芸能

「録画視聴率」の指標登場 TV界の常識を激変させる可能性も

 不調にあえぐフジテレビの社員は「反転攻勢のきっかけになるかもしれない」と鼻息が荒い。一方、昨年開局以来初の視聴率2冠に輝いたテレビ朝日の社員は「せっかくの勢いに水を差される」と警戒する。
 
 7月14日に初めて発表された「タイムシフト視聴率」(録画再生率)への反応は、テレビ各局で様々だ。これまで表に出てこなかった新指標の登場は、これまでのテレビ界の常識を激変させる可能性を秘めている。

 タイムシフト視聴率とは、簡単にいえば「テレビ番組が録画でどれくらい観られているか」を示す数値だ。今回公表されたのは3月31日から3か月間に放送された番組のトップ50。ちなみにトップ5は以下の通りだ。

【1】『ルーズヴェルト・ゲーム』(TBS):7.7%
【2】『笑っていいとも!最終回』(フジテレビ):7.5%
【3】『MOZU Season1』(TBS):7.5%
【4】『アリスの棘』(TBS):7.4%
【5】『続・最後から二番目の恋』(フジテレビ):6.8%
 
 このランキングを一読しただけで、大きな傾向がわかる。トップはドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』で7.7%。2位は話題を呼んだ『笑っていいとも!』の最終回だったが、上位はほとんど「ドラマ」で30位以内のうち17番組。一方、バラエティは6番組しかない。
 
 局別で見ると上位10位のうちフジが5番組を占め、次いでTBSが3番組。日テレ、テレ朝は1番組ずつしかランクインしていない。
 
 元テレビプロデューサーで、上智大学文学部新聞学科教授(メディア論)の碓井広義氏がいう。
 
「以前から『ドラマは録画で』という傾向が強いとわかっていた。今回の公表でそれが裏付けられた格好で、当然ドラマを軸にしている局にプラスになる。キー局で最も有利なのがフジとTBSなのは間違いない」
 
 それぞれ視聴率で民放3位、4位と不振に喘ぐ両局にとって好材料といえる。一方、苦戦を強いられるのがテレ朝だ。テレ朝関係者がいう。
 
「そもそも、タイムシフト視聴率導入に最も消極的だったのはウチだった。ターゲットが高齢者層で、看板番組はバラエティ番組や人気ドラマも『相棒』など1話完結型のストーリーが多い。万年民放4位から、やっと昨年はトップに立った途端に新ルールが出たといわれても納得できない。結局は他局に押し切られたようですが……」
 
 冒頭で紹介したフジ社員とテレ朝社員の反応の違いは、事前に予想されていたものだったようだ。

※週刊ポスト2014年8月8日号

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