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大学の学生募集広告 「抜群の就職率97%!」のカラクリとは

 電車の中などで見かける受験者を募る大学の広告。描かれたバラ色の学園生活に「そんなわけないだろ」と、つっこみを入れた経験もあるだろう。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が切り込む。

 * * *
 自分の専門からはやや外れるのですが、最近、大学の広告やパンフレットが気になっています。そう、大学が学生を募集するためのものです。ぶっちゃけ、胡散臭いやつも多くないですか? 電車などで見かける大学の広告を見て「この大学、こんなに名門なわけ、ないだろ」「こんなリア充学生いないだろ?」「こんなに就職率いいわけないだろ」と思ったことはないでしょうか?

 いや、私の専門とする新卒採用の世界でも胡散臭い求人広告をよく見かけます。今はかなり弱小なのにも関わらず世界一を目指すなどと連呼する企業、リーディングカンパニーという言葉を何の根拠もなく使う企業、海外シェアはとても少ないのにやたらとグローバルという言葉を連呼する企業、「元リクルート」など社長の経歴をウリにする企業(逆に言うと、それくらいしか魅力がない企業)などです。「盛りまくり」なわけです。

 新卒の学生は社会のことをあまり知らないので騙しやすいですしね。もちろん、新卒の学生を口説く上では「世界一を目指す」などビジョンで口説くことも大事なのですけどね。ブランディングでもありますし。

 ただ、いかにも営利団体である企業の採用広告なら、こういうギラギラした感じで騙してでも採用してやろうという気持ちは分からなくはないのですが、仮にも教育機関である大学が胡散臭い広告に走るのは、いかがなものかと思いませんか。

 私が胡散臭いなと感じポイントは、まず就職率ですね。「抜群の就職率97%!」などと出ているじゃないですか。これ、大学教職員、人事担当者の方はご存知かと思うのですが、卒業時の就職決定者を、就職希望者で割ったものなのですね。つまり、就職を諦めた人がどんどん抜けていくわけです。良くなって当たり前なんですよ。

 大学のパンフレットには主な就職先一覧が出ているのですが、これも数年分をまとめたものということが多いのですよね。もちろん、単年度だけで判断できないという理由もあるのですが、たまたまコネがあった人、運がよかった人などがいたらよく見えるという状態になっているのですね。

 もちろん、広告やパンフレットに載せる学生や、OB・OG、教職員は見栄えが良い人だらけです。実際は、EXILE風のヤンキーっぽい学生がいっぱいいる大学でも、広告・パンフレットに出るのはいかにも好青年、清純な少女という感じの人だらけです。

 気づけば、お伽話のような、絵本のような、あり得ない世界が描かれたものが出来上がってしまうのですね。

 もちろん、これには理由があります。まず、言うまでもなく、大学の生き残り競争が始まっていることです。いまや日本には約780もの大学があります。私学は約4割が定員割れという時代です。学生の獲得競争は熾烈です。ただ、これは言うまでもない事情ですね。

 求人広告との決定的な違いがあります。それは、大学の広告、パンフレットは親、学生、そして進路指導の先生を納得させないといけないのですよね。もちろん、予算がある大学は媒体毎、対象毎にメッセージを変えたり、パンフレットも数種類つくったりするわけですが、予算がなければそうもいきません。結果として、総花的な、あり得ない世界が作られるわけですね。

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