芸能

子どもの頃から役者は嫌いだった杉良太郎が今でも続ける理由

 俳優・杉良太郎はテレビや映画だけでなく、商業演劇でも長く活躍してきたが、持病の椎間板ヘルニア悪化を理由に2005年7月の新歌舞伎座公演を最後に「座長」から引退した。歌手としてデビューしながら、役者として先に花開き活躍してきた杉が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる。

 * * *
 観客への全ての責任を背負って座を引っ張ってきた杉は、2005年に体力の限界を理由に座長公演からの勇退を宣言している。「生涯現役」と言われる役者の世界だけに、引き際を自ら定める生き方は際立った。

「お客さんに心配かけながら舞台に立ちたくないんです。『あの人、歩くのは大丈夫かな』とか、『セリフつかえて言えてない』とか『声が聞こえない』とか言われるようになったら、自ら引退すべきですよ。何せ、それは不良品なんですから。昔の名前だけでは限界があります。お客さんに心配かけているということを、自分で自覚しなきゃ。

 それに、今の若い役者と話していると外国人と話している時よりも、もっと分かってもらえない。まるで違う星の人と話してる気分になるから、もうやれないんですよ。

 岡田英次、青木義朗、内田良平、南原宏治、それに石井均さんにも長く出てもらいましたが、そうした仲間が、みんな死んじゃった。そうなると、もうできないですよ。今、この人たちが生きて、ここにいてくれたら、私もまだやる。役者は一人じゃできないんです。ですから、私は舞台から引くことができた。一つも寂しくないんです。

 元々は役者が好きでこの世界に入ったわけではない。むしろ子供の頃から役者は嫌いでした。『それじゃあ、なぜ今までやっているんだ』と言われますが、それは責任があるからです。一度引き受けたから、約束したから、全力投球でやってきました」

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか新刊『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)が発売中。

※週刊ポスト2014年5月9・16日号

関連キーワード

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト