──確かに現在は、叱る、叱られるといった関係性を避ける風潮がある。
阿川:みんなどことなく、怯えながら暮らしていますよね。若手は面と向かって上司と接することや初対面の人を避ける。上司は嫌われることを怖れ、部下を叱らない。
根底には、「嫌なことをしたくない」という思いがあるのでしょう。今は嫌なことを避けられる便利な時代です。昔の家庭には固定電話があって誰から電話がかかってくるかわからなかったけれど、今は携帯電話で好きな人とだけ話せる。仕事でわからないことがあれば、怖い上司に尋ねなくてもネットで簡単に調べることができる。
私はテレビ番組の新人アシスタント時代、何か問題があるたび上司に「おい、飲みながら話そう」と言われて叱られたり、悩みを聞いてもらったりしたけれど、そんな面倒くさいけどタメにもなる人間関係がどんどん失われていますよね。
※SAPIO2014年9月号