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中韓が共同で反日ドラマ制作契約 一方北朝鮮は親日ドラマOA

「遠交近攻」とは、離れた国と手を結び、近くの国を挟み撃ちにして攻めるという戦略だ。春秋戦国時代、中国の『兵法三十六計』の一つである。

 いま、安倍政権は極東アジアでこの古代中国さながらのパワーゲームに引きずり込まれている。中国と韓国が「反安倍同盟」を組んだのに対し、北朝鮮は安倍晋三・首相に巧みに接近して対抗しようとしている。それが北朝鮮の巧妙な罠であることに安倍首相は気づいていない。

 遠交近攻は各国の国民への扇動合戦にあからさまに現われている。7月3日の習近平・中国国家主席の韓国訪問を機に、中韓は反日工作を一層エスカレートさせた。

 韓国の国民が〈釣魚島(尖閣諸島)は中国の土地〉という横断幕を掲げて歓迎すると、習主席はソウル大学での講演で、「20世紀前半に日本の軍国主義者が中韓に野蛮な侵略を強行し、対日戦争が最も激しかった時、両国民は生死を共にして助け合った」と共同戦線を呼びかけた。

 さらにこの訪問がきっかけになり、中国国営テレビと韓国のテレビ局は反日歴史ドラマ『萬暦朝鮮戦争』の共同制作の契約を結んだ。題材は豊臣秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)というから、中国(明)と李氏朝鮮が協力して秀吉軍を撃退したという筋立てになるのは間違いない。両国の国民を反日思想で塗り固める狙いだ。

 対照的なのが北朝鮮である。ここにきて国内で「親日宣伝」に力を入れている。

 朝鮮中央テレビは6月25日(朝鮮戦争開戦日)から5夜連続で『砲声なき戦区』というドラマを放映した。物語の舞台は太平洋戦争終結直前から朝鮮戦争まで。そこには北朝鮮ドラマ恒例の「憎き日本兵」の姿はなく、逆に、満州で略奪される日本人やアメリカ兵に拷問される日本人、ソ連軍から逃走する日本人女性などが同情的に描かれていた。

 中国との関係が悪化している北朝鮮は石油や物資の供給を止められているとされ、経済的に窮地に陥っている。金正恩こそ「遠交近攻」で日本と組んで危機を乗り切りたいという切実な事情を抱えているのだ。親日ドラマは日朝協議を進展させるためのわざとらしいラブコールなのである。

 しかし、「日本に助けを求める」という話ではない。

 北朝鮮は日本の足元を見ている。集団的自衛権の閣議決定で支持率を大きく落とし、アベノミクス“第3の矢”である成長戦略が不発に終わりつつある中で、安倍政権が得点稼ぎできるとすれば外交分野だ。中韓が反日タッグを組む現状を見れば外交的成果を得るため安倍政権は前のめりになってくるはずだ──そう睨んだ金正恩は日本側に次々と要求を突きつけている。拉致という国家的犯罪を繰り返しておいて、盗っ人猛々しいとはこのことだ。

 金正恩の企みに安倍政権が乗ってしまった結果、日朝協議は完全に北朝鮮のペースで進んでいる。

※週刊ポスト2014年7月25日・8月1日号

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