国際情報

元ソ外相シェワルナゼ氏 ソ連が崩壊することを予見していた

“ペレストロイカの旗手”ゴルバチョフ・ソ連大統領の側近として、欧米諸国と「新思考外交」を展開したシェワルナゼ元外相が死去した。ソ連崩壊後は、グルジア大統領に就くなど現代史に名を残す一人だが、「冷静終結の立役者」としての評価もあれば、「グルジア内政を腐敗させた」という指摘もある。激動のソ連末期時代、外交官を務めた作家・佐藤優氏が、一面的には語れないシェワルナゼ氏の功績を綴る。

 * * *
 外相としてのシェワルナゼは、大方の予測に反して、歴史に大きな業績を残した。米国との関係改善、ドイツの統一などに積極的に取り組み、ゴルバチョフの新思考外交を下支えした。

 それとともに、従来の権力基盤であったKGB、内務省からは疎んぜられるようになった。また、出身地のグルジアでは、1988年からグルジア民族至上主義者のガムサフルディアの影響が強まり、同人は反共主義を鮮明にし、グルジアのソ連からの離脱を主張するようになった。

 ソ連中央政府にいる最高位のグルジア人であるにもかかわらず、シェワルナゼはグルジア内政に影響力を行使することができなかった。1990年11月14日にガムサフルディアがグルジア最高会議議長に選出された。それと同時に、グルジア内のアブハジア自治共和国、オセチア自治州で、グルジア人とアブハジア人、グルジア人とオセチア人の流血を伴う民族紛争が発生するようになった。

 シェワルナゼは、1990年12月20日、第4回ソ連人民代議員大会(国会)の席上で「独裁が近付いていることに抗議する」と言って、突然、辞任した。その日の深夜、筆者は、反体制派の歴史家ロイ・メドベージェフの自宅に呼ばれた。筆者がメドベージェフに「独裁とは何か。ソ連共産党内の保守派がクーデターを起こそうとしているということか。それともゴルバチョフ自身が独裁を行なうということか」と尋ねた。

 メドベージェフは、「どちらでもないと思う。シェワルナゼは、グルジア共産党第1書記時代に深刻な人権侵害や特権乱用を行なっている。その情報をガムサフルディアに握られたので、スキャンダルが爆発する前に適当な口実をつけて辞任した」という見方を示した。

関連キーワード

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン