投資情報会社・フィスコ(担当・小瀬正毅氏)が、7月14日~7月18日のドル・円相場の見通しを解説する。
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今週のドル・円は、地政学的リスク(ウクライナ、イラク情勢)、欧州金融危機リスクなどに警戒しつつ、日本銀行金融政策決定会合やイエレン米国連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言を見極める展開となる。ウクライナの紛争が激化した場合、イラクが内戦に陥った場合、欧州金融危機が再燃した場合は、リスク回避の円買い圧力が強まることになる。
しかしながら、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の改革を受けて、本邦機関投資家による外貨建て資産への投資が予想されること、米国が軍事介入しない中東の地政学的リスクは、有事のドル買いとなる可能性があることで、ドルの下値は限定的か。
【日本銀行金融政策決定会合】(14-15日)
地政学的リスクや欧州金融危機リスクなどから、東京株式市場とドル・円が上げ渋る展開となり、アベノミクスのバロメーターである安倍トレード(日本株買い・円売り)が停滞している。黒田東彦日銀総裁は、「円高・デフレ」から脱却し、「円安・インフレ」を目論んでいることで、追加緩和策が打ち出される可能性に警戒することになる。
【イエレンFRB議長の議会証言】(15-16日)
イエレンFRB議長は、国際決済銀行(BIS)の「年次報告」でバブルへの早期対応を要請されたものの、「バブルを破裂させることは、FRBの仕事ではない」と一蹴した。
米国6月の労働参加率は1978年以来の低水準で低迷しており、雇用情勢がリセッション(景気後退)前の水準を回復するまで低金利政策を継続する、というイエレンFRB議長のロードマップに変更はない。しかしながら、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)では、出口戦略に関する協議が行われていたことで、議会証言に注目することになる。
【地政学的リスク】
中東では、アルカイダ系の武装組織「イラク・シリア・イスラム国」が樹立した「イスラム国家」に対して、イラク、イラン、シリア、サウジアラビアなどが対峙する構図となっており、予断を許せない状況が続く。中東の地政学的リスクが拡大した場合、原油価格が上昇することで、原発稼動停止で原油輸入の依存度が高い日本経済にはマイナス要因、貿易赤字の拡大により円安要因となる。
ウクライナでは、ポロシェンコ・ウクライナ政権と親露武装勢力との和平協議が難航した場合、リスク回避の円買い圧力が強まることになる。
【欧州金融危機リスク】
2007年の欧州金融危機は、フランスの金融機関「パリバ・ショック」を契機としており、ポルトガルの金融機関のデフォルト(債務不履行)懸念に警戒することになる。ドラギ欧州中銀総裁は、マイナス中銀預金金利を打ち出し、量的緩和も温存していることで、欧州金融危機が再燃する可能性は低いと思われる。
7月14日~18日に発表予定の主要経済指標のポイントは次の通り。