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団塊世代へ訴える「若者たち2014」「おやじの背中」に違和感

 ドラマ制作陣にとって、どこに向けて作品を届けていくか、は重要なテーマである。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 今期の夏ドラマで鮮明になってきた一つの傾向があります。『若者たち2014』(フジテレビ木曜午後10時)、『おやじの背中』(TBS日曜劇場午後9時)第4話。いずれにも共通しているのは、60年代の「熱かったあの時代」をドラマの素材として引用したり、重要な要素として活用している点です。

 アクティブシニアと呼ばれる65歳以上、いわゆる「団塊の世代」は800万人という厚い層を成している。その人たちが青春を過ごした1960年代。学生運動華やかなりし頃の青春の記憶、恋愛話、苦い思い出、甘い夢。テレビで育った団塊の世代を対象にドラマを描いたり、視聴者として取り込もう、という意気込みを制作陣に感じます。

 例えば「おやじの背中」の第4話「母の秘密」(脚本・鎌田敏夫)は、のっけから「反体制運動」に熱中していたおやじの過去が。それゆえにおやじが抱えてしまった、妻と息子とのミゾ。老後になって、息子と一緒に旅をすることでそのミゾを埋めていく、というストーリー。

 登場するおやじは、自分は社会を変えるためと運動にのめりこみ、妻には料理を作らせる。家政婦扱い。妻に対して保守的な感覚を持っていた夫として描かれていました。でもそれって、「団塊世代」を正確にターゲットとしているドラマの主人公としては、どうでしょう?

 彼等の多くが「新しい世代」を自負した時代。志向していたのはたしか、「ニューファミリー」ではなかったか? 同級生同士の結婚が多く、トモダチ夫婦などとも呼ばれ、お互いに対等で自由な価値観を認めようとした最初の世代。たとえ建前に過ぎなかったとしても「男女平等」という理想があって、フェミニズムが盛り上がり、アメリカの人権運動に影響されて、ヒッピームーブメントを堪能していた時代。「女は黙って料理を作れ」は、もっと前の亭主関白像では? ドラマを見ながら、夫婦関係の基本的な設定にちょっと困惑を感じ、没入できませんでした。

 というのもこのドラマ、敢えて新宿争乱や羽田闘争と生々しい実写フィルムを挿入し、「反体制運動」「三里塚闘争」「ボブ・ディラン」といった、尖った「時代アイテム」を活用して話を膨らませ、進めています。だとすれば、軸になる夫婦関係の時代性も問われてしかるべき。ちょうど大河ドラマで時代考証をするのと同じこと。

 最近のいくつかのドラマは、何だか無理に「団塊ネタ」「学生運動ネタ」でエッジをたてようとしすぎていませんか。該当する世代に見てもらおう、という意識が強すぎませんか。何だか典型的なご都合主義に見えてしまうのは私だけ?

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