ビジネス

東京への一極集中は望ましく加速すれば良いと大前研一氏推奨

 東京に政治や経済、あらゆる機能や人が集中する東京一極集中が話題に上るとき、多くは地方にもっと分散させたほうがよいという意味合いを含めた論調で語られることが多い。ところが、大前研一氏は東京一極集中は望ましく、さらに加速すればよいと考えている。

 * * *
 出産年齢の中心である20~39歳の若年女性が半減することによって全国1800自治体の半分にあたる896市区町村が2040年に「消滅」の危機に直面する―という「日本創成会議」人口減少問題検討分科会の試算がある。その対策の一つとして、同分科会は東京一極集中の是正を提言しているが、私は、東京一極集中は日本のためには望ましいことであり、さらに加速すればよいと考えている。

 なぜなら、東京は世界で最も公共交通網が発達した都市だからである。とくに地下鉄網はまさに網の目のように張り巡らされ、それが私鉄に乗り入れてJRともリンクしている。こんな都市は世界のどこにもない。

 東京都環境局によると、山手線地域内では駅から徒歩5分圏内の範囲が64%を占め、徒歩10分圏内ならほぼ全域がカバーされる。おそらく電車による移動が世界一便利な都市と言っても過言ではないだろう。

 したがって東京は人が集中していても、通勤・通学時の新宿や渋谷、東京、池袋などの巨大ターミナル駅以外は、さほど混雑感がない。しかも、高層ビルが増えているので、昼間人口が増加しても吸収できている。

 吸収できないほど大量の人々が都心部に流れ込んできたら、普通はスラム化するのだが、東京の場合は大半の人々が朝、通勤・通学で山手線の外側から都心部に来て夕方以降は帰っていくため、夜間人口の増加は緩やかでスラム化していない。これは世界の大都市では唯一無二の例だと思う。

 この東京一極集中・都心回帰の動きは、これからますます加速するだろう。

 なぜなら、東京都心の屋根の上(空中)にはニューヨークやパリなどに比べるとまだまだ余裕があり、私が以前から提案している容積率緩和を実行して湾岸エリアのマンハッタン化などを進めれば、今は山手線の内側で平均3階以下でしかない建物の高さを2倍の6階にすることは容易だからである。それに定期借地権を組み合わせたら、東京都心部のマンション価格は現在の半分くらいになるはずだ。

 つまり、容積率を緩和するだけで山手線の内側に現在の2倍の人口が安く住めるようになるわけで、そうすると、その人たちは前述したように駅まで徒歩10分圏内になるから、通勤の負荷が極めて軽くなる。徒歩通勤や自転車通勤が可能になる人も増えるに違いない。この“首都圏逆ドーナツ化”の動きは加速することはあっても、反転して郊外に人が戻ることはないだろう。

※週刊ポスト2014年6月20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト