ビジネス

安倍政権の「残業代ゼロ」導入 お粗末で無意味と大前研一氏

 ブラック企業批判がおさまらないなか、安倍晋三政権が打ち出した残業代ゼロ制度が物議をかもしている。残業代ゼロの導入は無意味な戦略だと断じる大前研一氏が、なぜ意味がないかについて解説する。

 * * *
 安倍晋三政権は新たな成長戦略の一つとして「残業代ゼロ」を導入する方針を打ち出した。最低でも年収1000万円以上の専門職は労働時間規制の適用外にして、時間ではなく「成果」で評価する働き方──いわゆる「ホワイトカラー・エグゼンプション」を導入するもので、2015年の通常国会に労働基準法の改正案を提出し、2016年春の施行を目指すという。
 
 しかし、これは日本の労働の本質的な問題点を全くわかっていないお粗末で無意味な戦略である。

 今回の残業代ゼロの言い出しっぺの1人とされる産業競争力会議の民間議員の長谷川閑史(やすちか)・武田薬品工業社長は、その対象者の具体例として金融機関のファンドマネージャーやコンサルタントなどの専門職、経営企画やブランド戦略などを担当する企業の管理職候補を挙げたと報じられている。

 だが、もともとそうしたクリエイティブな「非定型業務」をしている人たちの大半は残業代をもらっていないはずであり、その割合は社内の数%にすぎないと思う。今さら政府がわざわざ法律を改正して取り組むようなことではないだろう。

 逆に言えば、それ以外の「定型業務」をしている大部分のホワイトカラーは、実は本当のホワイトカラーではなく“ブルーカラー的ホワイトカラー”なのだ。

 今の日本のホワイトカラーとブルーカラーの定義は、戦後にアメリカから輸入したもので、それはもはや時代遅れになっている。「総合職」や「一般職」といった区別はあるが、事務系の仕事をしている人はおおむねホワイトカラーと呼んでいる。

 しかし、その中の経理処理や売掛金回収といった定型業務は、基本的に(工場労働者と同じで)働いた時間に比例して仕事の進捗度が決まるブルーカラー的な要素が大きいので、ホワイトカラーと呼ぶのはおかしい。したがって、彼らに残業代がつくのは当たり前である。

関連キーワード

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
山下智久と赤西仁。赤西は昨年末、離婚も公表した
山下智久が赤西仁らに続いてCM出演へ 元ジャニーズの連続起用に「一括りにされているみたい」とモヤモヤ、過去には“絶交”事件も 
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン