安倍晋三首相に提出された自民党の「日本再生ビジョン」が話題だ。なかでも、地域活性策としてあげられた「プロ野球16球団への拡大プラン」は大きな注目を浴びている。そのすすめにしたがって、プロ野球空白域の静岡県、北信越、四国、沖縄県にもし球団が誕生したとしても「戦力均衡」が大きな課題として残る。
新規参入球団が4球団誕生するということは、支配下登録選手70人×4球団で、合計280人にも上るプロ選手が生まれる計算になる。だがこれまでプロに入れなかったような選手を単純に集めていては、いつまでたっても既存球団と勝負できるとは思えない。それに既存球団が、いまのルールのままで選手を提供するとは考えづらい。
かつて近鉄が球団を解散し、楽天が作られた際、初年度にその選手たちでどんな戦いをしたかを考えれば、それは明らかだろう。
元阪神の野球解説者、藤田平氏は、選手の分配こそが新規球団のネックであることを証言する。
「とにかくプロ野球選手は、日本野球機構(NPB)が根こそぎ持って行ってしまう。だから独立リーグには人材が回らず、それが独立リーグが根づかない理由の1つでもある。ただNPB傘下になれば、トップ選手を対等に獲得できる権利が得られる。これは大きい」
そこで本誌が強く進言したいのは、新球団を含めた16球団のドラフトで、完全ウェーバー制を導入することだ。
前年成績の下位から順番に有望選手を指名できる、というのがメジャーで行なわれているウェーバー方式。現在、日本では2巡目以下のみの中途半端なウェーバー制が実施されており、本当の戦力の均衡は図れていない。むろん、完全ウェーバー制だと「意中の球団から外れた選手が、入団拒否する確率が増す」点なども指摘されている。これには「FA権取得までの期間を大幅に縮小する」といった改革が、同時に必要になってくるだろう。
※週刊ポスト2014年6月13日号