国内

いわき市で原発避難民に「カネもらってるんだから早く帰れ」

 原発事故の避難者2万人以上を受け入れている福島県いわき市では、避難者と市民との間で様々な軋轢が聞こえてくるようになった。被災者が東電からの賠償金でパチンコ店や歓楽街に出入りすることなどに眉をひそめる住民の声などがあがる一方、避難者の車が傷つけられたりする事件も起きている。この状況について避難民の人々はどのような思いでいるのか、フォトジャーナリスト・いたがき秋良氏がレポートする。

 * * *
 いわき市の中心部から南東に5kmほどに位置する高久地区の仮設住宅群。仮設住宅の自治会長・茂木茂男さんに話を聞いた。

「車に傷をつけられるなどの嫌がらせも確かにありましたが、去年、花火を撃ち込まれたのを最後に警察を呼ぶようなトラブルは起きていません」

 茂木さんは、避難者が嫌がらせを受けた経緯を自らを戒めるように振り返る。

「いわきの知人からも、私たち双葉郡の人間の悪い噂を聞きました。『市内のパチンコ屋や飲み屋が仮設の人で一杯だぞ』とかね。確かに、避難者はパチンコ屋の上得意になっていて、仮設住宅の郵便受けに毎朝チラシが7~8枚も入っているんですよ。飲み屋で『俺たちは避難者だから安くしろ』と言う人間もいるようです。

 そりゃあ、いわきの人に嫌われますよね。ただでさえ賠償金のことでいろいろ言われているんだから、事件が起きたのはその結果だったと思います」

 こう聞くと、いわき市民との軋轢の原因は避難者側にあるように思えるが、彼らにももちろん言い分はある。仮設住宅の除雪をしていた50代男性に市民との軋轢を聞くと吐き捨てるようにこう言った。

「『広野町は避難解除されたのに、何で帰らないんだ』って学校で苛められる子供もいるんだ。親が子供に吹き込んでんだろうな。妬みもあっぺよ。賠償金のことで」

 実は、2012年3月31日をもって避難指定解除された広野町住民への慰謝料支給は一昨年8月で打ち切られているが、それを知らない市民も多い。前出・茂木さんが語る。
 
「ほとんどの人はちゃんと仕事に就いているんですけどね。今の広野町には病院やスーパーもないし、帰りたくても帰れない人が多いんです。だから、いわきの人に嫌なことを言われたら『すみません、お世話になっています。もう少しここに居させてください』と言ってすぐその場から離れるように言っているんです」

 被災者支援団体「みんぷく」代表の赤池孝行さんは言う。

「ベンチに座っていたお年寄りが『相当カネをもらってるんだから早く帰れ』といった暴言を浴びせられることもありました。最近は軋轢も解消しつつあると感じていますが、問題もある。避難者が自分の出身地を隠そうとすることです。避難者と知られると何を言われるか分からない。そんな気持ちがあるのでしょう」

※SAPIO2014年4月号

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
東条英機・陸軍大将(時事通信フォト)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最低の軍人」ランキング ワースト1位はインパール作戦を強行した牟田口廉也・陸軍中将 東条英機・陸軍大将が2位に
週刊ポスト
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
《ジャンボ尾崎さん死去》伝説の“習志野ホワイトハウス豪邸”にランボルギーニ、名刀18振り、“ゴルフ界のスター”が貫いた規格外の美学
NEWSポストセブン
西東京の「親子4人死亡事件」に新展開が──(時事通信フォト)
《西東京市・親子4人心中》「奥さんは茶髪っぽい方で、美人なお母さん」「12月から配達が止まっていた」母親名義マンションのクローゼットから別の遺体……ナゾ深まる“だんらん家族”を襲った悲劇
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト