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天安門事件の民主化指導者脱出させたのは香港マフィアのボス

 中国の民主化実現を叫ぶ学生らを戦車でひき殺すなどした1989年6月の天安門事件から25年が経つが、香港では事件当時、逃亡中の民主化運動指導者を海外に亡命させる秘密計画が立てられ、その実行役として、香港マフィアのボスが積極的に関わっていたことが分かった。英紙「サンデー・テレグラフ」が報じた。この作戦には香港の民主化団体や英仏の外交官も参画し、民主化指導者150人以上が救出されたという。計画の全容が分かったのは初めて。

 実行役の香港マフィアのボスは陳達鉦氏で、通称「六兄貴」と呼ばれていた。

 陳氏は当時、米国製の中古車を安値で買って、それを大陸に密輸していた。あるいは、密輸米国製の自動車を香港市内などで盗み出して、大陸に密輸することをしていたという。

 陳氏は日ごろ、政治には興味を示さないが、6月3日から4日にかけて、テレビで天安門事件の惨状を見て、学生らに同情し、義憤にかられて、「何とかしたい」と思ったという。

 このため、ツテを頼って、香港の民主化団体の責任者と連絡を取り、民主化指導者の救出計画を持ちかけた。団体の責任者は大陸内部の民主化指導者の動静をつかんでおり、すぐさま陳氏の申し出を受け入れた。

 この秘密計画は「黄雀(すずめ)作戦」と名付けられ、大陸内の数カ所に民主化指導者の秘密の隠れ場所を設定し、広東省などの沿岸部で落ち合い、陳氏が所有する高速艇に乗せて、香港の小島のアジトに連れてきて、パスポートやビザを用意し、香港の空港からフランスなどに飛んだという。

 この作戦には民主化運動に同情的だった英仏政府も関与。香港は当時、英国領だったことから、100人以上がフランスに、約50人が米英など他の国に受け入れられるなど、脱出作戦はスムーズに進んだという。

 陳氏はこの作戦で1000万香港ドル(当時のレートで約2億円)を費やしたというが、いまでも救出された民主化指導者から感謝の手紙や寄付などがあるという。陳氏は現在、70歳で、マンションの家賃収入などで悠々自適の隠退生活を送っている。

 ところで、陳氏に救出された運動指導者のなかに、現在は台湾に在住のウーアルカイシ氏もいるが、同氏は米政府系ラジオ局「ボイス・オブ・アメリカ」の取材に応じ、「事件から早くも25年が経った。私は幸運にも救出されたが、事件の犠牲になった学生を率いた指導者として、私は彼らのことは一生忘れない。私は一生、贖罪の思いを背負い続けて生きていかなければならない」と現在の心情を吐露している。

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