉と「果敢な行動」が人々の感情を突き動かすことがある。分断されているからこそ、相手側からは見えていないものがある。 ニューズウィーク日本版「百田尚樹現象」を昨年の5月に発表して以降、リベラル派からは直接、間接的に「絶対に買わない」「百田なんか無視すればいい」「取り上げた時点で百田を持ち上げているのと同じだ」「なぜもっと批判しないのか」という声が大量に届いた。 私からすれば、すべて間違っている。百田尚樹現象と名付けたように、彼の著作や言葉には一定の支持者がおり、それは社会現象と呼べるものになっている。表層的な批判は同じ考え同士で溜飲を下げるのにはいいが、理解には役に立たない。それだけでは分断は深まるだけだ。 彼の一言は少なくない影響を及ぼす。だからこそ、そこにどのような意味があるのかを直接の取材をもって分析すること。ある人々には見えていないものを言語化し、可視化することが求められているのではないだろうか。
2020.03.29 16:00
NEWSポストセブン
百田尚樹氏、「後出しジャンケン」で政府批判する人たちに苦言
百田尚樹氏、「後出しジャンケン」で政府批判する人たちに苦言
 新型コロナウイルス問題をめぐり、これまで安倍晋三首相の“応援団”の代表格と見なされてきた保守派論客が「政権批判」に回ったことが世間を驚かせた。作家・百田尚樹氏は2月21日、ツイッターでこう呟いた。〈安倍総理はこれまでいいこともたくさんやってきた。/しかし、新型肺炎の対応で、それらの功績はすべて吹き飛んだ〉 なぜ百田氏は、厳しい批判を繰り広げたのか。雑誌『ニューズウィーク日本版』で特集「百田尚樹現象」(2019年6月4日号)を執筆したノンフィクションライターの石戸諭氏が、その真意を質した。──今回の感染拡大については、リベラル派からも「安倍政権の人災」という声が上がりました。百田:そういうアホとは一緒にされたくないですね。野党の連中の目的は政府批判だけ。国のことなんか考えていない。その証拠に1月の時点で、国会では「桜を見る会」ばかりを取り上げていました。立憲民主党の福山哲郎(幹事長)は春節前に観光客を止めたら観光業界が大ダメージを食らうと言っていたくらいです(*注)。【*注/1月26日のNHK番組で、「日本の観光産業に相当大きな打撃が出る」などと発言】 3月になって「政府の対応が遅い」と批判しても後出しジャンケンです。 要するに、メディアも国民も野党も政府も誰も危機感がなかった。最初から大騒ぎしていた私に対して、ツイッター上では「素人が黙れ」「危機を煽るな」っていうような雰囲気やったからね。それで今になって安倍政権批判をしても、筋が通っていないと思いますね。私がずっと言っているのは、未知の感染症は怖いということなんです。──しかし、「8割は軽症に留まる」というデータも報道されていますよ。百田:それは後でわかったことです。初期の段階ではリスクを大きく取るのは危機管理の常識だと思います。それに「8割軽症ならたいしたことないな」と思う人もおれば、「えっ2割が重症になるの? それは怖いやん」と思う人もいますよね。高齢者はリスクが高いと言われれば、高齢者も家族も怖いでしょう。 専門家と称する人は言うことがバラバラでした。中には、時期によって真逆のことを言う人もいました。これのどこが専門家かと。 あと経済が、経済がって、経済と命のどっちをとるんやと言う人もいました。中国人観光客を止めたら、それで旅館がつぶれたり、観光業界が打撃を受けるかもしれない。それで死ぬ人もいる。それでもいいのか、と。 ちょっと待ってくれと言いたい。たしかに観光客を止めることによって多少の経済的なダメージを食らいます。しかし、それをしないことによって、より大きな経済的ダメージを食らう可能性がある。そうすると、より多くの命も経済も駄目になる可能性があるというのが私の考えです。◆五輪中止の危機感はあるか──五輪についてはどうでしょうか。中止すべきだと考えていますか。百田:いや、それは経済的なダメージがでかすぎます。本当に不況で自殺者が出る事態になるでしょう。それに国民の失望も大きい。私が中止について2月20日にツイッターで〈もう東京オリンピックはないね〉と書いたのは、安倍政権に対する叱咤激励です。最終的にはIOCが決めることやけど、政府はそれくらいの危機感を持つべきだ、という。──現時点でも景気への影響は深刻です。消費税の減税を求める声が一部野党だけでなく自民党内からも上がっています。百田:野党と一緒にされるのは嫌ですが、私は消費税については昔から大反対です。なくすならなくした方がいい。去年、総理と会食した時も増税すべきではないと伝えています。──百田さんの目から見て、今の安倍政権は危ないと思いますか。東京五輪が中止になれば安倍政権は吹っ飛ぶという声が上がっています。百田:危ないとは思いますよ。まだどうなるかわかりませんが、政治は結果ですから。このまま新型コロナの感染が収息すればええけど、感染が拡大して、結果的に経済活動に大きな支障が出たとしたら、政権としては大失敗でしょうね。※週刊ポスト2020年4月3日号
