スポーツ

開星元監督「21世紀枠に負けたのは末代までの恥」発言の背景

 2010年、春の選抜高校野球大会。21世紀枠で出場した和歌山・向陽が強豪を撃破した快挙は、敗れた島根・開星の野々村直通監督のコメントで吹き飛んだ。

「21世紀枠に負けたのは末代までの恥」「腹を切りたい」──。

 21世紀枠は、地方大会の成績に加え、文武両道やマナーなどの要素を考慮して選ばれるセンバツならではの出場枠。そのチームが前年の中国大会の覇者を破ったのである。外野から見れば痛快だが、当事者はたまらない。悔しさを必死で堪えていたという野々村氏が振り返る。

「一言もしゃべるまいと思っていたのに、囲み取材で面識のない若い記者が『どうしてしゃべらないのか』と詰め寄ってきた。お前に何がわかるのかとカチンときてしまい、あの発言になってしまいました」

 翌日、謝罪会見。学校には抗議の電話が鳴り止まず、2日後には監督を辞した。しかし野々村氏を慕う教え子や保護者も多く、監督復帰を願う約8000人の署名が集まった。翌年、監督に復帰すると、夏の大会でその年の優勝校、日大三(東京)を相手に激闘を演じ、今度は温かい拍手喝采を浴びた。この大会で定年退職、監督を勇退。

「最後の夏、選手たちは『男の花道』と書いた、お揃いのTシャツを作ってきた。私を甲子園に連れて行くという、熱い気持ちに感動させられました」

「末代までの恥」も「腹を切りたい」も、日ごろから命がけでプレーする精神論として叩き込んできた、武士道の影響から出たもの。

 いかつい角刈りにサングラス、ド派手なスーツという出立ちもあって、最近ではテレビにも出演し、教育評論家として熱弁を振るうようになった。昨年末までスポーツ紙で連載したコラムのタイトルはずばり『末代までの教育論』だ。

「高校野球の監督としては、苦い過去ですが、野々村個人としては勉強になったし、顔を知ってもらえたから、あれでよかったのかもしれません」

※週刊ポスト2014年1月17日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

麻薬取締法違反容疑で家宅捜査を受けた米倉涼子
「8月が終わる…」米倉涼子が家宅捜索後に公式SNSで限定公開していたファンへの“ラストメッセージ”《FC会員が証言》
NEWSポストセブン
巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
人気格闘技イベント「Breaking Down」に出場した格闘家のキム・ジェフン容疑者(35)が関税法違反などの疑いで逮捕、送検されていた(本人SNSより)
《3.5キロの“金メダル”密輸》全身タトゥーの巨漢…“元ヤクザ格闘家”キムジェフン容疑者の意外な素顔、犯行2か月前には〈娘のために一生懸命生きないと〉投稿も
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
ハワイ島の高級住宅開発を巡る訴訟で提訴された大谷翔平(時事通信フォト)
《テレビをつけたら大谷翔平》年間150億円…高騰し続ける大谷のCMスポンサー料、国内外で狙われる「真美子さんCM出演」の現実度
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン