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乳癌発見からの治療法選択・気持ちの変化・生還までの体験記

 女性特有のがん発症が低年齢化、増加している。とくに子宮頸がんは20~30代に急増しており、乳がんに次いで発症率第2位となっている。また、更年期にさしかかり、がんを発症しやすい体の変容期を迎えながら、婦人科検診受診率がもっとも低いのが40~50代女性だ。

 3年前に乳がんが見つかり、手術を行い現在も3か月に1回の診察と半年に1回のエコー検査を行いホルモン治療薬「ノルバテックス」を現在も服用中のヨガインストラクターのヤマダリエさん(50才)。ヤマダさんががん発見からその後の治療について体験を語る。

 * * *
 47才のある日、着替えようとして、ちょうど左胸の乳頭が当たるブラジャーの部分に、血が混ざった1~2cm円の粘液状のものがこびりついているのを見つけました。

 実はこの数年前、偶然触れた左の乳房の下の部分にある、軟骨みたいな硬さでわりと大きめのしこりがあることに気づいてはいました。ただ、私は体力に自信があったし、それまで病気らしい病気もしたことがなかったので、婦人科検診を受けたこともなかったんですね。まさか、乳がんだとは夢にも思わなかったんです。あとでこれが原発*1だったことがわかったんですが、もしもその時すぐに手術していれば、乳房の温存も可能だったかもしれません。

 5月下旬に受診したんですが、乳頭をギューっと絞ると血の混じった粘液が出たので、乳がんだと覚悟していました。マンモグラフィー(乳房レントゲン検査)後、エコー・乳頭分泌物検査、針生検(病理組織検査)を1日で行いました。結果は『非浸潤がん』*2。0期にも満たない段階で、“切って終わり”と診断されました。広範囲に細かい石灰化が見られ、乳房全摘出は免れないけど、全摘出すれば乳房同時再建*3もできると診断されたんです。

 手術前の1か月は検査の連続。そんななか、PET検査*3でリンパ節にがんが転移しているのが見つかったんです。

 ショックでした。リンパ節に転移しているということは、全身に回っている可能性もあります。そのため、乳房の同時再建は断念。さらに、針生検*4した3か所がたまたま浸潤していなかっただけで、実際は『浸潤がん』*2、段階は「2b」。針生検の予見とはかなり違っていることもわかったんです。

 もちろん、かなり動揺しましたけれど、それはがんに対する恐怖というよりも、ヨガの仕事が長期間できなくなることへの落胆が大きかったですね。それから、おっぱいを失った喪失感。当初は同時再建の予定でしたから、左胸のない自分の姿は想像すらしていなかったんです。

 手術後、リンパ節2/23個に転移が見つかり、主治医からはホルモン療法と化学療法(抗がん剤投与)の選択肢が提示されました。本来なら全身転移の可能性もあるので、化学療法が妥当、ただ、そうなると1年ほどヨガは無理だと。迷わず、ホルモン療法を選択しました。   ホルモン治療は手術後1か月経って開始しました。子宮体がんのリスクが高くなるホルモン薬なので、年1回の子宮がん検診は欠かしません。2年目にマンモグラフィーで、右の乳房に小さなしこりが見つかりましたが、大きくなるリスクは少なく、現在経過観察中です。

 ただつらいのは、エストロゲン(女性ホルモン)を抑えて閉経状態にする治療なので、いきなり更年期障害の症状に襲われたこと。真冬にサウナから上がった後のように突然大量の汗が出る。それでも、乳がん仲間に聞くと、日頃から運動しているせいか、そんなのまだマシらしいです。同じ薬を使っていても、ひどいうつ状態になる人もいるし、関節が痛くなるとか…。また、太りやすくなるので、脂肪を控えめにした食事や、筋肉をつける運動をと、病院からは指導されました。

*1:「原発」――がん発症の素。最初にできたがん。
*2:「浸潤がん」「非浸潤がん」――乳がんは「浸潤がん」「非浸潤がん」「バジェット病」の3つに大別される。「浸潤がん」は、がん細胞が乳管や小葉の膜を破り、周りの組織に広がった状態をいう。「非浸潤がん」は、膜内に留まっている状態。
*3:「PET検査」――PET(陽電子放射断層撮影)の意味。微量の放射線を含む薬を点滴し、一度の検査で全身をチェック。がん細胞の早期発見に役立つ検査のひとつ。
*4:「針生検」――太い針を刺して組織を採取し、診断の材料にする。

※女性セブン2014年5月8・15日号

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