2020.03.27 16:00
週刊ポスト
百田尚樹氏 中国人受け入れ拒否発言に安倍支持者が強烈批判
百田尚樹氏 中国人受け入れ拒否発言に安倍支持者が強烈批判
〈安倍総理はこれまでいいこともたくさんやってきた。/しかし、新型肺炎の対応で、それらの功績はすべて吹き飛んだ〉 これは、これまで安倍晋三首相の“応援団”の代表格とみなされていた保守派論客・百田尚樹氏による2月21日のツイートだ。なぜ百田氏は、厳しい批判を繰り広げたのか。雑誌『ニューズウィーク日本版』で特集「百田尚樹現象」(2019年6月4日号)を執筆したノンフィクションライターの石戸諭氏が、聞いた。──率直なところを伺います。当初、安倍首相の方針に異を唱えましたが、では百田さんにとって安倍首相の他にこの人なら大丈夫だと思える政治家はいますか?百田:安倍さんは今のところ、私が見る限りベストに近い総理です。これ以上の政治家は今の日本では見あたらないでしょう。野党政治家なんて論外です。その安倍総理でもこのくらいの対応しかできないのか、という失望がありました。安倍さんにはきついことは言いたくないけど、でも、これはあかんやろと考えて、ネット番組でも批判しました。 感染が拡大する前は、日本中が「まぁこのくらいなら大丈夫だろう」という感覚だったでしょう。国全体が「大丈夫」だという認識のもと、情報を集めていた。正常性バイアス(自分に都合のいい情報を集め、それ以外の情報を過小評価すること)があったというのが私の見方です。1月の時点ではメディアも識者も大衆も楽観していました。もちろん政府もです。国民の見識以上の総理は現われませんから。 平時の政治家はだれでもできるっていうのは私の持論です。有事の対応にこそ、政治家の本当の器が出ると思っています。私がツイッターで中国人観光客を受け入れるなと言ったら、「サヨク」だけでなく、「安倍政権支持者」からも強烈な批判を受けました。政権の足を引っ張るな、というわけです。 でも私は自分が言いたいことを言っただけ。政権に影響を与えたいという気持ちはまったくないです。※週刊ポスト2020年4月3日号
2020.03.26 16:00
週刊ポスト
【動画】百田尚樹氏インタビュー 「安倍首相との会食」に答えた
【動画】百田尚樹氏インタビュー 「安倍首相との会食」に答えた
 作家の百田尚樹さんが週刊ポストのインタビューに応じ安倍首相との会食について語りました。会食の際になにを伝えたかについては「中国・韓国からの観光客の入国を制限し習近平の国賓級来日をやめるべきだとは伝えました」とのこと。安部首相が会食をセッティングした理由は「今まで安倍政権を支えていた保守層からも対応がおかしいやないかという批判が出て安倍さんにとってはこたえた部分があったかもしれない。官僚や専門家だけではなく私たちからも意見を聞きたかったのかもしれない」と語っています。
2020.03.26 16:00
NEWSポストセブン
百田尚樹氏、中韓批判姿勢が「ヘイトスピーチでは」に答えた
百田尚樹氏、中韓批判姿勢が「ヘイトスピーチでは」に答えた
 新型コロナウイルス問題をめぐり、これまで安倍晋三首相の“応援団”の代表格と見なされてきた保守派論客が「政権批判」に回ったことが世間を驚かせた。作家・百田尚樹氏は2月21日、ツイッターでこう呟いた。〈安倍総理はこれまでいいこともたくさんやってきた。/しかし、新型肺炎の対応で、それらの功績はすべて吹き飛んだ〉 なぜ百田氏は、一転、厳しい批判を繰り広げたのか。雑誌『ニューズウィーク日本版』で特集「百田尚樹現象」(2019年6月4日号)を執筆したノンフィクションライターの石戸諭氏が、その真意を質した。──百田さんは中国や韓国に対して日常的に激しい言葉で批判している。嫌韓、嫌中色が強く、時に「ヘイトスピーチ」的だとまで言われています。この延長で入国制限せよと言っているのではないですか。百田:それはまったく違いますね。感染症対策はあくまで有事です。中国からの入国制限だって、世界中の国がやっています。私の主張はそれと変わりません。そもそも私はヘイトスピーチはしていません。「サヨク」の悪質なイメージ操作です。 私は単なる一市民として、自分の感じることはツイッターとか、いろんなところで、一切枷をはめずに言うていく。それだけの話です。