ライフ

海外からも注目される東京の二つ星独立系ホテル誕生の秘密

【書評】『「庭のホテル東京」の奇跡 世界が認めた二つ星のおもてなし』日経BP社/木下彩/1620円

【評者】徳江順一郎(東洋大学国際地域学部准教授)

 * * *
 2020年の東京オリンピックに向けて、都心ではさまざまなホテルの開業が相次いでいる。最低でも1泊数万円、あるいは十数万円~というラグジュアリー・ホテルもあれば、気軽に泊まれる数千円のバジェット・ホテルもあり、多様な選択肢が用意されるようになってきた。

 ただし、それらはいずれも、世界的な高級ホテルチェーンや、国内にくまなく出店するホテルチェーンによるものがほとんどで、いわゆる独立系と呼ばれるような、1軒だけの、あるいは小規模なチェーンのホテルはかなり少なくなってしまったのが現実である。

 本書で取り上げられている「庭のホテル東京」は、数少ないこうした独立系のホテルである。必ずしもゴージャスな設備を備えているわけでもなく、かといって無駄をとことん排除したバジェット・タイプでもない。その意味では、必ずしも目立つホテルではないはずであるが、近年、特に海外からの来訪者に注目される存在となってきている。

 著者は1960年生まれ。上智大学卒業後、ホテルニューオータニ勤務等を経て、2009年に「庭のホテル東京」を新築オープンした。相次ぐ肉親の不幸を乗り越え、時代に合った新しいホテルを創り上げることに成功した事例は、ホスピタリティー研究の対象としてもきわめて関心を持てるものである。

 われわれ日本人は他人が(特に他国の人々が)発明・発見したものを模倣してブラッシュアップすることには長けているが、イノベーションが苦手であるとしばしば指摘される。その意味では、同ホテルはわが国のホテル業界に、静かで目立たないものではあるかもしれないが、イノベーションを起こしたことは間違いない。

 ここで述べられていることがどの宿泊施設でも成り立つかというと、もちろん必ずしもそうではない。だが、いくつかの点は適用可能であるだけでなく、家庭にも応用できるような点が多々あるのが興味深い。幾多の苦労を乗り越えつつ、さらに輝きを増している小粒で光るホテルの存在はわが国の誇りであろう。その一端に本書を通じて触れてみてほしい。

※女性セブン2014年7月10日号

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン