6月より新しい旅客機(欧州エアバス製・中型機のA330)の導入にともない、“ミニスカCA(客室乗務員)”の乗務で物議を醸したスカイマーク。だが、そんなことで話題を振りまいている場合ではなくなった。
A330に続き、今年の秋に引き渡し予定だった大型機「A380」をキャンセルする交渉に入ったというのだ。同機は“空飛ぶホテル”と呼ばれる世界最大の旅客機で、カタログ価格は1機400億円。しかも、スカイマークはこれを6機1900億円でエアバスから購入し、国際線に順次参入する予定だった。
いまのところ具体的な解約理由は明かされていないが、「スカイマークが大風呂敷を広げすぎて資金難に陥っている」(経済誌記者)との見方が有力だ。
円安による燃料費の高騰や、国内LCC(格安航空会社)との激しい乗客獲得合戦にさらされ、2014年3月期決算で5期ぶりに18億円の最終赤字に転落した同社だけに、過剰な先行投資が重くのしかかったことは容易に想像がつく。
だが、「資金的な問題のみならず、スカイマークが大型機を導入するのには無理があった」と話すのは、航空経営研究所所長の赤井奉久氏。
「国内線から近距離の国際線、そして最後に長距離国際線に参入するなら分かりますが、スカイマークはいきなり超大型機で長距離のニューヨークまで出ていこうとしていたので、以前から『本当に飛べるのか?』と懸念されていました。ANAだって、一番初めにワシントンに出たときは相当苦労したんです。
国内線と違って長距離国際線は乗員の確保や育成、整備体制も増強しなければなりませんし、仮にうまく飛ばせたとしても、今度は採算性の問題が出てきます。アライアンスが張り巡らされてトランジット(乗り継ぎ)が便利ならいいですが、スカイマークは何のネットワークも持たずに『東京―ニューヨーク』間だけで乗客を囲い込めるのか疑問視されていたのです」(赤井氏)
そもそも、前述の中型機A330で勝負している「羽田―福岡」、8月から就航する「羽田―新千歳」便も、どこまで収益回復に貢献できるのかは不透明だ。
「JAL、ANAの寡占状態にある羽田のマーケットが活性化される期待はありますが、スカイマークは中型機を使いながら、LCCとの差別化を掲げて座席数をゆったりさせる“プレミアム戦略”に転換しています。
居住性を高めようとすれば、どうしても席数は取れず、席あたりのコストが高くなれば乗客の平均単価、つまり運賃を上げなければ割に合わなくなります。価格帯にもよりますが、A330機の271席という席数では、搭乗率は80%以上とらないと厳しいでしょうね」(前出・赤井氏)