──結果的に、日本政府は3月9日から中国・韓国からの入国制限を実施した。自分の言った通りになった、と思いますか。百田:私が言った通りになったからといって、それは自分の影響だなんて思いませんよ。前から総理が考えていたことでもあるでしょうし。 一つ言えるのは、総理と2月28日に会食した後、私と有本香さん(ジャーナリスト)は帰りのタクシーで「もしかしたら、習近平の来日はなくなるかもしれんなぁ」という会話はしました。そういうニュアンスを感じたということです。──会食後、安倍首相への批判のトーンは弱まっています。今でも批判したいと思いますか。百田:もっと早く中国人観光客の受け入れを制限すべきだったと思います。入国制限しなかった1月と2月はまったく評価できないですが、もう、過ぎたことを言っても仕方がない。現時点の最善策を取ることが大切です。 全国一斉休校の要請にしても遅きに失したとはいえ、韓国と中国への渡航制限も、習近平の国賓待遇の来日見送りも評価しています。今はベストを尽くしてると思います。──休校要請については、エビデンスに欠けている政策だと批判も強いですし、私も経済への悪影響が出ることも含めて、やる必要はなかったという立場です。百田さんはどこを評価しているのでしょうか。百田:学校の休校要請っていうのは、やっぱり、相当なもんやと思っています。ほかの政治家ではビビッてできなかったんじゃないでしょうか。エビデンスに欠けるという批判ですが、そもそも未知の感染症に対してエビデンスなんかないですよ。総理がリーダーシップをとって、果敢に休校をとりあえずやってみて、感染を防ぐという成果が出たらいいじゃないですか。──評価はリーダーシップにあるということですか?百田:そうです。こういうことに関してはやっぱり、果敢にやらないといけないでしょう。官僚っていうのは自分から決めませんからね、絶対に。※週刊ポスト2020年4月3日号
2020.03.24 16:00
週刊ポスト
百田尚樹氏 安倍首相に苦言の真意と会食で直接伝えたこと
百田尚樹氏 安倍首相に苦言の真意と会食で直接伝えたこと
 新型コロナウイルス問題をめぐり、これまで安倍晋三首相の“応援団”の代表格と見なされてきた保守派論客が「政権批判」に回ったことが世間を驚かせた。作家・百田尚樹氏は2月21日、ツイッターでこう呟いた。〈安倍総理はこれまでいいこともたくさんやってきた。/しかし、新型肺炎の対応で、それらの功績はすべて吹き飛んだ〉 なぜ百田氏は、これまでの“称揚”から一転、厳しい批判を繰り広げたのか──雑誌「ニューズウィーク日本版」で特集「百田尚樹現象」(2019年6月4日号)を執筆したノンフィクションライターの石戸諭氏が、その真意を質した。◆総理から電話があった──ツイッターで安倍首相に批判的な投稿を始めたのはなぜですか。百田:隣国で未知のウイルスが現われ、大量の感染者が出て、一千万都市が封鎖されている。そんな前代未聞のことが起こったにもかかわらず、入国制限の措置も取らない政府を批判するのは当然です。──しかしその後の2月28日には、安倍首相と百田さん、ジャーナリストで『日本国紀』の編集者を務めた有本香さんと3人で会食した。どういう経緯で実現したのでしょうか。百田:記憶を辿って話しますが、その前の週に安倍さんから携帯に電話がかかってきました。特に用事はなかったようで、私から「日本が一大事ですが頑張ってください」と雑談して、最後に総理から「では今度食事でも」という話になりました。 私は社交辞令だと思っていました。その後、有本香さんと電話で「総理から電話があった」と話したら、有本さんから「用件は何やったん?」と聞かれた。特に用件はなかったと言うと、有本さんは「用件がないのに電話するのはおかしい」という。「そういえば、今度食事でも、という話をしていたなぁ」と言ったら、有本さんが総理にメールを送ったんです。そしたら急遽、「28日夜に食事を」ということになったのです。──その場で何を伝えましたか?百田:私から話せる範囲で言えば、中国・韓国からの観光客の入国を制限し、習近平(中国国家主席)の国賓級来日をやめるべきだとは伝えました。普段からツイッターなんかで言っていることと同じです。──安倍首相はどのような話をしたのでしょう?百田:総理からの会話の内容は話せません。プライベートなことですから。──会食に誘った理由について、安倍首相から何か説明がありましたか?百田:本人からは特に何もありませんでした。会食はだいたいこんな感じで急に決まります。変わった様子は特にないですね。いつもよりは少し疲れているなぁというくらいでした。肉体的にというよりも、ちょっと精神的にね。──百田さんが安倍政権批判に回ったことが嫌だったのではないでしょうか。