ただし、りんかい線買収はそう簡単ではないという見方も根強い。1996年の開業以来赤字続きだったのが2012年度から黒字に転換したものの、累積債務は500億円を超えたままだからだ。
「『羽田アクセス新構想』は都市計画に関わるので、行政やデベロッパーなどと連携をとり、費用、規制や調整など多方面からの協力が必要です。舛添要一都知事は羽田空港を強力化したいので基本的な考え方は合いますが、具体的な事業となると違いが出ます。まずは新構想に対する出方を見るため、普通なら負債の大きさにしり込みするりんかい線買収の話を観測気球として漏らしたのではないか。現実的にはモノレール強化を先に手がけるでしょう。
東京の都市計画は、予想外のことばかり起き続けた歴史の積み重ねです。お台場にフジテレビが移転して商業施設が増え、羽田空港に新滑走路を建設できる技術が開発されるとはどんな専門家も想定していなかった。これからも、外国からの観光客が増える2020年へ向けて予想外のことが起きるでしょう」(前出・小川さん)
コミケ参加者からサービスの評判が悪いりんかい線だが、埼京線や京葉線への直通運転が増え、羽田空港からの利用者が増えれば、嫌でも変化があらわれるだろう。訪日外国人観光客が激増するのが確実な東京五輪開催の2020年には、JR東日本に買収されてもされなくてもホスピタリティ向上は現実になっていると期待したい。