国内

首相と米倉会長の冷戦続く経団連 異例人事の裏を識者が解説

 水面下で繰り広げられる官邸と財界の綱引き。ジャーナリスト・須田慎一郎氏が指摘する。

* * *
 財界総本山である経団連の次期会長には、榊原定征氏(東レ会長)が就任することが決定している。去る2月10日、この新体制下における副会長人事が発表された。

「この副会長人事が、財界はもちろんのこと、政界、特に官邸サイドに大きく波紋を投げかけることになったのです。それというのも大方の予想を裏切って中村芳夫副会長が退任することになってしまったからです」(現職の経団連副会長)

 そもそも中村氏は、経団連事務局出身で企業経営者ではない。かつて土光敏夫元会長の秘書を務めたことから、政界・官界に太いパイプを築き、以降一貫して経団連の政界・官界対策を担ってきた人物だ。「財界の政治部長」の異名を取る。

「はっきり言って、安倍首相と米倉会長との関係は最悪でした。安倍政権が支持する日銀の金融緩和を『無鉄砲だ』などと批判したことがあったからです。それでも官邸と経団連の関係が極めて良好だったのは、中村副会長がいたからこそです。具体的には、水面下で中村副会長と首相側近が緊密に連絡を取り合うことで関係強化を図っていました」(官邸中枢スタッフ)

 そのため榊原新会長、そして出身母体の東レも、中村副会長の留任を強く望んでいたのだという。そうした周囲の期待を裏切る形での退任劇となったのは一体なぜなのか。

 経団連の副会長人事は、現職会長の専管事項。つまり米倉会長がクビを縦に振らない限り、中村副会長の留任はかなわなかった。

「米倉会長が留任させなかったのは、確かに中村副会長のおかげで官邸と経団連の関係は良好なものとなったものの、安倍首相と米倉会長との関係は相も変わらず冷戦状態が続いているのが実情で、会見で米倉会長は人事について『経営者として優秀で実績を挙げてきた方々』と、まるで中村氏を不適格と断じるような発言をしたことからも、中村副会長の存在はうっとうしくて仕方がなかったのではないか」(前出の経団連副会長)

 結局、最後まで米倉会長は翻意せず、退任は確定してしまった。

 しかし、中村氏を評価してきた官邸サイドが動いた。

「官邸サイドからの強い働きかけを受けて、経団連は中村副会長を『参与』もしくは『顧問』で残す方針を固めています」(前出の経団連副会長)

※SAPIO2014年6月号

関連記事

トピックス

この日は友人とワインバルを訪れていた
《「日本人ファースト」への発言が物議》「私も覚悟持ってしゃべるわよ」TBS報道の顔・山本恵里伽アナ“インスタ大荒れ”“トシちゃん発言”でも揺るがない〈芯の強さ〉
NEWSポストセブン
亡くなった三浦春馬さんと「みたままつり」の提灯
《三浦春馬が今年も靖国に》『永遠の0』から続く縁…“春友”が灯す数多くの提灯と広がる思い「生きた証を風化させない」
NEWSポストセブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《産後とは思えない》真美子さん「背中がざっくり開いたドレスの着こなし」は努力の賜物…目撃されていた「白パーカー私服での外出姿」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこ(45)の自宅マンションで身元不明の遺体が見つかってから2週間が経とうとしている(Instagram/ブログより)
《遠野なぎこ宅で遺体発見》“特殊清掃のリアル”を専門家が明かす 自宅はエアコンがついておらず、昼間は40℃近くに…「熱中症で死亡した場合は大変です」
NEWSポストセブン
俳優やMCなど幅広い活躍をみせる松下奈緒
《相葉雅紀がトイレに入っていたら“ゴンゴンゴン”…》松下奈緒、共演者たちが明かした意外な素顔 MC、俳優として幅広い活躍ぶり、174cmの高身長も“強み”に
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン