ひとつは、徹底的に「こだわっている人」にエアウィーヴを使ってもらうという方法。 「最も睡眠にこだわりを持つ人は誰か。それは五輪代表のアスリートです。限られた期間の中で繊細にコンディションを整えなければならない彼らなら、エアウィーヴの効果を明確に感じてとってくれるはず。また、使用感について忌憚のない意見をいただけるはずですから」(高岡氏)
国立スポーツ科学センター、浅田真央、錦織圭、北島康介……世界で活躍するアスリートたちに、社長自らも営業にたって、地道に商品を提供していった。すると自然な形で、「コンディショニングに格好なマットレス」という口コミが拡がっていった。
「トップアスリートによる、感性的な評価をコツコツと蓄積していったのです」
売り手の押しつけではない使い手自身による“実感”が口コミを呼び、評判は広まり、愛用者が増加していった。
高岡社長はもうひとつのアプローチも進めていた。それは、科学的知見の積み重ねだ。早稲田大やスタンフォード大と提携し、エアウィーヴを使った睡眠研究を進めた。また世界的なアスリート予備軍を育成するフロリダ・IMGアカデミーともタイアップし、運動向上の効果についてデータ分析も進める。
「学術的なデータ、それによる効果効能の裏付けが、ブランド構築には欠かせないからです」(高岡氏)
エアウィーヴは、トップアスリートやアーティストが認めた「感性価値」と、専門機関による「科学的知見」とを融合させたことによって、商品の「客観的評価」を確立した、と言えるだろう。
その過程で、ブランドの戦略作りを担うプロも招聘。2011年6月、満を持して愛用者だった浅田真央をCMに抜擢すると狙いはピタリと当たり、飛躍的に売り上げが伸びていったのだった。そして今、高岡社長の視野には、海外市場が入っている。
※SAPIO2014年9月号