ライフ

【書評】在日アメリカ総領事「夫夫」が語るゲイカップル生活

【書評】『夫夫円満』/パトリック・ジョセフ・リネハン、 エマーソン・ルイス・ソアレス・カネグスケ著/東洋経済新報社/本体1500円+税

Patric Joseph Linehan/1953年フロリダ州生まれ。2011年8月から大阪・神戸アメリカ総領事館総領事。 Emerson Luis Soares Kanegusuke/1972年サンパウロ生まれ。日系3世。元ブラジル空軍航空管制官。  

【評者】鈴木洋史(ノンフィクションライター)

 著者の2人はゲイのカップルで、2007年、同性婚を認めるカナダで結婚し、互いを「夫」と呼ぶ。しかも、公的な存在、“見える存在”だ。一方のパトリック・ジョセフ・リネハン氏はアメリカの外交官で、2011年8月から在大阪・神戸アメリカ総領事館総領事の職にあり、もうひとりのブラジル出身の日系3世エマーソン・ルイス・ソアレス・カネグスケ氏は、日本の外務省から配偶者ビザを発行された同性婚パートナー第1号だ。

 総領事館のHPには、2人が性的指向を理由にイジメを受ける若者を励ますビデオメッセージが公開され、リネハン氏が参加する公式行事にはカネグスケ氏が配偶者として同行する。大阪には「関西日米婦人会」という日米間の交流団体があり、代々総領事夫人が会長に就き、現在、カネグスケ氏がその立場にある。

 本書はその2人がこれまでの歩みを語った本だが、印象的なことがいくつかある。ひとつはゲイ差別の激しさだ。

 リネハン氏が生まれた1953年、アメリカ政府が、同性愛者であるか、そうと疑われるという理由で5000人以上の職員を解雇したというように、1950年代、1960年代のアメリカでは激しい“ゲイパージ”が行なわれた。氏が国務省に入省した1984年でも、上司のひとりは〈国務省に“ホモ”の居場所はない。もし君たちが同性愛者なら出て行きたまえ!〉と言ったという。

 一方、ブラジルもカトリックの影響で“アンチゲイ”の風潮が強く、カネグスケ氏がブラジル空軍のアカデミーに入った1980年代後半、〈同性愛は犯罪〉扱いで、〈発覚すれば、処罰を受け、放校〉となった。ブラジルでは今も、ゲイは暴力の対象だという。

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト