起訴状によると、日高さんは中尾夫妻による暴行で衰弱していたのに食事も与えられず、自宅アパートの浴室に閉じ込められた状態で亡くなったとされる。
田宮さんは、知佐被告の妹の夫である日村さん(仮名・現在行方不明)の姿を目撃したこともあったと証言する。
「彼は店にワンボックスカーでやって来てカネを受け取り、どこかに運ぶ役目だったようです。しかし2008年半ば以降は見かけなかった」
田宮さんが逃亡を決行したのが2009年1月。新しく連れてこられた中年男性と一緒に外回りしていた時、カギのかかっていない放置自転車に飛び乗り、無我夢中でペダルを踏み込んだ──。
田宮さんの証言からは、夫妻の築いた組織にはさらに立場が上のX氏(元暴力団員で伸也被告をアゴで使っていた)が関わっていた様子が窺える。所在を追ってX氏の実家を訪ねると母親はこう語った。
「息子は3月頃に“仕事があるけん”と他県に向かって以来、連絡がつかんとよ。中尾夫婦については名前も聞いたことないし知らん。そういえば7月の頭に警察が来て、“もしXさんが家に帰ってきたら連絡がほしい”といわれたと」
多重債務者がタダ働きする店、出入りする暴力団関係者。事件の闇は深みを増すばかりである。
※週刊ポスト2014年7月25日・8月1日号