対策も兼ねて、会食がセットされた可能性があると思います。百田:野党は何をやっても政権批判するんやけど、今まで安倍政権を支えていた保守層からも対応がおかしいやないかという批判が出て、それが安倍さんにとってはちょっとこたえた部分があったかもしれない。私と有本さんに対して、何らかの弁明をしたかったのかもしれない。官僚や専門家だけではなく、私たちからも意見を聞きたかったのかもしれない。そればっかりはわかりません。◆会食費用が総理持ちなのはおかしいことか──会食の報道を受け、「安倍首相はこんな時期に専門家でない人と会食すべきでない」との批判もありました。それについてどう考えますか?百田:私は誰と飯食ってもええやんかと思っています。専門家とも会ってるやろうし、じゃあ専門家以外とは会ったらあかんの? と思いますね。たった1時間ですよ。──安倍首相が払ったという会食費用も、突き詰めれば税金から支払われていることになる、と批判が上がりました。百田:費用は総理に持っていただきました。批判については「ワシがどんだけ税金払ってると思てるんや」で終わりです。「ほな、お会計どうしましょう? 食べた分だけ払いましょうか」なんてやりとり、必要ですか? そんなことを言っても、呼んだ方が払うでしょう。 私は(自宅のある)大阪からの新幹線代、ホテル代をすべて自分で払っています。社会常識的に誘った側に食事費用を持ってもらうのはおかしいでしょうか。※週刊ポスト2020年4月3日号
2020.03.23 07:00
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週刊ポスト 2020年4月3日号目次
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週刊ポスト 2020年4月3日号目次百田尚樹「安倍さんには失望した」 特集◆宗教VS新型コロナ創価学会と幸福の科学 2大新宗教の対照的すぎる感染対策現場◆1年でも2年でも 東京五輪「延期」ならこんなに良いことずくめ!◆俺の「センバツ球児救済私案」太田幸司、江本孟紀ほか ◆普段は滅多に見られない姿にネット騒然人気女子アナ「マスク映え」コンテスト◆アクティブシニアたちの反論「そんなに俺らが悪いのか」◆感染後の聞き取り調査 あなたはどこまで「正直に」話せるか ◆“会合NG”でサラリーマンたちはどこで飲み会をしているのか?◆田嶋幸三サッカー協会会長“陽性”発覚で「妻ルート」が心配される理由◆「がら空き」なのに隣に来る人、一体なんなの?◆現役医師20人が答えた「これが要らない検査」◆「在宅介護」で疲れ果てて…どこで何を間違えたのだろう?◆体外受精の“無断出産”で認められた「男の産まない権利」って何だ?◆「通院」それは死のリスク◆「自宅待機」で重病になりやすい人◆「消費税0%」が日本を救う!◆大坪審議官「小顔エステ」の休日◆三島由紀夫vs東大全共闘「1969年の熱量」を覚えているか?ワイド◆上皇・上皇后 高輪皇族邸お引っ越し◆高輪ゲートウェイ開業◆巨人 原監督「DH制」◆野村萬斎の娘「TBSアナ」に ◆武蔵小杉 住みたい街ランキンググラビア◆強すぎて嫌われた強者たち◆映画女優が気迫で演じた あの絶頂濡れ場を語ろう◆「前貼り」の裏側◆男の宅飲み おつまみレシピ◆華村あすか 眩しすぎるひと◆なをん。大島さんは自由律。◆新連載 二度と撮れないニッポンの絶景◆1964東京五輪 1億人の記憶大観衆の聖火リレー 感動の列島縦断◆56年前のあの日、俺たちも走った連載・コラム◆呉智英「ネットのバカ 現実のバカ」【小説】◆平岡陽明「道をたずねる」【コラム】◆二題噺リレーエッセイ 作家たちのAtoZ◆須藤靖貴「万事塞翁が競馬」 ◆広瀬和生「落語の目利き」◆堀井六郎「昭和歌謡といつまでも」◆秋本鉄次「パツキン命」◆戌井昭人「なにか落ちてる」◆春日太一「役者は言葉でできている」◆大竹聡「酒でも呑むか」◆綾小路きみまろ「夫婦のゲキジョー」◆大前研一「『ビジネス新大陸』の歩き方」◆高田文夫「笑刊ポスト」【ノンフィクション】◆井沢元彦「逆説の日本史」◆河崎秋子「羊飼い終了記念日」【コミック】◆やく・みつる「マナ板紳士録」◆とみさわ千夏「ラッキーな瞬間」【情報・娯楽】◆のむみち「週刊名画座かんぺ」◆恋愛カウンセラー・マキの貞操ファイル◆ポスト・ブック・レビュー◆医心伝身◆ポストパズル◆プレゼント◆法律相談◆椎名誠とわしらは怪しい雑魚釣り隊◆ビートたけし「21世紀毒談」
2020.03.23 07:00
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